歌や楽器の音を録音するために必要なマイク。音の振動を電気信号に変えるという役割を果たし、その信号はオーディオインターフェースを経由してパソコンに伝送されます。ボーカルを録音する際は、ノイズの原因となる強い息をカットするための“ポップガード”を併用するとよりよいでしょう。マイクの中にもコンデンサー、ダイナミックなど、さまざまな種類があるので、このページの選び方のポイントと、おすすめ製品をチェックしてみてください。
こんな方は要チェック!
✓ 声や演奏を録音したい
✓ スマホ内蔵のマイクより良い音で録りたい
✓ 自分の声を配信したい
- マイク選び方のポイント
- Audio-Technica AT2020 / AT2035
- Audio-Technica AT4040
- AUSTRIAN AUDIO MiCreator
- AUSTRIAN AUDIO OC707 / OD505 / OD303
- AUSTRIAN AUDIO OC7 / OD5
- AUSTRIAN AUDIO OC818 / OC16
- beyerdynamic TG V70 / M 88
- beyerdynamic M 90 PRO X
- LEWITT LCT 240 PRO
- sE Electronics sE2200 / V7
- SHURE SM7B / MVX2U
- ソニー C-80 / C-100
- TELEFUNKEN M80
- TAMA Microphone Stands & Arms
- サンレコ・ビギナーズ|音楽制作に役立つ初心者ガイド
マイク選び方のポイント
1. ダイナミック、コンデンサー、リボンどれにする?
ダイナミックマイクは、丈夫で取り扱いが楽なのが利点です。比較的安価でレコーディングにもライブにも使えるので、最初に買うマイクとしておすすめします。キラキラした音像というより身の詰まった押しの強い音にしたいときに選ぶのが良いでしょう。特に得意なのは、パーカッションやギターアンプなど音の立ち上がりが早く、音量の大きい楽器です。ロックなど中域がしっかりした抜けの良いボーカルが欲しいときも有効でしょう。
コンデンサーマイクは、周波数レンジが広く、弱音から強音までより繊細に音を捉えることができます。また、ダイアフラム(音を捉える膜)の大きさで、ラージダイアフラム(直径1インチ程度)、スモールダイアフラム(それ以下)の2種類に分類されます。細長いペンシル型のものは概ねスモールダイアフラムで、高域をシビアにキャッチする反面、豊かな低域の表現はやや苦手。金物、きらびやかなアコギやピアノ、ルームマイクなどに使うことが多いです。一方、筒状のものが多いラージダイアフラムのマイクは、低域から高域までスムーズに捉えるため、ボーカルやアコースティック楽器全般に使われます。使用時に電源を必要とすることや、湿度を抑えて保管しなければならないのが、取り扱い上での注意点です。
リボンマイクは、柔らかく温かみのある音が特徴です。ピーク成分を上手くいなしてくれるので、ナチュラルで耳当たりの良い音像になります。個人的には民族楽器的弦楽器(三味線、箏なども含む)にマストで使います。構造上取り回しにやや配慮が必要ですので、中級者以上におすすめといったところでしょうか。
2. 用途に合った“指向性”を選ぶ
ダイアフラムが“どの角度から来た音をどの程度受け止めるのか”という性質を“指向性”と言います。大きく分けて3つに分類され、それぞれの中間も無限に存在します。
まず単一指向は、マイクの正面方向の感度が強く、横〜後ろにいくにつれ感度が弱くなります。録りたい音にマイクを向けるのですから、一番理にかなったポピュラーな指向性です。よりポイントが狭くなる超単一指向というものも存在します。無指向は、マイク周り全体を均等に収録できるのが特徴です。部屋鳴りの収録、マイクを中心に円形に人を並べ、コーラスやクラップを録るときなどに使うことが多いです。双指向は、マイクの正面と真後ろを均一に捉えます。一本のマイクに二人が向かい合って歌う場合などに使われ、例えばリボンマイクはその構造上、双指向の性質を持ちます。
解説:林憲一
「多様なマイクがリリースされていて、それぞれの音色は使ってみないと分からないのですが、雑誌やネットなどの情報を参考に自分に合うマイクを探してみるのも楽しいと思います」
【Profile】ビクタースタジオでサザンオールスターズなどの作品制作に携わった後、フリーランスのレコーディング/ミキシングエンジニアに。近年は、阿部真央、石崎ひゅーい、KOKIA、斉藤壮馬、DISH//らを手掛ける。
※記載されている製品価格はすべて2023年12月13日時点の税込み価格です。
Audio-Technica AT2020 / AT2035
