Berlin Calling〜第101回 2023年度“クラブ・カルチャーの日”審査とアワード・セレモニー

バラエティ豊かな受賞者40組が決定

 前々回の本コラムで筆者が“Tag der Clubkultur(クラブ・カルチャーの日)”という、2020年から始まったベルリンのクラブ・カルチャー支援プログラムの、今年の評議員になったことを書いた。申請があった市内のクラブやコレクティブから40組を選出し、1万ユーロ(約150万円)を“賞金”として授与するというもの。助成金ではなくあくまで賞金なので、使用用途は自由。私を含む5名の評議員で、177組あった申請の審査をした。申請書に目を通すのに丸2日以上かかり、一つ一つ採点をし、その上で5名の話し合いをぶっ通しでほぼ10時間かけて行った! なかなかの労力だったが、個人的には知らなかったベルリンのクラブ・シーンの幅広さを知り、意見交換することができてとても有意義であった。

 今年は“Never Conforming Ever Evolving(決して順応せず常に進化し続ける)”というテーマが掲げられ、ベルリンのクラブ・カルチャーの精神として、現状に甘んじず挑戦し続けることが重視された。

 選考の基準は今後の展望よりもこれまでの功績に比重を置くこと、多様性とインクルーシビティを考慮すること以外は、評議員に任せられた。基準は十分に満たしていても、新たな申請者にチャンスを与えるため過去3年間連続受賞している者は外した。移民コミュニティやLGBTQコミュニティでも地域や特性に偏りがありすぎないか配慮した。商業的にとても成功しているイベントは受賞金がなくても持続可能と判断し外すなどした。

 結果、非常にバラエティ豊かな受賞者が40組決まり、各評議員がスピーチをして8組ずつ表彰するというセレモニーが9月7日に盛大に行われた。まず“ベルリン・ストリッパーズ・コレクティブ”によるパフォーマンスがあって最初から盛り上がりまくり、元歌手の現ベルリン州政府文化担当参事、ジョー・チアーロ氏があいさつ。評議員の一人であるブリーチはスピーチの途中で全裸になってステージを駆け回るなど、日本ではあり得ない自由さに満ちたセレモニーだった! 筆者もベルリンのクラブ・シーンに寄せる想いをスピーチさせてもらい、感慨深い夜となった。

今年の受賞者たちの集合写真。多彩な40組の会場やコレクティブがトロフィーと1万ユーロ(約150万円)の賞金を手にした。終始華やかで楽しい雰囲気の授賞式だった(写真©Andrea Rojas)

今年の受賞者たちの集合写真。多彩な40組の会場やコレクティブがトロフィーと1万ユーロ(約150万円)の賞金を手にした。終始華やかで楽しい雰囲気の授賞式だった(写真©Andrea Rojas)

2023年の評議員たち。左からセキュリティーのスマイリー・ボールドウィン、ドラァグ・パフォーマーのブリーチ、アーティスト兼レーベル・オーナーのグドゥルン・グート、DJ兼オーガナイザーのロルスネークと筆者(写真©Andrea Rojas)

2023年の評議員たち。左からセキュリティーのスマイリー・ボールドウィン、ドラァグ・パフォーマーのブリーチ、アーティスト兼レーベル・オーナーのグドゥルン・グート、DJ兼オーガナイザーのロルスネークと筆者(写真©Andrea Rojas)

 実際の“クラブ・カルチャーの日”はドイツの統合記念日の10月3日。それを記念し、その週に受賞者及び有志による、さまざまな記念クラブ・イベントが市内で開催される。

 

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浅沼優子/Yuko Asanuma

【Profile】2009年よりベルリンを拠点に活動中の音楽ライター/翻訳家。近年はアーティストのブッキングやマネージメント、イベント企画なども行っている

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