フックアップが運営するオンラインストアbeatcloudから、注目のソフトをピックアップする本コーナー。今回レビューするのは、VIRHARMONICのビオラ専用ソフト音源Bohemian Violaです。Bohemianシリーズは、鍵盤で入力するだけでリアルな演奏を再現してくれる機能=バーチャルパフォーマーが特徴。Bohemian Violaは、Bohemian ViolinやBohemian Celloに続く第3弾になります。Mac/Windowsで動作し、スタンドアローンのほか、AAX/AU/VSTプラグインとして使用可能です。
アーティキュレーションなどを自動選択するバーチャルパフォーマー機能を搭載
Bohemian Violaを起動するとカラフルなメイン画面が立ち上がります(メイン画像)。音源の読み込みがとても速く、すぐに演奏を始めることが可能です。
一番の特徴であるバーチャルパフォーマーは、入力に合わせてさまざまなアーティキュレーション、弓の種類、ポジションなどをリアルタイムで自動選択してくれる心強い機能。演奏中は画面中央にあるビオラのイラストに弓のアップ/ダウンマークが、中央右に動作中の奏法や強弱記号が表示されるので視覚的にも分かりやすいです(画面①)。
ここからプリセットや設定でより楽曲に合ったサウンドに整えていきます。設定は鍵盤左上のPRESETからセーブ/ロードでき、好みの設定を瞬時に呼び出すことが可能です。
画面上部には5つの演奏スタイルから成るMOODが表示され、キースイッチで切り替えができます。
■IMPROV:あらゆるテンポのレガートを自然に表現できる、癖のない表現豊かなスタイル。
■EMOTIVE:ゆったりとした曲調によく合う最もソフトで優しい音色。
■ASSERTIVE:エネルギッシュで速いフレーズに最適なスタイル。
■CLASSICAL:独奏によく合い、力強く速いフレーズも滑らかにレガートで演奏できます。
■SPRIGHTLY:アグレッシブな高速フレーズ向きで、弓を跳ねさせて演奏するスピッカートを重ねて鳴らします。
SPRIGHTLY以外では任意のアーティキュレーションをキースイッチで指定することができます。
さらに、画面中央のPERFORMER MODEからは奏者の編成を選択できます(画面②)。
■SOLO:メインであるソロビオラのサウンド。
■SECOND SOLO:セカンドパートを再現し、SOLOよりもR寄りの定位になります。
■TRIO:3本のビオラのユニゾンサウンド。
■CHAMBER:5本のユニゾンサウンド。
■TRIO DIV/CHAMBER DIV:それぞれの本数のサウンドでMAESTROモードがオンになり、複数の音を同時に、そしてなめらかに鳴らすポリレガートに切り替わります。
このMAESTROモードは、鍵盤右上に表示されるキースイッチ・セレクトメニューからも切り替え可能(画面③)。
2弦同時に鳴らす奏法やDiv.(ディビジ:同じパートの奏者が別の声部に分かれて演奏すること)を再現できます。このモードのとき、画面中央にあるビオラのイラストには弓のアップ/ダウンの代わりにMマークが表示されます。
隣のCRAFTINGモードは、キースイッチで指定した弓のタイプやアーティキュレーションにレガートをブレンドし、より自然な聴こえ方にできます。
Bohemian Violaの画面左下にはリバーブを搭載。また同右下にはボリューム値が表示され、ドラッグすることで値を調整できます。さらに画面右上の歯車アイコンからは、より詳細な設定が可能です(画面④)。
ARTICULATIONSでアーティキュレーションのキースイッチ割り当て、REVERB&SPACEでリバーブ設定を調整できます。Bohemian Violaはコンボリューション&アルゴリズミックリバーブを搭載しており、ホール、チェンバー、スタジオなどの空間を再現可能です。FINE CONTROLでベロシティカーブやリリースディレイなど詳細な出音の調整、PERFORMER GUIDEで機能の内容を確認できます(画面⑤〜⑧)。
自然かつ表現豊かなビオラ演奏が再現可能 さまざまな編成の劇伴や歌モノになじむサウンド
実際使用してみて衝撃だったのは、演奏入力をするだけで自然かつ表現豊かなビオラ演奏が再現できるバーチャルパフォーマーの手軽さと、フレーズに忠実でありながら音と音のつなぎを自然に奏でてくれるレガートの美しさです。
また、弓のアップ/ダウンの表現は今までストリングスを打ち込むときに意識しづらい部分だったので、自動で動きを再現した上でマークを表示してくれるシステムも非常にありがたいと感じました。
そして自動選択だけでなく、キースイッチによるアーティキュレーションの指定も快適。前述の画面⑤のとおり、ピチカートやトレモロなど特徴的な奏法や、弓の動き、レガートの種類など細かなニュアンスまで25種類のキースイッチが1つの表にまとめられていて、反映中のアーティキュレーションが白く表示されるので視覚的にも分かりやすいです。
ストリングス音源は、その奏法の多さやニュアンスの多彩さからキースイッチを使いこなすのに苦労する印象があったのですが、パッと見て分かりやすく種類や反映状況を知らせてくれるこの仕組みにとても感動しました! それぞれの奏法のクオリティも高く、演奏データを汲み取って自然に鳴らしてくれる点も魅力的です。
ビオラは通常、アンサンブルの内声としてバイオリンとチェロの橋渡しの役目を持つパートなので、まろやかで重厚感のあるこの音色がよりハーモニーを説得力のあるものにしてくれます。もちろん1本での演奏でも十分に活躍できるごまかしのないサウンドなので、さまざまな編成の劇伴や歌モノになじみ、自然な存在感を出してくれるでしょう。
リアルタイムで簡単に自然なビオラ演奏を実現してくれるBohemian Viola。ストリングス初心者はもちろん、打ち込み表現にこだわりのある方にこそぜひお薦めしたいです! 音を鳴らすだけでインスピレーションを得られる手軽さと表現の完成度の高さが、今までのストリングスの打ち込みの常識を変えてくれることと思います。
VIRHARMONIC Bohemian Viola
beatcloud価格:beatcloud価格:39,840円 (2023年11月時点)
Requirements
■Mac:macOS 10.14.6〜13.5.2(インストーラーにはRosetta、AAXはRosetta 2が必要)
■Windows:Windows 10〜11
■共通:4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)、23GB以上のハードディスク空き容量(インストール時には一時的に46GBの空き容量が必要)、88鍵ベロシティセンシティブMIDIキーボード推奨
■対応フォーマット:スタンドアローン、AAX/AU/VST
眞塩楓
【Profile】気鋭の音楽クリエイター。近年のワークスは、ダズビー(DAZBEE)「オセロ」(作詞/作曲/編曲)、Ayumu Imazu「RUN FOR YOU」(編曲)などがある。