本特集では、ストリート、カフェ、DJ、学園祭の4つのシチュエーションでライブを行うために必要な機材や設置方法など、“セルフPA”のポイントを紹介。ここでは、知っておくと役に立つ機材やセッティングに関するポイントを、尚美学園大学教授/PAエンジニアの山寺紀康氏が解説します。
Q1. PA機材はどうやって手に入れる?
Answer:楽器店などの実店舗なら相談もできる
必要な機材が明確であれば、オンライン・ショップで購入したり、PA機材のレンタル・サービスなども使用可能ですが、具体的な機材選びに悩んだら、PA機材を扱う楽器店に行って、実際のシチュエーションを伝えるとよいでしょう。その際、会場の広さや演奏に使う楽器、必要な入力数などがはっきりしているとより具体的なアドバイスをもらえると思います。飲食店や貸しスペースでPAを行う場合には、備え付けの機材をあらかじめ確認しておき、何が借りられて何を自分で用意しなければならないかをきちんと把握しておくようにしましょう。
Q2. 機材以外に必要なものは?
Answer:用途に合ったアクセサリーを用意
ケーブルやスタンドなどのアクセサリー類も忘れずに用意します。ケーブルを選ぶときには、端子の形状と長さに注意して、長さは余裕を持って選びましょう。このあとのQ3では、フォーン/XLRコンボ端子を使う際の注意点をご紹介しています。
スタンドは、耐久性や機材を取り付けた際の取り回しの良さなどに注目するとよいでしょう。マイク・スタンドでは、取り付けたいマイク・ホルダーとネジの規格が合っているか、スピーカー・スタンドでは、スタンドのポールの径が対応しているかの確認は購入前に必ず行ってください。ケース・スタディで紹介したように、スピーカーの高さはPAの音作りに影響してきます。高さの調整方法はスタンドによって異なるので、店頭で実物を確認して購入するのが望ましいでしょう。
Q3. 機材を接続するときの注意点は?
Answer:フォーンとXLRのコンボ端子に注意
入出力端子の中には、XLR端子とフォーン端子(あるいはTRSフォーン端子)のいずれも挿すことができる形状の“コンボ端子”と呼ばれるものがあります。電子楽器は基本的にフォーンで入れて、マイクはXLRで接続しましょう。また、エレキギターなどのインピーダンスが高い楽器は、ハイインピーダンス入力(Hi-Z)を搭載している端子でないと正しく音が出ません。
XLRケーブルを挿しても音は出るのですが、マイク用のプリアンプを通ってしまってレベルが大きくなって音がひずんだり、ボリュームが全然上げられなくなる可能性があります。楽器の出力がXLRの場合は、楽器側をXLR、ミキサー側をフォーンあるいはTRSフォーンで挿せるように、XLR−フォーン(TRSフォーン)のケーブルを使います。
Q4. マイク・スタンドが安定しない……
Answer:倒れないように足の向きに気を付ける
マイク・スタンドは、演奏中の転倒防止のため、足の向きがマイクを取り付けた向きと同じ方向になるようにセッティングします。位置の設定については、例えばピアノでは譜面にかぶらないよう真横からではなく高めから下ろすような位置にしたり、演奏中に手に当たらない位置で調整します。その際、マイク・スタンドのブーム部分を伸ばしすぎると、スタンドによっては安定せずに倒れてしまうので注意しましょう。
ワンポイント・アドバイス:ハンドルの方向を変えて調整しやすくする
スピーカー・スタンドの中央には、角度を調整するためのハンドルがあります(写真❶赤枠)。演奏者が自ら角度調整をしたいけど、このハンドルが裏側になってしまっていて調整できない……。そんな経験がある人にこのハンドル位置を変えられる裏技を紹介します。
❶スタンド先端のナットを回して外します。
↓
❷そのままパイプを抜き取ります。
↓
❸ハンドルの付いた支柱を回転させて、パイプを反対側から差します。
これだけの操作でハンドルを手前に向けることができます。スタンド位置を変えずに向きを変えられるので、ぜひ試してみてください(パイプが抜けない仕様のスタンドではできませんのでご注意ください)。
【特集】セルフPA入門〜機材選び/設置/音出しのポイントがわかる
講師:山寺紀康
PAエンジニア。40年のキャリアを持ち、現在も新谷祥子、磯貝サイモン、井上苑子、武藤彩未などのPAを担当。ライブ・ハウスからアリーナまで多様な現場をこなしてきた。現在は、尚美学園大学情報表現学科で教授を務めている。
取材協力:尚美学園大学 音楽と音響を愛する仲間たち