コストパフォーマンスに優れたビギナー向けのコンデンサーマイク
幅広いラインナップを展開するAudio-Technicaのマイクの中から、ビギナーに適した2本を紹介しよう。
AT2020は、自宅でレコーディングを楽しんだり、動画配信をしたりしたい人たちに適したコストパフォーマンスの高いコンデンサーマイクだ。スタジオクオリティの明瞭度を誇り、ミュージシャン、ストリーマー、ポッドキャスターなどのクリエイターに愛されている。指向性は単一で、サイドとリアの収音を抑え、狙った音だけを捉えることが可能。専用設計のダイアフラムを採用し、さまざまなシーンに対応する高耐入力設計と広いダイナミックレンジを備えている。専用スタンドマウントとマイクポーチも付属。2006年の発売以来、世界で累計販売数100万本を超えるロングセラーモデルである。
一方のAT2035も、自宅録音や動画配信に適した単一指向性のコンデンサーマイクだ。新開発のダブルウェーブダイアフラムを採用し、低ノイズでスムーズかつナチュラルな音質を生み出す。AT2020同様こちらも高耐入力設計と広いダイナミックレンジを有する。エアコンの騒音などを低減する80Hzローカットフィルタースイッチと、不要な雑音をカットする-10dBパッドスイッチを搭載しているのも特徴。専用ショックマウントとマイクポーチも付属する。
Audio-Technica AT4040
AT4040は、1インチの大口径ダイアフラムを搭載したコンデンサーマイク。そのスムーズで自然な音響特性はプロの録音現場や放送局、ステージでも活用されている。トランスレスの回路によって低域のひずみをなくし、ハイスピードな音の立ち上りに的確に対応する。低いセルフノイズ、ワイドなダイナミックレンジ、高耐入力も特徴だ。ニッケルめっきの真鍮製バッフルが高い安定度と適切な感度を実現し、音響的に開放された筐体により、不要な内部反響音を低減する。80Hzローカットフィルタースイッチ、-10dBパッドスイッチも標準装備。
AUSTRIAN AUDIO MiCreator
MiCreatorは、コンデンサーマイクとUSB-C接続のシンプルなオーディオインターフェースを組み合わせたクリエイティブツール。マイクは角度調整可能で、パネルにはマイクゲイン(ハイ/ロー切り替え)/ミュートスイッチ、LEDバー、ボリューム/バランスジョグダイヤルが搭載されている。パソコンやスマートフォン、タブレットに接続するだけで即座に高音質なレコーディングが行える。また、追加入力を使用してセットアップを拡張し、ステレオ録音や追加音源の録音なども可能となる。金属製の頑丈なハウジングで、耐久性に優れているのも魅力だ。
AUSTRIAN AUDIO OC707 / OD505 / OD303
オーストリア発のブランドが送り出すボーカル用のハンドヘルドマイク
AUSTRIAN AUDIOの豊富なマイクラインナップの中からボーカル用のハンドヘルドモデルOCシリーズを紹介しよう。
OC707は、名機AKG C 451に搭載されているCK1カプセルからインスピレーションを受けて誕生したOCC7カプセルを備えるコンデンサーマイク。シルキーでスムーズな中域と高域を特徴とし、切り替え可能なローカットフィルターを搭載している。OD505は、デュアルデザインのODC50アクティブカプセルを搭載したダイナミックマイク。フロントカプセルはファンタム電源を要し、コンデンサーマイクと同等の感度を有する。切り替え可能なローカットフィルターに加え、破裂音を効果的に軽減する3Dポップノイズディフューザーも搭載する。また、ストレートなダイナミックマイクの特性を持つデュアルデザインのODC50カプセルを搭載したOD303もラインナップ。こちらも3Dポップノイズディフューザーを搭載している。
3モデルともに、独自のオープンアコースティックテクノロジーによってカプセルと筐体の接点を最小限に抑えることで、サウンドの回折や不要な反射/共振を抑制しナチュラルなサウンドを提供。さらに最先端のマテリアルと精巧なメカニズムにより、フィードバックやハンドリングノイズも低減している。
AUSTRIAN AUDIO OC7 / OD5
OC7は、AKG C451に搭載されているCK1カプセルにインスパイアされたOCC7カプセルを搭載するコンデンサーマイク。オープンでディテールに富んだサウンドが特徴だ。一方のOD5は、コンデンサーマイクの特徴も併せ持つダイナミックマイク。ケーブル長に影響を受けず一貫したパフォーマンスを提供する。共に柔軟なセッテイングを可能とする220°の回転機構を備える。オープンアコースティックテクノロジーによるサウンドの回折や不要な反射/共振の抑制、2段階ハイパスフィルターやアナログパッド、堅牢なダイキャストボディも特徴だ。
