SHURE Nexadyne™ 8 × 岡直人&奥中康一郎(えんぷてい)〜PAエンジニア&ボーカリストがレビュー【第2回】

SHURE Nexadyne™ 8 × 岡直人&奥中康一郎(えんぷてい)〜PAエンジニア&ボーカリストがレビュー【第2回】

埋もれやすい自分の声でもくっきりとクリアに聴こえた(奥中康一郎)
最近はやりのモダンで乾いた音像にもフィットするマイク(岡直人)

カーディオイドのNexadyne™ 8/C(以下NXN8/C)とスーパーカーディオイドのNexadyne™ 8/S(以下NXN8/S)をラインナップする、ボーカル用ダイナミック・マイクSHURE Nexadyne™ 8シリーズ。特許技術“Revonic™(レボニック)テクノロジー”により、明瞭度の向上、不要な信号の除去、ハンドリング・ノイズの低減などを実現し、ライブ向けボーカル·マイクとして有用な仕上がりであることがうかがえる。本連載では、PAエンジニアとボーカリストにライブを想定した製品チェックを行っていただき、その結果を全4回にわたってレポートする。今回は、さまざまなアーティストのライブPAで活躍するエンジニア岡直人、そして岡がPAを担当するバンド、えんぷていの奥中康一郎がレビュー。バンド形態の男性ボーカルで、本機の実力はいかに発揮されるのか?

左からエンジニアの岡直人、えんぷていの赤塚舜(b)、奥中康一郎(vo、g)、神谷幸宏(ds)。奥中のソロ形態でのデモ曲「銀河に浮かべて」を課題曲にテストしていただいた。同曲は、右記二次元コードから試聴可能

左からエンジニアの岡直人、えんぷていの赤塚舜(b)、奥中康一郎(vo、g)、神谷幸宏(ds)。奥中のソロ形態でのデモ曲「銀河に浮かべて」を課題曲にテストしていただいた。同曲は、下の埋め込みプレーヤーで試聴可能

 エンジニア  岡直人(写真左)
フリーランスとして活動するサウンド・エンジニア。君島大空、Tempalay、中村佳穂、KID FRESINOなどのライブPAを手掛けるほか、舞台の音響や舞台音楽の制作もこなす。

 ボーカリスト  奥中康一郎(写真右から2番目)
名古屋発のインディー・ロック・バンド、えんぷていの作詞作曲を手掛けるフロントマン。R&Bやボサノバ、インディー・ロック、ドリーム・ポップ、歌謡曲に影響を受け、日本的なメロディの可能性を引き出す独自のスタイルを表現する。

目を見張る軸外音の排除性能

 奥中康一郎のボーカル・マイクとして、カーディオイドのNXN8/C、スーパーカーディオイドのNXN8/S、SHURE SM58、そして奥中がライブでよく使用しているというBETA 58Aを順番にテストした。まず岡は、Nexadyne™ 8特有の、収音軸外の音を排除する性能によって実現するかぶりの少なさに驚いたと語った。

 「SM58、BETA 58Aと比べて、Nexadyne™ 8は2機種とも全然かぶりが気にならなかったです。スーパーカーディオイドのNXN8/Sにいたっては、ドラムやベースの音がほとんど聴こえなくなりました。また、ボーカル・マイクのかぶりでいつも苦労するのがシンバルなのですが、Nexadyne™ 8のピークは、シンバルのかぶりが気になる2〜3kHzよりも上にあるため、多少拾ってもうるさくなかったですね」

 奥中もかぶりの少なさには目を見張ったそうで「大所帯で音数が多かったり、ナカオトがラウドなバンドには、NXN8/Sはうってつけのマイクだと思います」と話してくれた。

奥中康一郎(写真中央)のボーカル・マイクにNexadyne™ 8/Cを使用している様子。エンジニアの岡直人は「SHUREのマイクは高域がとても上品なサウンドでライブに使いやすい。Nexadyne™ 8はそのキャラクターを継承しつつ、高域の明瞭度とパワーを実現しています」と語った

奥中康一郎(写真中央)のボーカル・マイクにNexadyne™ 8/Cを使用している様子。エンジニアの岡直人は「SHUREのマイクは高域がとても上品なサウンドでライブに使いやすい。Nexadyne™ 8はそのキャラクターを継承しつつ、高域の明瞭度とパワーを実現しています」と語った

近接効果がなくスッキリとした印象

 次に、サウンド面について奥中に尋ねた。

 「NXN8/Cはレンジがとても広く、かつ滑らかな印象でした。そのため、モニターのボリュームを大きくしても耳に痛くなく、クリーンなサウンドのままモニターできるので、懐が深いマイクだと思いました。NXN8/Sもおおむね同じ印象ですが、NXN8/C以上にモニターの音がくっきりとしていて、埋もれやすい自分の声でもクリアに聴こえました

 続けて岡は「2機種とも、近接効果がとにかくなく、コンデンサー・マイクのようなフラットでスッキリとした印象です。その上でダイナミック・マイクの魅力とも言える迫力や温かみがしっかりとあります。4kHzあたりにパワーがあるので、リバーブとの相性も良いですね。2機種の印象の違いとしては、NXN8/Cはさらに滑らかでフラット、NXN8/Sは高域がより明瞭でジャリッとした質感でした」と語った。

 最後に、Nexadyne™ 8と相性が良いと思えるユーザーについて岡に尋ねた。

 「まず、今日試したえんぷていにお薦めだなと(笑)。2機種とも、どちらかというとドライなサウンドなので、最近はやりのモダンで乾いた音像にもフィットすると思いました。あと、シンプルでシックなデザインがかっこ良くて、デザイン性の高いボーカル・マイクを探している人にもぜひお薦めしたいです。Nexadyne™ 8くらい見た目がかっこいいボーカル・マイクは、なかなかないんじゃないかと思います」

 POINT 

✓ 軸外音の排除性能
✓ コンデンサー・マイクのようなクリアなサウンド
✓ シックなデザイン

SHURE Nexadyne™ 8

 特許技術“Revonic™(レボニック)テクノロジー”を採用したボーカル用ダイナミック・マイク、Nexadyne™ 8シリーズ。2つのトランスデューサーが相互に作用することで、より高度な周波数特性の最適化、コンデンサー・マイクに匹敵する中高域の明瞭度、ハンドリング・ノイズの低減などの効果が得られるという。カーディオイドのNXN8/Cと、スーパーカーディオイドのNXN8/Sをラインナップする。

オープン・プライス(市場予想価格:48,400円前後)

▪タイプ:ダイナミック
▪指向性:カーディオイド(8/C)、スーパーカーディオイド(8/S)
▪周波数特性:50Hz~20kHz
▪出力インピーダンス:300Ω(8/C)、450Ω(8/S)
▪感度:–54.0dBV/Pa(2.00mV)at 1kHz(8/C)、–51.0dBV/Pa(2.81mV)at 1kHz(8/S)
▪重量:258g(8/C)、294g(8/S)
▪外形寸法:47(φ)×181(H)mm(実測値)
▪付属品:マイク・ホルダー、専用ジッパー・ケース、3/8インチ-5/8インチ変換ねじ

製品情報

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