Mission 3:色付け具合で相性をジャッジ! EQ&コンプで作る最強コンボ 〜プラグインが織りなす相乗効果を狙え!(3)

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EQとコンプのプラグインは、最新のデジタルからビンテージのアナログ機材をモデリングしたものまで、非常に多くの製品がリリースされています。しかし、その中から自分に最適なものを選ぶのは、とても難しいことですね。この特集では、ミックス・エンジニアのyasu2000氏がEQとコンプの多彩な組み合わせ方を、音源と併せて紹介。プラグインそれぞれの特性を生かし、あなただけの音作りを叶える最強コンボについて考えてみましょう!

Mission 3:色付け具合で相性をジャッジ!

yasu2000

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 EQ同士やコンプ同士、EQとコンプの組み合わせにおいては、共通した傾向と注意すべき点があります。まず、無色なプラグイン同士は相性が良いということ。さらに、色付けの濃いプラグインには、無色のプラグインが合うことです。ここでは、色付けの濃い4タイプのアナログ・モデリング・コンプと無色透明なEQの特徴を紹介します。相性の良いプラグインの選び方について、一緒に考えていきましょう。

↓START↓

 

1stアイテム真空管モデリング・コンプ(UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Fairchild 670)

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● アタック/リリース・タイムは遅い
● 丸い音に圧縮される“丸型コンプ”

 インプットを上げていくと真空管の深みが増していき、よりウォームなビンテージ・サウンドになっていきます。形は丸く磨かれていくので、四角くなるVCAコンプとは相性が悪いと感じることが多いです。音質も独創的なので、クリアなパッシブ型EQと相性が良い傾向にあります。できる限り、この真空管モデリングの質感を生かした組み合わせで威力を発揮するでしょう。

★相性良し↓

4thアイテムダイオード・ブリッジ式コンプ(UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Neve 33609)
5thアイテムデジタルEQ(SLATE DIGITAL Infinity EQ)

 

2ndアイテムFETモデリング・コンプ(UNIVERSAL AUDIO UAD-2 1176)

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● アタック/リリース・タイムはとても速い
● 角の丸い四角形に圧縮される“角丸四角型コンプ”

 UNIVERSAL AUDIO 1176は、これをモデリングしたプラグインも多く存在し、長年愛され続けている定番です。1960年代から今まで、バンド・サウンドでは必ずと言っていいほど使われています。1176系コンプを使うと“あの音だ!”と気付く人も多いでしょう。アタック/リリース・タイムは、細かく調整可能。インプット・レベルでかかり具合を決めるのも特徴で、打楽器など単発音の形を整えるのに最適です。角が丸い四角形のようにつぶれていくため、真空管コンプとは合わせづらいでしょう。かなり深めにかけるのにも向いています。

★相性良し↓

5thアイテムデジタルEQ(SLATE DIGITAL Infinity EQ)

 

3rdアイテムVCAモデリング・コンプ(ACUSTICA AUDIO Tan)

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● アタック/リリース・タイムは速い
● 密度の濃い四角形に圧縮される“四角型コンプ”

 アタック/リリースがステップ式ですが、スレッショルドのみ微調整が可能。ひずみ成分が少なく無色なので、グループ/マスター・トラックに薄くかけて全体のグルーブを安定させることができます。瞬間的なピークに素早く反応する方式で、密度の濃くて芯のある明るい音になります。無色タイプなのでEQとは何でも合いますが、角のある四角形に圧縮されるので丸型の真空管コンプとは合いません。

★相性良し↓

5thアイテムデジタルEQ(SLATE DIGITAL Infinity EQ)

 

4thアイテムダイオード・ブリッジ式コンプ(UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Neve 33609)

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● アタック/リリース・タイムは遅め
● 密度の濃い丸型に圧縮される“丸型コンプ”

 代表的なのはNEVE 33609B。丸くて芯がありつつ、柔らかくてウォームなサウンドです。リリースが離れるときに、もっちり粘っこくはがれるような音がします。エア成分に程良くひずみ成分が加わって心地良い倍音が増幅されるので、トップ/アンビ・マイクやグループ・トラックに使うのがお勧めです。無色ですが、単体でFETやVCAなど四角型と組み合わせると、この独特なグルーブとひずみが崩れてしまいます。

★相性良し↓

1stアイテム真空管モデリング・コンプ(UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Fairchild 670)
5thアイテムデジタルEQ(SLATE DIGITAL Infinity EQ)

 

5thアイテムデジタルEQ(SLATE DIGITAL Infinity EQ)

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● 無色透明なEQ

 何と組み合わせても、立体感/質感/色を崩さない万能さを持ち合わせています。スペクトラム・アナライザーを装備し、最大24バンドを作成可能。スロープを12dB/octから最大120dB/octに設定できるので、ベル・カーブを急斜面な台形型にして低域をごっそりと削れるのが便利です。高域の細かいカーブをまとめて平行に上げる際にも使えます。M/S処理もできるので、センターとサイドのレベルを変えて、全体の音量は変えずにかぶりを処理することも可能です。

★相性良し↓

1stアイテム真空管モデリング・コンプ(UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Fairchild 670)
2ndアイテムFETモデリング・コンプ(UNIVERSAL AUDIO UAD-2 1176)
3rdアイテムVCAモデリング・コンプ(ACUSTICA AUDIO Tan)
4thアイテムダイオード・ブリッジ式コンプ(UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Neve 33609)

 

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 各パートに使う濃い色のプラグインは1つまでにすると組み合わせやすいです! 最初は色付けの濃いものを選んだら、それ以外は無色のものを選ぶように意識してみましょう。そうすることで、自分好みの濃い色を壊すことなく表現する感覚がつかめると思います。

FINAL STAGE

 

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yasu2000

【Profile】big turtle STUDIOSのレコーディング/ミックス・エンジニア。NYのInstitute of Audio Research卒業後、ブルックリンのBushwick Studioを経て、2005年に帰国。現在はorigami PRODUCTIONS所属のアーティストのほか、あいみょんなどを手掛けている。

 

特集「EQ&コンプで作る最強コンボ」

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