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Baby Keem『The Melodic Blue』、リル・ナズ・X『モンテロ』 〜D.O.I.'s ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。D.O.I.氏の今月のセレクトは、Baby Keem『The Melodic Blue』、リル・ナズ・X『モンテロ』です。

違和感が癖になるラップのフロー

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Baby Keem『The Melodic Blue』

 先月はアルバムの当たり月で、紹介し切れなかった作品をレビューします。まずはケンドリック・ラマーの従兄弟ということで、少しうがった目で見られている印象もあるベイビー・キーム。「Orange Soda」などの楽曲制作で発揮されたそのクオリティは、有名ラッパーの身内うんぬんを抜きにして圧倒的な才能です。満を持して発表した今作は、キャラクターや話題性ではなく音楽性の高さが非常に際立った作品。ビートは全体的に抽象的な印象ですが、どこかキャッチーで中毒性があり、誰とも異なるオリジナリティが優れています。ラップのフローに関しても良い意味での違和感がすごく、ビートになじませずにはみ出してしまう感覚が癖になります。

ほかを圧倒する斬新なミックス

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リル・ナズ・X『モンテロ』(ソニー)

 次は圧倒的な期待感を持たれながら、その期待に応えたという意味でも最高な仕事をそれぞれがしたリル・ナズ・Xのアルバム。ソング・ライティングからビートの鮮度と精度まで、ラップ・アルバムというよりもっと広義に、ポップ・カテゴリーの中でも新しい方向性を示したようにすら思います。特筆すべきはミックスの斬新さ。さまざまなプレイリストの中で聴いてもほかを圧倒しています。ステレオのワイド感、ボーカルにおける高域の伸び、倍音成分の付加の仕方、低域のソリッドさなど、非常にリッチでありながら変に落ち着いていない絶妙な落としどころ。ミックス・エンジニアはマニー・マロクィン、サーバン・ゲネアを中心に、ジョン・カステリやトム・エルムハーストなど本当にすごい布陣でした。

 

D.O.I.

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【Profile】Daimonion Recordingsを拠点に活動するエンジニア。ヒップホップを中心としながらも、さまざまなプロダクションに参加している