PSYCHIC FEVER「Highlights」リミックスコンテスト結果発表!

PSYCHIC FEVER「Highlights」リミックスコンテスト結果発表

 サウンド&レコーディング・マガジン2023年12月号の特集“LDH music & publishing × サンレコがコラボ リミックスコンテスト”への多数のご応募、誠にありがとうございました。編集部には創意工夫を凝らしたアプローチでオリジナル曲を再解釈した作品が数多く寄せられました。ここでは各賞の発表と受賞者の皆様へのインタビューに加え、審査員の方々からのコメントをお届けします。

 なお、最優秀賞を受賞したリミックス音源はPSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE『Highlights(Twilight Remix)』としてLDH Recordsから配信中です。優秀賞、入賞、佳作に選ばれたリミックス音源は、サウンド&レコーディング・マガジン公式YouTubeチャンネルにて4月25日まで期間限定で公開しています。試聴用のURLとQRコードは各受賞者のページに記載していますので、ぜひお聴きください!

 リミックスのオリジナル音源、PSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE『Highlights』はこちらからご視聴ください。⇒https://youtu.be/Ck1iB6d3J88?feature=shared

総評 〜コンテスト審査員からの言葉〜

審査員長|EXILE SHOKICHI

EXILE SHOKICHI

ボーカリスト/パフォーマー/作詞作曲家/トップライナー。2007年に二代目 J Soul Brothersのメンバーに抜擢され、2009年にはEXILEへ加入。EXILE THE SECONDとしても活動し、2014年にはEXILEからソロアーティストとしてデビュー。2023年にはSHO HENDRIX名義でのソロ活動も開始し、これまでに6枚のシングルと7曲の配信シングル、3枚のアルバムをリリースしている。

良い意味で原曲のイメージをぶち壊してくれた

 全体的にどの作品もクオリティが高く、クリエイティビティが際立っていたように思います。特にアレンジや音遊びのスキルを全面に押し出したようなリミックスが多く、良い意味で原曲のイメージをぶち壊してくれたんじゃないでしょうか。審査ではアレンジやミックスなど、曲全体の総合的な完成度を重視しました。また細かいところでは、キック/スネアの音色や、グルーブやタイミングといったリズムに関してどの程度作り込んでいるのかという点にも注目しましたね。そういった意味でも、今回入賞した作品はどれもレベルが高かったです。次は、バラード作りコンテストとかもやってみたいですね!


ゲスト審査員|T.Kura

T.Kura

音楽プロデューサー/コンポーザー。EXILE、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、Crystal Kay、安室奈美恵、AI、三浦大知などの楽曲を手掛ける。1996年には自身がプロデュースしたエリーシャ・ラヴァーン「Say Yea h!」が、UKのBlues&Soul誌のチャートで1位を獲得。2010年にはEXILE「I Wish For You」で第52回日本レコード大賞を受賞し、LDH全体の発展に大きく貢献した。

それぞれに独自の音楽性を見ることができた

 音楽制作に熱心な方々が読む雑誌、サンレコによる読者コンテストということもあり、応募曲の質が高かったのが印象的です。またプラグインなど近年の音楽制作ツールの優秀さも、それを後押ししているのだと思います。とりわけエフェクトの使い方やミックスにおいては、みなさんとても器用だと感じました。審査基準としては、オリジナル曲のボーカルをどう生かしているのかが一番のポイントで、それに伴うアレンジやクリエイティビティにも注目。応募曲にはダブステップやドラムンベースなど、特定のジャンルに焦点を当てた作品が多かったものの、それぞれに独自の音楽性を見ることができました。


審査員|JIGG

JIGG

東京を拠点に活動するヒップホッププロデューサー/ビートメイカー/ミックスエンジニア。公の場に姿を現すことはなく、その正体は謎に包まれたまま。ちゃんみな、AK-69、AKLO、Awich、BAD HOP、GENERATIONS from EXILE TRIBE、JP THE WAVY、KOHH、RYKEY、SALU、SIMON、SKY-HI、WILYWNKA、般若など、国内ヒップホップアーティストを中心に楽曲提供している。

技術力だけでなく全体的な心地よさも重要

 このコンテストを通じて、さまざまな音楽ジャンルに特化した、高いスキルを持つクリエイターの方がたくさんいることにあらためて気づかされました。自分は主にヒップホップやトラップを作るので、ダンスミュージックはあまり詳しくないのですが、コンテスト応募曲には目を見張るものがありましたね。こんなに多種多様なリミックスが集まるとは思ってもみなかったです。また、多くの作品がアレンジスキルに優れており、エフェクトを駆使するアプローチが特に記憶に残りました。また、単に技術力を見せるだけでなく、リスナーに伝わるような心地よさを考慮する“バランス”も重要なんだなと気付きましたね。

