2019年末からiZotopeの傘下に入ったExponential Audio。ラインナップはPhoenixVerb/NIMBUS/R2/R4 by Exponential Audioの4種類のステレオ・リバーブと、同じくステレオのマルチエフェクトであるExcalibur by Expon ential Audioや、サラウンドや3Dサラウンド規格で使用できるリバーブのSymphony/Symphony 3D/Stratus/Str atus 3D by Exponential Audioで構成されます。今回は、2ミックスの音楽制作に特化したNIMBUS by Exponent ial Audio(以下NIMBUS)とR4 by Exponential Audio(以下R4)に焦点を当ててレビューしたいと思います。
1,200種類以上のプリセットを収録
NIMBUSとR4はインターフェースが似ている仕様になっていますが幾つか異なる点があります。 NIMBUSの画面右下には、Attack、Tail、Early、Warpという4つのボタンがあり、R4はそれに加えてChorus、Gateの2つを加えた6種類のボタンを搭載。ボタンを押すと、該当するパラメーターがボタンの上に表示されます。
Attackのリバーブ・タイプは2機種で違いがあり、NIMBUSはPlate1、Plate2、Chamber、Hallの4種類、R4はPlate、Chamber、Hall1、Hall2の4種類を用意しています。Tailでは残響部の調整をします。広がりの調整は、モノラルに近いNarrowから左右逆相に近いWideまで5段階で調整可能です。RvbDelay Timeノブでは、リバーブのみのプリディレイを0〜2000msで調整もできます。Tail Suppressを操作すると、リバーブ部分にコンプをかけたような効果を作れます。そして、WarpというExponential Audio独特のパラメーターは両モデル共通で装備しています。
両モデルはどちらも1,200種類以上のプリセットを収録。画面右上のKeyword欄でカテゴリを選択し、Preset欄でプリセットを選びます。丁寧に分類分けされている点と、選んでから瞬間でロードする点が魅力的です。気に入ったプリセットをFavoriteに登録して素早く呼び出すこともできるのでとても便利だと感じます。
初期反射がハッキリとした音色
音色は、共通してアーリー・リフレクションがハッキリとしています。リバーブ成分も、密度が薄く荒い音から密度が濃くて奥深い音まで幅広い音色を出すことができます。
R4は、デフォルトにもなっているホール系のプリセットが透明感のあるサウンドで魅力的です。個人的には、余韻の長い奇麗な空間を演出したいならばR4を選ぶと良いと思います。今回は、ピアノにPredelay Timeを92msと長めにして使いました。
一方でNIMBUSのホール系プリセットをピアノに使用してみると、少し暗く広がるようなサウンドになりました。残響部の調整をするTailボタン内のTail WidthはWideに設定されており、Tail Suppressの効果を感じる音です。
また、良いと思えるリバーブ・サウンドを組み合わせると音に深みが出て豊かな音に仕上がります。今回はNIMBUSとR4のみミックスして使ってみました。例えば、スネアは狭いデッドな部屋で録音したファイルなので、空気感を足す目的でR4のとても短いプレートとNIMBUSのルームを組み合わせています。R4のプレートだけだとアーリー・リフレクションがメインでリバーブ成分はほぼ感じません。そこでNIMBUSのルームでリバーブ成分を加えているのです。
ほかにもボーカルでは、R4のミディアム・プレートとNIMBUSのラージ・プレートを組み合わせて使用しています。ミディアム・プレートは短いリバーブにモジュレーションが掛かっているので、ラージ・プレートのPredelay Timeを少し離した長めのプレートを加えることで、広がりを演出しています。
NIMBUSとR4はどちらも幅広いサウンドが出せるので、プリセットを多く聴きイメージをつかむのが使いこなすコツです。普段私は10種類以上のリバーブ・プラグインを使用しますが、NIMBUSとR4の2種類だけでも十分商品レベルのミックスができました。どちらも想像以上に表現力のあるリバーブ・プラグインです。
森元浩二.
【Profile】 AVICスタジオを経て、Studio Sound DALIの立ち上げに参加。2002年Prime sound Studio formの設立に携わる。以降同スタジオのチーフ・エンジニアとして活躍中
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