注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回は、今年5月のバージョン・アップにより新機能が加わったピアノ音源ソフト、TOONTRACK EZ KEYS 2をピックアップ。シンプルなピアノ音源にとどまらず、ユーザーの制作を支援する機能も多数搭載している。代理店であるクリプトン・フューチャー・メディア SONICWIREチームの林有希寛氏、岩出龍馬氏、市川太貴氏、メディア・インテグレーションの伊部友博氏に話を聞いた。
EZ KEYS 2
2012年リリースのEZ KEYSからバージョン・アップされたピアノ音源、EZ KEYS 2。ドラム音源のSUPERIOR DRUMMER 3やEZ DRUMMER 3、ベース音源のEZ BASSなどに搭載する、楽曲制作のためのさまざまな機能がピアノ音源用に最適化されている。バンドルを含むEZ KEYSシリーズ製品からのアップグレード版のEZ KEYS 2 / UPG(12,100円)、EZ KEYS 2に加えて、拡張音源EKXを2種類選択できるEZ KEYS 2 Bundle(33,000円)、MIDIフレーズ集のKEYS MIDIを6種類選択できるEZ KEYS 2 MIDI Edition(30,800円)もラインナップされている。
●初代のEZ KEYSがリリースされたのは2012年と、10年以上の長い歴史を持つピアノ音源ソフトです。
林 一般的なピアノ音源ソフトのように、ピアノのサウンドを収録するだけではなく、作曲を身近にするというコンセプトで誕生しました。コードの解析や、MIDIフレーズ集の“Grooves”から演奏パターンを選択したり、そのパターンのコードを楽曲に合わせてトランスポーズする、などの機能がEZ KEYSには備わっていました。そのように作曲を支援する機能にスポットライトを当てたというのが、当時としても革新的だったと思います。
伊部 初代のEZ KEYSを店頭で紹介した際、皆さん“もうピアニストに頼まなくても自分でできるんじゃない?”といった反応でしたね。ピアノが弾けないギタリストの方でも、コード進行を作成してパターンを選んだらプロのようにピアノを演奏してくれるので、とてもインパクトが大きかったですね。
●ではここから、EZ KEYS 2へのバージョン・アップで追加された要素を中心に伺っていきます。まずは新たに収録された音源について教えていただけますか?
林 コア・ライブラリーとして、EZ KEYS 2のために収録したグランド・ピアノ、FAZIOLI F212の音源が搭載されています。コールドプレイなど一流のミュージシャンがレコーディングで使用する、ストックホルムのRMV Studioでレコーディングを行っています。録音の際にも複数のマイクを使用していますが、EZ KEYS 2の“Multi Close”機能を使うと、マイクごとの音をDAW上へ送ることができます。例えばルーム・マイクの音量を大きくしたり、クローズ・マイクにエフェクトをかけたりすることが可能になりました。また、プリセットによって音作りのパラメーターの種類や数が変化して、その音色に適したノブだけが表示されるので、慣れていない方でも安心して音色調節できるようになっています。
伊部 実際に弾いてみたところ、芯がしっかりとありつつ輪郭も分かるし、強く弾いても高域が悲鳴を上げることがなかったです。すごく良いサウンドで、ピアノ音源単体として見ても入手する価値があると思います。
●作曲を支援するという面でも、さまざまな機能が実装されています。コードを提案する“Suggest Chords”とはどういった機能でしょうか?
