AIマスタリング/音楽配信/プロモーションなどをオンラインで一貫して行えるクリエイティブ・プラットフォームのLANDR。もともとオンラインでのAIマスタリング・サービスとしてスタートしたが、現在ではプラグインやサンプルの提供、クリエイターのコラボレーションサポート、配信ディストリビューションなど、そのサービス内容は多岐にわたる。
そのLANDRが2024年末のセールを開催中。その中でも総額134,000円相当のプラグインが23,450円(通常時の価格は46,900円)で入手できるUltimate Plugin Bundleをチェックしていきたい。
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Synchro Arts製品を含むLANDR製プラグインのバンドル
Ultimate Plugin Bundleの収録プラグインは以下の通りだ。
- LANDR Mastering Plugin Pro(マスタリングプラグイン)
- LANDR Composer(フレーズ生成インストゥルメント)
- LANDR Synth X(ソフトシンセ)
- LANDR Guitar(ギターループ・プレーヤー)
- LANDR FX Suite(ワンノブ仕様のエフェクト×5)
- LANDR Chromatic(ループ・プレーヤー)
- RePitch Standard(ピッチ補正)
- VocAlign 6 Pro(タイミング補正)
- Revoice Pro 5(ピッチ&タイミング補正)
LANDR FX Suiteは用途ごとに用意された5種類のワンノブ型プラグインの総称。計13種類が収録されている。
注目すべきはRePitch Standard、VocAlign Pro 6、Revoice Pro 5というSynchro Arts製品が含まれていることだろう。2021年からSynchro ArtsはLANDR傘下となっている。つまりこのバンドルもメーカーが自社製品のバンドルとして提供しているものだ。
ちなみに、LANDRではさまざまなサブスクリプションサービスが提供されているが、このUltimate Plugin Bundleは永久ライセンスが提供される、いわゆる買い切りプランとなっている。
「通すだけで音が良くなる」LANDR Mastering Plugin Pro
ではバンドルの中から注目の製品を中心に見ていこう。まずはLANDR Mastering Plugin PRO(Mac/Windows、AAX/AU/VST3対応)からだ。
かつてのオンラインAIマスタリングは、ファイルをサイトにアップロードするとマスタリングを施したファイルがダウンロードできる形だったが、現在ではその機能が含まれた高度なマスタリング用プラグインとしてリリースされている。
マスターにLANDR Mastering Proをインサートすると、再生待機状態となっているので、曲の最も盛り上がる部分を再生すると、解析が始まる。
さて、LANDR Mastering Proが提示してくれたマスタリングを聴いてみようとすると、ピークは絶対に超えないものの、いわゆる音圧が上がりまくった状態で驚かされる。CDしかない時代ならともかく、今はラウドネスノーマライゼーションを考慮したいところだ。メーター下にラウドネス値も表示されているので、どうしたものかとマウスカーソルを持っていくと、その左にある大ぶりのLOUDNESS Amountノブで調整するというTipsが表示された。
LOUDNESS Amountを最小に絞り、バイパスを繰り返して原音と聴き比べてみると、コンプ感などはあまり感じさせず、どこかリッチさが加わり、音の芯と広がりがあるように思える。正直に言えば、バイパスするとちょっと味気ない。ありがたいことに画面上部にGain Matchがあるので、処理前と処理後の音量に惑わされず、音色の違いだけを判断することが可能だ。これでよい結果だと思ったら、任意のラウドネス値(LUFS)になるようにLOUDNESSを上げて調整していけばよい。
このようにLANDR Mastering Proが提示する処理自体はブラックボックスで行われているのだが、調整用パラメーターは豊富に用意されている。特に面白いのは、PRESENCEとDYNAMICSのSaturationだ。PRESENCEはボーカル帯域の抜けがコントロールできるもので、ボーカルの前後感だけでなく、耳に飛び込んでくる中高域の華やかさにかかわる。
