2021年も、音楽制作ツールの世界では個性的な機材やソフトが数多く生み出されました。クリエイターやエンジニアたちは、その中から何を選び活用してきたのでしょう? 総勢30組に“本気で惚れたツール”を紹介していただきましたので、まずは第1弾としてtofubeats、eill、中村未来(Cö shu Nie)のツールから見ていきます。
tofubeats
【Profile】1990年生まれ、神戸出身のDJ/プロデューサー。森高千里、藤井隆、KREVAら人気アーティストと数々のコラボを行い注目を集め、4枚のアルバムをリリース。最近では、テレビ・ドラマや映画の主題歌/劇伴を担当するなど活躍の場を広げ多方面で注目されている
Recent work
『CITY2CITY』
tofubeats
(ワーナーミュージック・ジャパン)
ABLETON Live 11 Suite[DAW Software]
これまでも使っていたので引き続きバージョン・アップしました。全楽曲で使っています。Liveはバージョン6とか7から使っているので機能に関しては追加されればされるだけうれしいのですが、それよりもバージョンがアップするごとに体感安定性が上がっていて、基本的な性能がアップしているのがとてもうれしいです。
個人的に今回のバージョン・アップではコンピングの追加がとてもありがたかったです。これまでレコーディングはAVID Pro Toolsで行いLiveにて編集……ということが多かったのですが、テイクの選定作業が分かりやすくなったので、Liveでもレコーディングするようになりました。
リバーブのHybrid Reverbは、以前の感覚的なレイアウトはそのままに、かなり突っ込んだ編集をできるのが魅力です。これまで利用していた普通のリバーブでも事足りてはいて、ある意味で悩まないのが魅力でもあったのですが、もうちょっとここを触りたい……的なことがLiveでもできるようになりました。IRデータもいろんなものが入っていて、波形を見ながら編集できるのもグッドです。
eill
【Profile】ブラック・ミュージックを下地にした音楽性と、甘さ/切なさ/艶感/力強さが共存した歌声で魅了するシンガー・ソングライター。2021年4月に人気アニメのED主題歌「ここで息をして」でメジャー・デビュー。月9ドラマや映画主題歌のタイアップも決定しており、2022年2月にはメジャー1stアルバム『PALETTE』をリリースする
Recent work
『23』
eill
(ポニーキャニオン)
ZOOM IQ7[Microphone for iOS Device]
曲作りへの取り入れ方は、2021年11月に配信した「23」という楽曲で波の音のレコーディングに使ったり、2022年2月2日にリリースの1stアルバムに収録される「いけないbaby」冒頭のボーカルを録ったりです。ボーカルの方は、夜の街を歩きながら録音しました。
APPLE iPhoneにつないで専用のアプリ上で音を録るので、録音/編集/データ送信まで完結できるのがお薦めです。楽曲の中で一つの空間っぽい感じにしたい部分に、IQ7で録ってきた音を乗せると、めっちゃ自分がそこに居る感が出るんですよ(笑)。前まで普通のハンディ・レコーダーを使っていたので、環境音を録り始めたころにIQ7があったらめちゃくちゃ楽だったなって思います(笑)。ポップ・ガードも付いてきて、操作も簡単なので、持ち運び用の録音機器では本当にこれ以外必要なし! 今後も愛用します!
中村未来(Cö shu Nie)
【Profile】Cö shu Nieのボーカル/ギター/キーボード/マニピュレートを担当(写真左)。声の表情で魅せる切ない女性ボーカルと、繊細でカオスなバンド・サウンド。シーケンスで華やかに彩る独創的な世界観で、ロックもポップも越えて、軽やかに行進する
Recent work
『SAKURA BURST』
Cö shu Nie
(ソニー)
SPITFIRE AUDIO BBC Symphony Orchestra Professional[Software Instrument]
私のお気に入りは、SPITFIRE AUDIOのオーケストラ音源BBC Symphony Orchestra Professionalです。長年オーケストラ・アレンジをすることにあこがれを抱いていて、そのチャンスが今回やってきたので購入しました。SPITFIRE AUDIOの音が好きで、ほかの音源を買ったときにチェックしていたこちらを選びました。
初めて導入したのは、現時点で未発表作品ではありますが、今年リリースした「give it back」のリミックスです。音色がとにかく美しく、特にこういうタイプの荘厳な美しさのあるホーンの音源がずっと欲しかったので、とても気に入っています。音像のコントロールも、分かりやすくて面白いです。楽曲の中でそこだけハッと世界が変わるような引き込まれる音体験は、何にも代えがたく感じます。