👑【最優秀賞】吉田ヒロカズさん

吉田ヒロカズさん

【Profile】2000年にロックバンド、上弦の月を結成し、ギタリスト/作曲家として活動。2010年、バンド活動休止とともに、自身の音楽活動も中断。近年は過去音源のリミックスを行い、楽曲配信を始めるなど、精力的に音楽活動を再開している。

賞品|LDH Recordsから配信リリース & 記念トロフィー贈呈!

『Highlights (Twilight Remix)』 PSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE (LDH Records)

『Highlights (Twilight Remix)』
PSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE
(LDH Records)

リミックスの試聴はこちら

 

最優秀賞記念トロフィー

最優秀賞記念トロフィー


プログレッシブメタル・バンド“ポリフィア”にインスパイアを受けつつ、ボーカルを邪魔しないフレーズ作りやミックスを意識

 正直に言うと、自分はロック畑の人間なので、当初はコンテストに応募する気がなかったんです。リミックスって、音楽ジャンル的にはダンスミュージックにするイメージじゃないですか。だから自分はこのコンテストには合わないと思っていました。でも、コンテスト審査員によるトークセッションの記事(サンレコ2023年12月号P32)を読み、審査員の方々が“自由に変えちゃっていいよ”というコメントをされていたので、じゃあ大胆にロック寄りのアプローチでもいいのかなと考えたんです。試しにギターで軽くコードを付けてみたらいい感じになったため、そのまま本腰を入れてやってみることにしました。

 オリジナルはほぼワンコードですが、ボーカルはすごくメロディアスになっています。なのでコードをほとんど入れ替えようと思いました。ちょうどそのころ“ポリフィア”というアメリカのプログレッシブメタル・バンドをよく聴いていて、彼らの音楽はインストが中心なんですが、ギターがすごくテクニカルかつ美しいフレーズを奏でるんですよ。そのため、今回のリミックスは彼らの音楽のようなアプローチだとよりかっこよくなるんじゃないかなと思い、テンションをふんだんに使ったコード進行を考えました。一曲を通して聴くと“聴き応え”があったので、これはいけると感じましたね。

 そこからはギターやベースのフレーズをたくさん作り、全体のバランスを考えながら適切なフレーズを選んで組み立てていく作業です。同時にミックス的な視点も取り入れていました。例えばギターコードの頭ではディストーションをかけていますが、リリース部分はクリーントーンにするなど、ボーカルの帯域を邪魔しないよう、細かい工夫を考えながら進めたんです。また、フレーズごとにFENDER TelecasterやStratocasterなど、ギターを変えて弾いてもいます。だからこのリミックスは、ライブでは再現できませんね(笑)。

 もう一つ付け足すと、自分はギターもベースもそれほどうまくないんです。だから今回はDAWのクオンタイズとタイムストレッチ機能をフル活用。特に早弾き系のフレーズは指が追いつかないので、DAWのテンポを落としてレコーディングして元に戻すという作業をよくしました。文明の利器ですね。

 ギターの音作りはLINE 6 POD GOで行っています。オーディオI/Oからタイムストレッチ後のギターの“生音”を出力し、POD GOでエフェクト加工してDAWに戻すんです。こうすることでタイムストレッチしたような音にならないんですよ。こうやって作った曲が受賞したというのを知って、あらためてリミックスは自由なんだなと感じました。自分の音楽をたくさんの人に聴いてもらえるって本当に夢のようですね。

吉田ヒロカズさんのプライベートスタジオ

吉田ヒロカズさんのPrivate Studio

Computer:Apple Mac Studio DAW:PreSonus Studio One Audio I/O & Mixer:Solid State Logic BiG SiX Monitor Speaker:GENELEC G Three、他 Keyboard:NATIVE INSTRUMENTS KOMPLETE KONTROL S61 MK2  Outboard:Focusrite ISA One、JOEMEEK twinQ、他 Controller:Solid State Logic UC1、PreSonus FADERPORT 8 Guitar Pedal:LINE 6 POD GO

コンテスト審査員からの言葉

EXILE SHOKICHI:応募作品は全体的にダンスミュージック・アレンジになっているものが多かったのですが、この作品はバンドサウンドやジャジーな要素を取り入れていたので印象的でした。原曲からは想像できないコードの当て方と、起承転結の作り方がお上手だなと思います。特に起承転結に関しては、ドロップの部分で一番キャッチーでグッとくるコードリフを展開し、そのほかのセクションではしっかり落ち着かせるというメリハリの付け方が素晴らしい。アレンジからミックスまで、全てにおいて文句なしの満点。ぜひ、ほかの楽曲も聴いてみたいです。受賞おめでとうございます!