一方、DYNAMICSのSaturationはその名の通りサチュレーション=ひずみで倍音を増やす効果を生むものだが、DYNAMICSセクションにあるにもかかわらず、Compressionを絞りきっても機能する。Saturationとはいっても、最大まで上げてもひずみ感は少なく、キラッとした部分が強調されるような印象だ。
そのほかのパラメーターはEQ、コンプ、ディエッサーなど一般的なものだが、シンプルな操作性なので、これで足りなければ任意のプラグインで処理してもよいだろう。
LANDR Mastering Proが面白いのは、ここで行われている処理の具体的な内容が分からないことだ。ただ、「通したら音が良くなる」のは極めて明快で、自分のミックスに不足しているところを補ってくれるのはありがたい。
ボーカルのタイミング合わせにマストなVocAlign 6 Pro
続いて、VocaAlign 6 Proを見ていこう。VocAlignは、複数のボーカルトラックのタイミングをそろえるツール(Mac/Windows対応)として長い歴史を持つものだ。
簡単に言えば、メインボーカルに対してダブルパートやコーラスパートのタイミングを合わせることができる。こうした作業は、もちろんDAWの画面上で一つ一つ丁寧にタイミングをそろえることも可能だが、とても時間がかかる。その作業を簡潔なインターフェースでできるようにしたのがVocAlignだ。
例えば、ボカロ曲の「歌ってみた」ミックスで、ボカロトラックに「歌ってみた」トラックのタイミングを合わせたり、といった使い方もできるだろう。
最新版のVocAlign 6では、インターフェースが改善されて見やすくなったとともに、AVID Pro ToolsでのARA対応、ARA非対応DAWでの複数トラックの同時読み込みなどが可能となっている。ARAではトラックの読み込みも瞬時に行える上、処理したファイルを書き出して……というやり取りをしなくて済むのは便利だ。結果の書き出しにはトラックをコミットすればよい。
特に、Ultimate Plugin Bundleに収録されているのは最上位版のVocAlign 6 Proであり、ピッチやフォルマントのコントロールも可能となっている。メインボーカルのピッチを整えた後に(これは後述のRevoice ProやRePitch Standardで可能)、ダブルやコーラスをそれに合わせて調整するSmartPitch機能もあるので、ピッチ&タイミング修正ツールを持っている人でも、これがあると助かることは多いはずだ。
特にボーカルのリズムのタイトさは、現在のポピュラー音楽で主流となっているテンポの速い楽曲やフレーズで重要視される部分なので、ボーカルのタイミングがそろうことで、曲のリズムの聴こえ方が大きく変わってくるはずだ。複数のボーカルトラックをバシッとそろえる作業が一瞬で終わるのが、VocAlign 6 Proの利点。生のボーカルを扱う人であればぜひ持っておきたい。
高度なボーカル編集ツールRevoice Pro 5の勘所
同じくSynchro ArtsのRevoice Pro 5を見ていこう。ボーカルトラックをMIDIのピアノロールのように表示して、ピッチやタイミングの高度な編集が行える。VocAlign 6 Proと同様、各種プラグインフォーマットやARAに対応しているが、こちらはRevoice 5アプリケーションとリンクして動作する形だ。
実際にRevoice Pro 5を使ってみようとすると、画面上にボタン類が少なく、初見のユーザーはいったいどうしたらいいのかと迷うかもしれない。しばらく触っているうちに、使いこなしのポイントは右クリック(Macではcontrol+クリック)で表示されるメニューにあると気づいた。ここでツールを切り替えることで、さまざまなことが行える。
メニューの中には「Pitch Correct Selected Notes to 100%」(ショートカットはW)という強力なものもあるが、まずおすすめしておきたいのはCenter Note Tool(ショートカットはK)。選択したノートのピッチ中央値と揺れ具合をスライダーで調整できる。これだけで大まかなピッチ補正は完了してしまう。
そのほか、DRAW Tool(ショートカットはD)で直接ピッチカーブを描いたり、Selector Tools(ショートカットはO)でノートのノードをドラッグしてビブラートの深さを変えたりといったさまざまな編集が行える。
