DAWの普及、インディペンデントな制作スタイルの隆盛、SNSでのコンテンツ公開などで、さまざまなクリエイターが取り組んでいる“自宅でのボーカル録り”。コロナ・ウィルス以降、その必要性がますます高まっていると言えます。今回は、プロ・アーティスト20組の自宅ボーカルREC術を使用機材とともに一挙公開。ホーム・レコーディング初心者からアップデートを考えている人まで、Tips集として活用していただけると幸いです。
マリアンヌ東雲(キノコホテル)
曲作りの時点でボーカルの質感を決めることが多く
そのイメージの通りになっているかどうかが重要
デモ用の仮歌の録音がほとんどですが、単独実演会(ワンマン・ライブ)のSEを自分で作ることも多いので、そこにかぶせる台詞やスキャットを録る機会もちょいちょいあります。我が家はもともとリビングが二重窓になっているため、家中の窓や扉を閉め切ると外の音も聴こえなくなります。とはいえ、なるべく近隣が在宅していなさそうな昼間の時間帯を狙うなど一応配慮はしていますが、近ごろ(5月末現在)のステイ・ホーム状況下では果たしてどうなのか。幸い苦情が来たことはございませんが。
快適に録音を進めるための工夫などは特に無し。裏を返せば、誰からも何も言われない気楽さが自分に合っています。調子が出ないときはさっさとやめられますし(笑)。根気がないので、励ましてくれる人が居ない個人作業では、あまり何テイクも録らないようにしているんです。録り音の良しあしについては、曲を作る時点でボーカルの質感をどうしたいかまで決めている場合が多いため、イメージの通りになったかどうかで判断しますが、大概は直感。デモなので、その範ちゅうにおいて最低限人に聴かせられるクオリティで録れていればOKです。またデモを元にエンジニアの方にイメージを伝えるので、スムーズにやり取りできるよう、なるべく分かりやすい仕上がりになっていることも重要です。
機材紹介
Dynamic Mic
SENNHEISER MD421U
以前は普段ステージで使用しているSHURE Beta 57Aで適当に録っていたのですが、“クジラ”という通称がかわいいので最近はこちらにしています。仮歌しか録らないのに……とは思いつつ。録り音がみっちりしているというか、密度を感じる気がいたします。知人から譲っていただいたものです。
Headphone
SHURE SRH840
昨年、アルバム『マリアンヌの奥儀』で一緒にお仕事させていただいた共同プロデューサー=島崎貴光氏が制作中にプレゼントしてくれたもので、ありがたく使わせていただいています。各帯域のバランスがちょうど良く、ワタクシにとってはオールマイティに使えるヘッドフォンです。
【デジマートで探す】
Audio I/O
RME Fireface 400
選び方がいまだに分からず、現在は知り合いのエンジニアの方からお借りしたものを使用しています。原音に忠実だと説明を受けたのですが、デモでは生楽器をほとんど使用しないため、その長所をあまり生かし切れていないような……何となく、ドイツ製であるところが気に入っております(笑)。
【デジマートで探す】
録り音のトリートメント
『マリアンヌの奥儀』に収録の「天窓」で、曲作りの際に使用したボーカル・エフェクト。画面左上から時計周りにAPPLE Logic Pro XのTape Delay、Compressor、Exciter、Channel EQ。これらでイメージする音像にしました。
マリアンヌ東雲
サイケや歌謡曲を礎に、近年はディスコ・サウンドなども取り入れるロック・バンド=キノコホテルの支配人。“歌と電気オルガン”を担当する。昨年ソロ活動を開始し、共同プロデューサー松石ゲルとともにビンテージ・アナログ・シンセを駆使した音像を披露。長年、自宅録音も行っている
【Recent Work】
プロ20組の歌録り機材&テクニック! 自宅ボーカルREC術
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