AUSTRIAN AUDIO OC818 / OC16
OC818は、AKG C12に用いられたカプセルを基にデザインされたCKR12デュアルセラミックカプセルを搭載するコンデンサーマイク。2基のダイアフラムとデュアル出力を搭載している。Polar Pilotアプリによって指向性を、単一、超単一、無、双と切り替えられる上、255段階で調整可能。また、ハイパスフィルター、PADの切り替えスイッチも装備し、それらもアプリでリアルタイムにコントロールできる。OC16は、シングルセラミックカプセルのCKR6を搭載するコンデンサーマイク。カプセルの特性はCKR12と同じ。指向性は単一となっている。
beyerdynamic TG V70 / M 88
TG V70は、ボーカル向けのダイナミックマイク。幅広いレンジと高い解像度によるパワフルなサウンド、超単一指向性による優れたハウリング特性を備えている。堅牢な構造はステージでの使用に適している。一方のM 88は、ボーカルだけでなくキックドラムやサックスなど多様な楽器に対応する、ロングセラーのダイナミックマイク。こちらも指向性は超単一。幅広いマイク周波数特性と高度なマイク感度を備え、バランスのとれたサウンドと深みのあるベーストーンを実現している。共に、ドイツでハンドメイドによって作られている。
beyerdynamic M 90 PRO X
M 90 PRO Xは、ホームレコーディングやツアー中滞在先のホテルなど、モバイルでもスタジオクオリティで録音可能なトゥルーコンデンサーマイク。ボーカルだけではなく、弾き語りや楽器録りにも対応する。トランスペアレントなサウンドでマイクプリアンプによる多彩な色付けも可能だ。単一指向性のラージダイアフラムで、より繊細かつ低ノイズのレコーディングを実現。伸びやかな高域特性で、声の細部までピックアップ。中音域は力強く、高音域と低音域は自然なサウンドを再現する。
LEWITT LCT 240 PRO
LCT 240 PROは、自宅でのレコーディングやポッドキャスト制作にプロクオリティのサウンドをもたらしてくれる単一指向性のコンデンサーマイク。汎用性を高め、ボーカルから楽器収録まであらゆる用途に対応する。搭載されているダイアフラムは2/3インチ。感度が16.7mV/Pa(-35.5dBV/Pa)と高い一方で、142dB SPLと高耐音圧であるのも特徴だ。コンパクトで、重さは310gと、取り回しの良さも魅力。モダンな形状、ブラックとホワイトのカラーバリエーションがポップな印象を与えるが、手に取るとメタルボディから堅牢さが伝わってくる。
sE Electronics sE2200 / V7
sE2200は、ハンドメイドの1インチカプセルを搭載したコンデンサーマイク。優れた音響特性を実現するために2つの金蒸着ダイアフラムが用いられている。-10dBと-20dBを選択可能なPADスイッチにより、ダイナミックレンジの広いソースにも対応。80Hzと160Hzから選択可能なローカットフィルターは、低域のランブルや不要な足元からのノイズなどを軽減する。一方のV7は、スピードの速いアルミ製ボイスコイルを採用したダイナミックマイク。スティールメッシュグリルはへこみや錆に強く、金メッキされた接続部はロスなく信号を伝えてくれる。
SHURE SM7B / MVX2U
音楽とスピーチの両方に適するダイナミックマイクとXLR接続をUSB接続に変換するインターフェース
SM7Bは、フラットで伸びやかに広がる周波数特性により、音楽とスピーチの両方に適するダイナミックマイク。単一指向性で収音軸外の音をカット。エアサスペンション式の衝撃アイソレーターとポップフィルターにより、メカニカルノイズや呼吸音も抑えてくれる。また、電磁波シールドを搭載することで、パソコンのディスプレイやスタジオ機器から生じるハムノイズを防いでくれるのも特徴だ。さらに、標準装備の取り外し可能なウィンドスクリーンにより、破裂音を抑えることで近接収音時にも温かみのあるボーカルを再現する。低域ロールオフ設定と中域を強調した設定 はスイッチで切替可能。
MVX2Uは、XLR接続のマイクをパソコンなどにUSB接続するための、持ち運びにも便利な小型サイズのデジタルオーディオインターフェース。無料のデスクトップ用ShurePlus MOTIV™アプリで、より詳細なオーディオのコントロールも可能だ。オートレベルモードとマニュアルモードが選べ、オートレベルモードではインテリジェントDSP機能によりマイクゲインを自動的に調整して安定したオーディオ出力を実現。マニュアルモードではEQ、リミッター、コンプレッサーなどのDSP機能を手動で設定できる。ファンタム電源に対応し、遅延のないモニタリングが可能なヘッドホン出力も備える。
