ハイレゾ・オーディオ・ブランドAstell&Kernが送り出すハイファイ・ポータブルUSB-DACケーブル。4.4mm5極バランス出力を持ち、コラボ・モデルなども展開されてきたAK HC2に続き、3.5mmステレオ・ミニ出力対応のAK HC3が登場した。2機種のサウンドをプロ・エンジニアはどう捉えるのか? 4naや鋭児などを手掛ける青葉台スタジオの中村美幸が検証する。
Photo:Hiroki Obara
AK HC3|音楽のリスニングからゲーミングまで対応
“Hi-fi Sound Anywhere”をスローガンとするポータブルUSB-DACケーブル第3弾。バス・パワー電源、Macはドライバー不要(Windows用ドライバーあり)で、コンピューターやスマートフォンの音声を手軽かつ高音質で楽しめる。3.5mm4極マイク・コントローラー入力にも対応したため、ゲーミングやテレワークでの使用も可能だ。
SPECIFICATION
●本体素材:アルミニウム ●DAコンバーター:ESS TECHNOLOGY ES9219MQ×2(デュアルDAC) ●サンプリング・レート:最高32ビット/384kHz ●入力端子:USB Type-C/Lightning ●出力端子:3.5mmアンバランス出力(CTIA規格4極マイク・コントローラー入力対応) ●周波数特性:±0.013dB(20Hz〜20kHz) ●SN比:118dB@1kHz ●出力インピーダンス:2Ω ■クロストーク:−130dB@1kHz ●対応OS:Mac(OS X 10.7以上)/Windows(10、11)/iOS/Android ●外形寸法:18.2(W)×59.0(H)×11.5(D)mm(出力部)、12.5(W)×21.0(H)×8.7(D)mm(プラグ部) ●重量:約20g ●付属品:USB Type-C to Lightning変換アダプター
AK HC2|ハイレゾ音質のストリーミング再生が可能
“SMALL,BUT MIGHTY”をスローガンとした、ポータブルUSB-DACケーブル第2弾として登場。GND接続ありの4.4mm5極バランス出力を搭載する。CIRRUS LOGICのDAコンバーターを採用し、ハイレゾ音質のストリーミング再生も可能だ。最大32ビット/384kHz(PCM)に対応している。
SPECIFICATION
●本体素材:アルミニウム ●DAコンバーター:CIRRUS LOGIC CS43198×2(デュアルDAC) ●サンプリング・レート:最高32ビット/384kHz(PCM) ●入力端子:USB Type-C/Lightning ●出力端子:4.4mm5極バランス出力(GND接続あり) ●周波数特性:±0.011dB(20Hz〜20kHz) ●SN比:122dB@1kHz ●出力インピーダンス:1.5Ω ●クロストーク:−146dB@1kHz、バランス ●対応OS:Mac(OS X 10.7以上)/Windows(10、11)/iOS/Android ●外形寸法:22.8(W)×60.0(H)×12.1(D)mm(出力部)、12.0(W)×21.0(H)×6.5(D)mm(プラグ部) ●重量:約29g ●付属品:USB Type-C to Lightning変換アダプター
ミックス作業やクリエイターの音色選びに
スタジオ外でもエディットなどの作業を行う中村氏。AK HC3/AK HC2のコンパクトな筐体は魅力的に映ったようだ。
「AK HC2/AK HC3を試したときに圧倒的に使えると思ったのが、出先でのエディット作業やミックスの修正です。スタジオが埋まっていて作業場所が無い場合や、ツアーの帯同中にホテルや新幹線内でエディットしたいときにオーディオI/Oを使うよりあまりに手軽ですよね。両機種とも解像度が非常に高く、レンジの広さを感じます。ケーブルが切れにくい素材なのも良いですし、Macではドライバー不要なので、接続面の煩わしさは何も無かったです」
続いて、AK HC2を使った印象を中村氏はこう話す。
「AK HC2は芯になるような帯域の聴こえ方が強い感じがしました。定位を基本的に真ん中に置くキックやスネア、ベース、歌などはシルエットが大きく聴こえる感じで、低域の存在感があるように感じます。どこかピンポイントで集中して聴きたい場合にすごく良さそうで、例えばミックス作業を一から始めたり、クリエイターが音色選びをしたりするにはAK HC2を使うと分かりやすそうだと思いました」
好きな聴こえ方のまま聴こえるものが多くなる
次に、新機種であるAK HC3の印象を尋ねてみよう。
「AK HC3はある程度ミックスされた曲やマスタリングのチェックに使えると思いました。既存曲を聴くと、声がよく出る帯域のツヤ感がより見える感じがします。解像度が高く、ステレオ感の広がりがあって“本当に同じ音源を聴いているのかな”と思うくらい、聴こえていなかった音が聴こえる感じがしました。特に高域の輪郭がくっきりします。アーティストはもちろん、レーベルのディレクターの方などにもお薦めしたいです。複数アーティストのミックスの仕上がりを確認したり、常に作品の情報収集をする必要がある方でも、常にスピーカーでは聴けないことも多いと思うので。エンジニアとしては、解像度がかなり良いのでミックスをしっかり“頑張らないと”と思います」
最後に中村氏は、AK HCシリーズをクリエイター/リスナー問わず、多くの人が導入することに期待していると話す。
「こういう聴こえ方もあると知っているか知らないかによって制作やミックスが変わってくる感じがします。ビルボードのチャート曲などを聴くと、より勉強になりますね。好きなイアフォンを持っている人は、好きな聴こえ方のまま、聴こえるもの、分かることが多くなる感じなので、イアフォンを上位機種に買い換えるより、AK HCシリーズを買った方がいいかもしれません。エンジニアとして、一般のリスナーがこのくらいのクオリティの状態で音楽を聴く機会が増えるのもすごくうれしいですね。普及したらいいなと思います」
中村美幸
明治学院大学卒業後、2019年より青葉台スタジオに所属。WON、4na、鋭児、monje、安田レイ、THE2、羊文学などの作品に携わる。また神山羊、サカナクションではライブ・スタッフとしても関わる。