DAWの普及、インディペンデントな制作スタイルの隆盛、SNSでのコンテンツ公開などで、さまざまなクリエイターが取り組んでいる“自宅でのボーカル録り”。コロナ・ウィルス以降、その必要性がますます高まっていると言えます。今回は、プロ・アーティスト20組の自宅ボーカルREC術を使用機材とともに一挙公開。ホーム・レコーディング初心者からアップデートを考えている人まで、Tips集として活用していただけると幸いです。
さかいゆう
自分だけでやらないと実現できないこともあるから
“独り歌録り”は結構大事にしているんです
セルフでの歌録りは、ほとんどがデモ音源用です。ただ僕の場合、最初のデモの段階で曲の方向性の大半が決定するので、ボーカルを含め本チャンよりもデモの方が良いと判断したときは、そのまま完成させることもごくまれにあります。使用しているDAWはAVID Pro Tools。僕はド・アナログな人間なのですが、昔クレさん(編注:KREVA)から“一緒に作れねえじゃねえか。お前Pro Toolsくらい買えよ(笑)”と言われて初めて購入しました。当初は使いこなせなかったけれど、その期間が自分の歌のテクニカルな面を飛躍的に伸ばしてくれたと思います。
制作部屋は都内で、好きな本やCDがあってリラックスでき、気が乗ったときにすぐ取り掛かれるのが一番の長所。一人で没頭していると長時間作業になると思うので、内装の色味や飲み物にこだわるのも良いでしょう。エレピやビンテージ・ベースのMUSICMAN Stingrayを弾き始めるとメロディがあふれ出てくるし、クリエイティブなモードに入ったらアイディアがフレッシュなうちに素早く歌録りします。ちなみに先日、ラジオのために録ったやや難易度の高いアカペラはセルフじゃないと実現しなかったと思うので、“独り歌録り”は結構大事にしているんです。
レコーディングし終えたボーカルは、翌日とか1週間後に聴いて良しあしをジャッジしますが、終わらないループになるかもしれないので、結局は直感を大事にしています。音楽は、思うままにやればいいんです。プロも素人も無い世界だと感じるし、もし自分が素人だと思うなら、無理にプロの顔をすることはないと思います。
機材紹介
Condenser Mic
AUDIO-TECHNICA AT4040
独り歌録りに使っている一本。マイクはとても大事です。だからこそ決めつけないようにしています。その製品の持ち主は持ち物にプライドを持つものですが、実際に使って冷静に判断し、本当に自分が欲しているミドル、ハイ、ローを収音できているか?という点にフォーカスして、録音~ミックスするようにしています。マイクは、ピュア・オーディオ機器と同様にハイエンドな製品の方が高性能なので、音楽で売れたらビンテージ・マイクなども使って、良さを味わってみてほしい。その上で“やっぱり定番のSHURE SM58が良い!”って人も、それはそれで素晴らしい個性かと思います。
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Headphone
SONY MDR-CD900ST
ヘッドフォンは、レコーディング・スタジオでも定番のモデルを使っています。
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AUDIO I/O
AVID 192 I/O
Pro Tools用のオーディオは、写真上段のAVID 192 I/Oを使用。その下には楽器の録りなどに使っているプリアンプ/EQ、VINTECH AUDIO 273を2台マウントしています。
DAW Software
AVID Pro Tools
バージョンは古くて、Pro Tools | HD 8。新旧はどうであれ、Pro ToolsでもAPPLE Logicでも、とりあえず買って一人で黙々と触ったり録音したりすれば上達すると思います。何でも良いから早く取り掛かるのがお勧め。
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さかいゆう
LAでの武者修行を経て、ブラック・ミュージックやロックなどを織り交ぜたハイセンスな作風を持ち味とするシンガー・ソングライター。6thアルバム『Touch The World』はLA、NY、ロンドン、サンパウロを巡り制作され、6月には最新作『Soul Rain + Touch The World Instrumentals』を発表
【Recent Work】
プロ20組の歌録り機材&テクニック! 自宅ボーカルREC術
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