第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。D.O.I.氏の今月のセレクトは、The Lazy Eyes『Where's My Brain???』、SE SO NEON『Jayu』です。
ビンテージ・サウンドをオマージュしたロックのミックスは
良い意味で軽い低域にガチな1960年代を感じる
オーストラリアのサイケ・ロック・バンド、ザ・レイジー・アイズの「Where’s my Brain???」が非常に面白いです。ボーカルの部分が少なくほぼインストの雰囲気で、曲の長さも6分40秒と長尺。現代の感覚からするとかなり長いですが、曲の展開や楽器の音色の面白さとギミックのセンスの良さによって、最後まで飽きずに聴けます。一応、ボーカルの部分を中心に3分4秒にまとめられたバージョンもありますが、個人的にはオリジナルの長尺版がお薦め。
ここ数年のビンテージ・サウンドをオマージュしたロックのミックスでは、低域が重く現代的になっていたりしますが、「Where’s my Brain???」は良い意味で軽いので、ガチな1960年代感があります。ギターはオクターブ・ユニゾン的手法を多用しているのですが、最近はあまり聴かないので新鮮で面白かったです。またドラム、ボーカルなどにかかっているフェイザーが、何を使っているか知りたいほど本当に絶妙でした。
1960年代のクラシック・ロックのたたずまいと現代的なミックス
新旧のハイブリッドが非常に的を得たバランス感
この方向性でもう一組同じぐらい素晴らしいバンドが、韓国のセソニョン。知る人ぞ知る人気バンドですが、今回リリースされた「Jayu」が素晴らしいです。トータルで1960年代のクラシック・ロックのたたずまいですが、IZOTOPE VocalSynth的な処理が随所に入ってきたり、周波数のレンジ感が現代的だったりと、新旧のハイブリッドが非常に的を得たバランス感でした。声やメロディといった曲の基礎体力部分も、本当に素晴らしいです。
D.O.I.
【Profile】Daimonion Recordingsを拠点に活動するエンジニア。ヒップホップを中心としながらも、さまざまなプロダクションに参加している