T.Kura:コード進行の扱い方とテンションコードを駆使してメロディをつないでいく技術が、特に目を引きました。こういった要素は昨今の“ガチャポップ”にも通じるものがありますね。とにかくスキルの高い作品で、オケだけでも聴いていられます。この作品から多くを学ばせていただきました。


JIGG:基本的にこの曲はワンコードの曲なんですが、よくこんなに無理なくコードを付けられたなと感心しました。自分はテンションコードが多すぎると“くどい”と感じることもあるのですが、このリミックスは聴いていて心地よかったです。ぜひ一緒にお仕事できたらうれしいです!

【優秀賞】GAKさん

GAKさん

【Profile】amazutiの一員として、TVアニメ『盾の勇者の成り上がり Season 3』OP主題歌のほか、乃木坂46やあんさんぶるスターズ!!の楽曲などを手掛ける。ギタリストとしては西川貴教のサポートを務める。多くのアニメソングを手掛けたギタリスト、松澤浩明(ex.MAKE-UP)を父に持つ。

リミックスの試聴はこちら(4月25日までの限定公開)

賞品|celemony melodyne 5 editor

celemony melodyne 5 editor


得意のギターを生かした“EDMロック”的なアレンジ

 原曲の歌詞や歌声から男らしい印象を受けたので、自分が得意とするギターを生かした“EDMロック”的なアレンジを施しました。アグレッシブなビートを軸に置きつつ、ギターやシンセで自分の音楽性を反映しています。ギターはドロップDチューニングかつ、Positive Grid BIAS FX2やNeural DSP Fortin Cali Suiteを駆使してヘビーなサウンドにしました。細かいFX処理にはcableguys ShaperBoxが活躍しましたね。サビ前でいかに聴き手をハッとさせるブレイクを作れるかが大事だと思います。長年サンレコを愛読していたので、そのコンテストで認められたことがうれしいです。これからも腕を磨いていきます!

GAKさんのプライベートスタジオ

GAKさんのPraivate Studio

Computer:Apple iMac DAW:steinberg Cubase Audio I/O:RME Fireface UC Monitor Speaker:YAMAHA MSP5 STUDIO Earphone:SHURE SE215 MIDI Keyboard:EDIROL PC-50

コンテスト審査員からの言葉

EXILE SHOKICHI:この作品で際立っていたのはボーカルチョップの技法やリズムの遊び心。GAKさんは日頃の実践を通じて磨き上げた“高いアレンジスキル”を持っていると感じます。注目すべきは、曲全体におけるダイナミクスの付け方。力強さとしなやかさの両方を兼ね備えたリミックスです。


T.Kura:ロック要素のある、踊れるダンスミュージック・リミックスとなっていて、LDH Recordsのようなダンストラックの魅力を持っています。パフォーマーがステージで動きを出しやすいキメや、細かいギミックがたくさん詰まっているんです。また高域成分を多く含む楽器が頻繁に登場しますが、ミックスがうまいのでボーカルが聴きやすかったですね。


JIGG:素晴らしいアレンジ力。シンセやギターがたくさん入っているのに、耳が痛くないミックスもポイントだと思いました。とにかく“すごい”の連続でしたね!

【入賞】KAZUKIさん

KAZUKIさん

【Profile】1999年よりパンクロック・バンド、ゼリ→でメジャーデビュー。その後LAID BACK OCEANのギタリストとして活動。数多くの音楽制作に携わり、レコーディングのノウハウを学ぶ。バンド解散後はアレンジャー、サウンドプロデューサー、レコーディングエンジニア、音楽レーベルIKR Soundsystemの代表として活動している。

リミックスの試聴はこちら(4月25日までの限定公開)

