Reviewed by
鈴木Daichi秀行
【Profile】家入レオやYUI、miwaらをはじめ、トップ・チャートに輝く楽曲に多く携わるプロデューサー。自社スタジオを備えたレーベルStudio Cubic Recordsも運営し、機材やソフトにも造詣が深い。
指示に従って測定していくだけで、モニター・スピーカー環境を自動補正
近年、自宅作業が多くなり、モニタリング環境が重要視され自動補正機能が注目されています。不要な部屋鳴りや距離による位相の問題、帯域のバラツキなど問題にはさまざまな要因が考えられます。正しい音作りをする場合やはり正確なモニタリング環境はとても大事で、作品のクオリティにも大きくかかわってきます。SoundID Referenceはスタンドアローンはもちろん、AAX Native/AU/VSTの各プラグインに対応しているので、DAWでの利用はもちろん、コンピューターで音楽を聴く場合でも利用することができます。
まずはスピーカー・キャリブレーションを試してみます。専用測定用マイク(9,900円、for Speakers & Headphonesとのバンドル版は42,900円)を使用して、部屋の環境を細かく測定。ほかの無指向性マイクでも測定は可能ですが、正確なキャリブレーションを行うためにも、やはり専用マイクを使用するのがよいでしょう。
指示に従って進めていくとSoundID Reference Measureという測定用ソフトウェアが立ち上がります。入出力を設定し、マイクを中央(モニタリング・ポジション)に置いて測定。その後はL/Rそれぞれのスピーカーのウーファーに向け、1〜2cm程度の距離で。測定マイクは手持ちでよいそうです(画面①)。
その後30以上の細かい個所での測定が始まります。画面に表示されている通りの場所にマイクの位置を変えるだけで、簡単に測定できます。ほかにはスピーカー間の距離やリスニング・ポジションからスピーカーまでの距離などを入力して測定は完了。測定にかかる時間は15〜20分程度でした。
測定が完了したら、DAWを起動し、マスターにSoundID Reference Pluginをインサート。画面上部から先ほど測定したプロファイル・データを読み込むだけで補正された音が再生されます。画面上、Beforeが測定した部屋の周波数カーブ、Correctionが補正したカーブ、Simulated Afterが補正されフラットになったカーブです。周波数バランスはもちろん、左右のディレイ、位相まで自動で補正してくれます。補正後のサウンドを聴くと低音がスッキリした印象で定位感も分かりやすくなりました。低音が回ってしまうような場合も自動で補正され、リファレンスが確認できるのはとても安心感がありますね。
ヘッドフォン用に膨大なプリセットを搭載、ルーム改善の手掛かりにも便利
ヘッドフォンの場合はもっとシンプルで、膨大な数のブランド/モデル名からプリセットを選択。SONY MDR-CD900STで試してみたところ、補正した音はレンジが広がり明りょう感あるサウンドになっていました(画面②)。
モニター環境の悩みを簡単にスッキリ解決できるSoundID Reference。現状のまま補正するのはもちろんですが、もう一歩踏み込んだ使い方として現在の部屋環境を周波数や数値で視覚的に把握し見直しながらスピーカー・レイアウトを変えてみたり、吸音材の位置を変更したりしながら、さらにより良いモニタリング環境作りもできます。その意味でも、SoundID Referenceは、自宅のモニター環境改善の強い味方となるソフトウェアです。
SONARWORKS SoundID Reference【モニタリング補正】
for Speakers & Headphones:35,200円、for Headphones:14,300円
Requirements
■Mac:macOS 10.12(Sierra)〜11(Big Sur)、INTELチップ
■Windows:Windows 8(64ビット)以降
■AAX Native/AU/VST(64ビット)
■対応または個別にキャリブレーションされたヘッドフォン。2.0chまたは2.1chスピーカー・システム、48Vファンタム電源と44.1kHz対応オーディオ・インターフェース、測定用マイク(無指向)、マイク・ケーブル(XLR)