ソニー C-80 / C-100
自宅でのコンテンツ制作からハイレゾ収録まで用途に応じて選べるコンデンサーマイク
C-80は、ボーカルや楽器、ボイスコンテンツを自宅で収録するのに適した、単一指向性のコンデンサーマイク。搭載するマイクカプセルは、プロスタジオ用マイクとして定評のあるC-100のマイクカプセルをベースに開発。バックプレートの音響インピーダンスを低減し、高感度化を実現している。
一方のC-100は、高域用と低域用の2ウェイマイクカプセル構成により、広がりのある高域と豊かな中低域を両立した、ハイレゾ収録にも適する可変指向性コンデンサーマイク。高域用マイクカプセルでは、振動膜の薄膜/軽量化と背面電極板の音響インピーダンスの低減を図り50kHzまで高い再現性を持った収録を実現。低域用マイクカプセルはバックプレートの音響インピーダンス低減により高感度化。力強く、量感豊かな収録を併せて実現している。マイクケースとシャーシには、防振性と制振性を確保するため、比重の高い亜鉛ダイキャストを採用した。
C-80、C-100共に、高強度、高絶縁性を有する、ポリエーテルイミド(PEI)に高精度な樹脂切削加工を施した絶縁構造材を使用し、さらに、カプセルケース、背面電極には高精度な切削加工による真鍮を採用。振動膜には24金蒸着を施した。これらを高精度に組み立て加工することで、高精度、高純度な歪みの少ない収録を可能にしている。
TELEFUNKEN M80
存在感のあるサウンドが特徴のダイナミックマイク ボディとグリルの色を選んでオリジナルの1本が作れる
M80は、単一指向性でワイドなダイナミックレンジと周波数特性を備えたダイナミックマイク。コンデンサーマイクに匹敵するような周波数レスポンスと優れた透明性を備える。ハンドリングノイズを抑えるボディ設計で、ダイアフラムの音色はオープンでワイド。ミックスの中でも埋もれることなく存在感のある音が期待できる。
機構的な特徴はローマスボイスコイルおよび超薄型のマイラーダイアフラムとカスタム出力トランス。これらによって、重たいボイスコイルとダイアフラムでは失われがちだったサウンドを、変化させることなく高効率で電気信号に変換することが可能となった。また、TELEFUNKENのカスタムワウンドトランスフォーマーT80が、アナログオーディオ特有の温かみと存在感のあるサウンドに一役買っている。低域の近接効果も程良くコントロールされているため、ボーカルはもちろん、ドラムやベースの録音にも適している。
マイククリップ及び専用ケースを付属。ボディとグリルの色を自由に選択してオリジナルの1本が作れるのもユニークな特徴と言えるだろう。ワイアレスマイク用のヘッドが別売りされているほか、楽器のレコーディング時に取り回し良く使えるショートサイズのM80-SHが用意されているなど、バリエーションも豊富にそろっている。
TAMA Microphone Stands & Arms
ドラムのトップブランドが手掛けるマイクスタンド&アーム
ドラムメーカーTAMAが手掛けるマイクスタンドとアームを4モデル紹介しよう。
Telescoping Boom Stand MS736BKは、プロのレコーディングスタジオでの使用を想定し、スタンドからのノイズを防止しつつ安定してマイクを保持するブームマイクスタンド。先端部に実体ロッドを採用したテレスコブームアームや、ドラム用ハードウェアの技術を流用したブーム角度調整機構、鉄製の実体ロッドを用いて低重心化を図った3脚ベースなど、さまざまな機構を持つ。MS205BKは、長めの脚パイプとダイキャストベースにより優れた安定性を実現するブームスタンドだ。
Desk-Mounted Microphone Boom Arm MSDA206BKは、机の縁に取り付けてマイクを任意の位置にセットするためのアイテム。ブームアームの角度調整機構は、ブームホルダーをラバープレートで挟み込み、さらにその外側から頑丈なダイキャスト製のプレートで押さえ込む方式により、スムーズな操作性と安定した保持力を実現する。
Microphone Telescoping Boom Arm with Clamp MSCA734BKは、マイクスタンドやシンバルスタンドなどに取り付けて、マイクをセットするためのアタッチメント。ボーカル用のマイクスタンドにアコースティックギター用のマイクを追加するような場合に便利だ。
サンレコ・ビギナーズ|音楽制作に役立つ初心者ガイド
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