岩出 コード進行に対して、“こういうコードに変えてみたらどうか”というのを提案してくれる機能です。Pop/Rock/Country、Blues、Cinematicなど、指定したジャンルによって提案される内容が変わります。例えば、すべてCのコード進行を読み込ませても、提案されるコードから組み替えていくことができます。作曲のアイディアの種にもなりますし、ジャンル違いのアレンジを作成するのにも役立ちますね。
林 Suggest Chordsの中には“Change Chords”という機能もあります。これは、ボタンを押すたびに譜割りまで含めてコード進行が生成されるというもので、そこからさらにコードをカスタマイズできます。これらは、AIによる機械学習技術が取り入れられているとのことです。
岩出 最近はAIによる作曲技術が発達していますが、すべてが出来上がった状態のため、変更を加えられないものもあります。EZ KEYS 2はユーザーに選択する余地があって、コード進行の内部構造がどうなっているのかも分かる。音楽理論への導入や勉強のツールとしても優秀だと思います。
伊部 0から1を生み出すのはかなり労力が必要なことですが、Change Chordsでできたものを聴いて、“ここから曲を作っていこう”と思う瞬間が何度もありましたね。
●EZ DRUMMER 3やEZ BASSと同様に、“Bandmate”機能も搭載されています。
岩出 オーディオ・データやMIDIデータを解析して、Groovesの中からそれに合ったフレーズやコード進行を提案してくれる機能ですね。
林 リズムの頭であるアタックにマッチするようなフレーズが示されるようになっています。
伊部 単純にオーディオをMIDI化するといったものではなく、元のデータに近いフレーズが提案されるので、アレンジとしてももちろん、そこからまた別の曲に発展させていくような使い方もお勧めです。
●“Tap2Find”も、フレーズを提案してくれる機能です。
林 Bandmateと似た部分もあるのですが、こちらは画面上の鍵盤もしくはMIDIキーボードをタップすることで、入力したリズムやフレーズに似た演奏パターンがGroovesから提案されるというものです。Groovesには多くのパターンがあり、このようにあらゆる検索方法が用意されています。
●そのほかにはどのような機能がありますか?
林 EZ KEYS 2内の専用ピアノロール、“Grid Editor”にある“Humanize”は、人間が弾いたようにベロシティの強弱を付ける機能です。ベタ打ちで打ち込んだデータから、手作業で一つずつ強弱を調整していく手間を大幅に軽減してくれます。いわゆるランダマイズではなく、本当に人間が弾いたような質感になりますよ。
市川 Grid Editorの“Amount”ノブでは、フレーズのMIDIノートの数を調整できます。ベタ打ちのシンプルなコード進行にリズムを色付けするノートが自動で足されたりと、手軽に緩急を付けられる便利な機能です。
●拡張音源についても新たなフォーマットが用意されています。
林 ほかのEZシリーズ同様、EZ KEYS 2という本体に対して、EKXというサウンド・ライブラリーを追加できるようになりました。コンセプトが強めのものや、特定のジャンルに特化したラインナップがあるのも特徴だと思います。
●ここまで伺った中だけでも、さまざまな角度から曲作りにアプローチできるという印象です。
林 作曲を“支援”するのが目標になっているからですね。EZ KEYS 2で1曲を丸々作るのではなく、発想にないインスピレーションを引き出したり、反対に“こういうものが欲しい”というときにはパッと提案してくれる。クリエイティビティをブーストするための機能が徹底的に磨かれています。
伊部 人間に対して、クリエイトする喜びをまだ残してくれてる気がするんですよね。人には表現したい、演奏したい欲求って絶対にあるので、それを取り上げたらやる気がなくなってしまう。その欲求をかき立ててくれて、向上しようと思わせてくれる教師的な存在でもあると感じています。
●最後に、EZ KEYS 2はどういった方にお薦めでしょうか?
市川 これだけ多くの機能があるので、これから作曲を始めてみようという方に使っていただきたいです。あと、EZ KEYS 2で編集したMIDIフレーズは、もちろんほかのソフトでも使用できるので、既にお気に入りのピアノ音源ソフトがあるという方にも自信を持ってお薦めできる製品です。
岩出 演奏者の方の目線で見ると、たくさんの演奏パターンを見ることができて、コード進行を提案してくれて編集もできるなんて機会はあまりないと思うんです。自分のスキルをボトムアップするツールとして使っていただくという意味で、ピアニストの方にもぜひお薦めしたいです。
林 一線級のスタジオで、厳選されたピアノを使って録音されているので音が良いし、数々の機能もある。その上、比較的入手しやすい価格帯ではあると思うので、まずは導入してみて、その機能を実感してみてほしいです。
伊部 さまざまなジャンルのアレンジやコード進行の試行錯誤に役立つし、時短にもつながる。プロの方でも知らないと損をするレベルのソフトだと思いますね。
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