さまざまな編集機能を使って緻密にボーカルトラックを仕上げていけるのがRevoice Pro 5の特徴だが、Match機能ではメインとなるトラックのピッチ/タイミング/音量に一瞬でそろえることができる。
同様のことは、前述のVocAlign 6 Proでも行えるが、Matchのコントロールが1画面に集約されている上、エディターに戻って修正することもできるので、より精細なコントロールをしたい人には便利だろう。
Revoice Pro 5は、生のボーカルはもちろん、ボカロの調声にも使える高機能なツール。期間限定23,450円のバンドルに含まれているというのがまず驚きで、ボーカル曲を扱うならば必ず役に立つソフトだ。
なお、Synchro Arts製品としてはRePitch Standardもバンドルに含まれている。こちらはRevoice 5 Proと重なる機能が多いが、ピッチ補正のチューニングマクロが用意されており、自分の好みのチューニング具合を呼び出して使用することができるようになっている。
作曲支援ツールやシンセ、ループインストゥルメントも収録
そのほかの収録プラグインも駆け足で見ていこう。LANDR Composerはコード進行やフレーズを生成&提案してくれるインストゥルメント。コード、ベース、リード(メロディ)、アルペジオの4パートが1つのプラグインでまとまっている。
面白いのは「Generate」という機能で、コードネームを選択してGenerateすると代替になりそうなコードを提案してくれるし、演奏の内容が気に入られければGenerateすればほかのフレーズに切り替わる。音色もさまざまなものが用意されていて、気に入ったフレーズはそのままDAWのトラックへドラッグできる。
続いては本格シンセのLANDR Synth Xだ。構成だけ見ればオシレーター×2+サブオシレーター、フィルター×2、エンベロープ×2、LFO×2にエフェクトはディレイ、リバーブ、コーラスという、比較的シンプルな部類に入る。しかし、オシレーターはウェーブテーブルであり、モジュレーションマトリクスも備えているので、バラエティ豊かな音色がそろっている印象だ。
プリセットを試聴してみると、アップトゥデートだがいい意味で上品な音色という印象。インパクトが強めの音色でも破綻がなく、演奏していて楽しい。
そのほか、アコギやエレキギターのフレーズをループ演奏できるLANDR Guitarや、さまざまなジャンルのループを用意したLANDR Chromaticも用意されている。どちらもDAWのテンポにシンクし、フレーズのキー変更も可能だ。どちらもリバース再生が可能となっているので、メインのループではなくアクセントに使うのもよいだろう。
強力なワンノブエフェクト群LANDR FX Suite
そのほか、Ultimate Plugin Bundleに収録されているのは、ワンノブでかかり具合を調整できるLANDR FX Suiteだ。FX BASS、FX BEATS、FX VOICE、FX ACOUSTIC、FX ELECTRICの5種類が用意されている。
ワンノブとはいっても、使用できるエフェクトは多岐にわたり、さまざまなプリセットが用意されている。LANDR FX BASSを例にすれば、ミックスでの処理向きの「Mix Tools」、アンプシミュレーターの「Amp FX」、フェイザーなどのそろった「Modulation FX」にプリセットは分類されている。LANDR FX BEATSでは、ドラム全体の処理向けのものやキック向けのものなどがそろっており、「キックのリリースを長くしたいなぁ」と思ったときでもプリセットを選んでノブを回すだけなので、非常に簡単だ。
LANDR FX Suiteを触っていると、その中身は分からないながらも簡単な操作で最適な結果を狙うという、LANDR Mastering Proと共通した思想が見て取れる。
セール期間は2025年1月9日(木)まで
LANDR Ultimate Plugin Bundleは通常価格46,900円だが、LANDR Mastering ProとSynchro Artsの3製品だけでも十分それに見合った価格と言えるだろう。それが1月9日(木)まで期間限定セールで50%オフの23,450円とは恐れ入る。
先述したようにSynchro Arts製品はボーカルを扱うならばぜひ持っていたいところだが、この期間限定価格ならばトラック制作のみをするクリエイターにも十分お買い得なのではないだろうか。
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