賞品|OUTPUT Portal

OUTPUT Portal


オリジナルと真逆の方向性として提案したド派手なダブステップ

 オリジナルからはトレンドのヒップホップにレトロなサウンド、シンプルな音数という印象を受けたので、アプローチとしては真逆の方向を考えました。具体的には、ダブステップ調のヘビーなベースミュージックです。一番のこだわりはドロップで、いかに派手にするかを意識しました。もう一つは曲全体の起伏をどう作り込むかということろ。盛り上がりと落ち着きのメリハリをつけることで、ドロップの効果を最大化できるんじゃないかと考えたんです。ドロップは、複数のサンプルを組み合わせて作っています。何パターンも組み合わせて試行錯誤しました。レーベルも始めたので、今後もいい音楽を発信していきたいですね。

KAZUKIさんのプライベートスタジオ

KAZUKIさんのPraivate Studio

Computer:Apple MacBook Pro DAW:Avid Pro Tools Audio I/O:UNIVERSAL AUDIO apollo x8 Monitor Speaker:ADAM AUDIO A77X、IK MULTIMEDIA iLoud MTM、他 Outboard:DRAWMER 1960、他

コンテスト審査員からの言葉

EXILE SHOKICHI:ドロップが独創的かつ、思い切ったアレンジになっていてとても記憶に残りました。ぜひ、このままマイウェイを突き進み、独自の音楽性を作り上げてほしいと思います!


T.Kura:ドラムの見せ方が非常に印象的。ダブステップ特有の力強いドラムサウンドを前面に出しながらも、ボーカルが適切に混ざり合って聴こえるという絶妙なバランス感がありました。これが、私がこの作品を高く評価した理由の一つです。ドラムだけでなく、インパクトのあるパーカッションの使い方も含めて、ダンスが際立つようなアレンジが施されている点も魅力でしたね。得意分野で圧倒的な表現を見せてくれたリミックスだと思います。


JIGG:ダブステップ寄りのリミックスは今回多かったのですが、この作品は特に良かったです。中でもドロップにおける細かいアレンジがスキルフル。素晴らしいリミックスでした。

【佳作】UDさん

UDさん

【Profile】横浜を拠点とするビートメイカー。普段は会社員。ヒップホップコレクティブ“EARTHKICK”のメンバーでもある。音楽のルーツはロックにあり、一つの音楽ジャンルにとらわれない、さまざまな視点から行うビートメイキングを得意としている。詳細はこちら→Web:https://linktr.ee/UDbeats

リミックスの試聴はこちら(4月25日までの限定公開)

賞品|Xfer Records SERUM専用プリセット2万円分

Xfer Records SERUM専用プリセット2万円分


複数のパートが紡ぎ出すグルービーなドラムンベース

 当初から、クラブで鳴らしたときに盛り上がるようなリミックスを作りたい、そしてお手本リミックスとかぶらないアプローチで勝負したい、と決めていました。そこで考えたのがドラムンベースリミックス。ドロップではハイハットを複数組み合わせたループを鳴らしたり、グライドやリリースのタイミングを細かく調整したベースを4tr重ねて鳴らしたりしています。またキックをトリガーとしたサイドチェインコンプをシンセにかけていて、それらの要素が絡み合うことで、独特のグルーブが生まれたんだと思います。普段はラップを想定したビートを作っているので、今回のようなメロディありきのビートメイキングはかなり勉強になりました!

UDさんのプライベートスタジオ

UDさんのPraivate Studio

Computer:Windows DAW:steinberg Cubase Audio I/O:Roland Rubix22 Monitor Speaker:MACKIE. CR3-X Headphone:YAMAHA HPH-MT8 Keyboard:NATIVE INSTRUMENTS KOMPLETE KONTROL A49

コンテスト審査員からの言葉

EXILE SHOKICHI:ドロップのシンセリフに“おおっ!”と感じました。リフ作りがうまいのは、ビートメイカーやクリエイターにとって“超”武器になると思います。各パートにおける音色の作り込みと、曲全体のミックスバランスをブラッシュアップすれば、さらに良くなると思いますね。


T.Kura:ドラムンベースは最近のトレンドの一つで、この作品は総合的にクオリティが高いなと思いました。想像を超えるようなオリジナリティやインパクトがもう一つあると、より優れたリミックスになると考えられます


JIGG:ドラムンベースリミックス、かっこいいと思います。テンポを180BPMくらいまで思い切って上げたところがいいですね。ミックスもいいです。そういう意味では、今回のコンテストはミックスクオリティの高い作品が多く、みなさんプロ並みの腕前だったと思います。

【特集】リミックス・コンテスト開催!