ワンランク上のコンデンサー・マイクで歌録りのパフォーマンス&録り音を向上させたい方向けに、10~20万円台の現行モデル15機種をエンジニア&ボーカリストがレビュー!ここでは、AUDIO-TECHNICAの真空管コンデンサー・マイク、AT4060A を紹介します。
エイジングとテストを重ねた真空管で耐入力を高めた一本
最大SPL=150dBを誇る真空管マイク。その真空管は手作業で選別され、一点一点に対しエイジングとテストを重ねたもの。また“ダブルウェーブダイアフラム”により感度を高めつつ、超低ノイズ性能も実現したという。低域をリニアに再現するためのトランス出力も魅力。
オープン・プライス(市場予想価格:206,668円前後)
●発売年:2014年 ●ダイアフラム径:21.4mm(カプセル径は25.8mm) ●指向性:単一 ●アンプ回路:真空管 ●ハイパス・フィルター:非搭載 ●PAD:非搭載 ●出力インピーダンス:200Ω ●外形寸法:53.4(φ)×215(H)mm ●重量:約645g
【Engineer】ピークをつぶさず適度に丸めてくれる 〜中村公輔
真空管マイクですが、ビンテージ感や古めかしさとは無縁で、現代的なサウンドを志向しているのがひしひしと感じられます。全体的なトーンはナチュラル系で、高域がスッと伸びているものの、どこかクリーミーさを感じます。この辺りに真空管のニュアンスが出ていますね。また、ボーカリストが声を張る箇所で、ダイナミクスが出ているにもかかわらず、耳に痛い感じにならずまとまるところにも、真空管の良さが出ていると感じました。テープやコンプのようなつぶれた感じの変化は無く、適度に丸めてくれる印象です。
低域はやや持ち上がった特性のはずですが、ボワボワした感じは全く無く、タイトに出ていました。とにかく扱いやすい音色で、原音忠実というよりは、人間が自然に聴こえるイメージの音を作りだすマイクだと感じます。
【Male Vocalist】イメージ通りの声がモニターに返ってくる 〜高畠俊太郎
周波数レンジの広さが感じられ、高域はサラサラとした質感です。歌った曲は、場面によって声量が違ったり、歌い方にニュアンスが加わったりするんですが、自分のイメージする通りの声が返ってきたので、ピッチや音量をコントロールしやすかった。歌唱中は普段から、自然にマイクとの距離感を変えるんですけど、どんな距離でもしっかりと収音できていた印象です。
【Female Vocalist】ボーカルの表情をありのままキャッチ 〜シバノソウ
近年はやっているチルな音楽と相性が良さそう、というのが第一印象です。柔らかいニュアンスに録音できたので、バンド・サウンド以上に、ホーム・レコーディングやDTMで完結させるような音楽にマッチしそう。息の成分を含め、ボーカルの表情をありのままキャッチできる感じだから、声とオケが同等に扱われるアンサンブルよりも、歌を主役に据えた曲で大きな力を発揮すると思います。
製品情報
レビュワー紹介
Engineer|中村公輔
特集のイントロでも健筆を振るってくれたエンジニアの中村公輔氏。今回は、普段からエンジニアリングで携わっているボーカリスト2名を招いて、モニター音やプレイバックを聴き、各マイクを評価した
Vocalist|高畠俊太郎
LOOP LINE PASSENGERで活動中のボーカリスト/ギタリスト/ソングライター。今回は、同バンドのミドルテンポ・ロック・チューン「life」を歌い、各マイクを試した
Vocalist|シバノソウ
アーティスト/シンガー・ソングライター。2020年にリリースしたアルバム『あこがれ』からエモーショナルなポップ曲「あこがれの先」を選び、製品チェックに臨んでくれた