ここでは、昨今の音楽シーンで活躍する4人のLive 10 Suiteユーザーたちに、Live 10 Suiteに付属する愛用ツールについて伺った。果たして彼らはどんなツールをどのように使っているのだろうか? その真相に迫ってみよう。
荒田洸 が使う Sampler
Samplerは、好きなサンプル素材をインポートしてピッチを変えたり、内蔵するモジュレーションやフィルターを使って加工できるソフト・サンプラーです。自分の作品では、楽曲のキャラクター性を押し出すために“声のサンプル素材”を使うことが多く、その際によくSamplerを用います。MIDIキーボードでコードを弾いて合唱的な使い方もできるので面白いです。
僕がSamplerを好きな理由の一つとして、具体的なサンプル素材の使い道が見えていない場合でも、各パラメーターを直感的にいじっていくだけでユニークなサウンドが作れることが挙げられます。加工してできたサウンドは、ヒップホップなどでのサンプリング的なアプローチや、アンビエント・ミュージックでのスパイスとして効果的です。とにかくSamplerはとても自由にサンプル素材を加工できるので、その可能性を無限に引き出せる素晴らしいツールと言えるでしょう。
荒田洸
【Profile】エクスペリメンタル・ソウル・バンド、WONKのリーダー/ドラマー/シンガー・ソングライター。ブラック・ミュージックを土台に、フォークやアンビエントなどジャンルを超えた楽曲制作を得意としている。
【Recent Work】
Seiho が使う LFO MIDI
僕はMax for Live EssentialというPackに同梱されているLFOツール、LFO MIDIを愛用しています。LFO MIDIは、LFOを使ってソフト音源やプラグインのパラメーターをモジュレーションすることが可能。制作ではソフト・シンセやハイハットのピッチやパン、ボリュームなどのパラメーターに、それぞれ異なるランダム波形のLFOをゆるくかけています。このように薄く揺らぎを与えてあげることによって、単調なソフト・シンセやハイハットの音を一瞬にして有機的なサウンドに変化させることができるのです。
ほかにはシンセ・リードに施したリバーブのDRY/WETノブにLFOでモジュレーションをかけるのもお勧め。こちらも同じくサウンドに変化を与えるのにとても有効です。LFO MIDIはシンプルな画面で使いやすいですし、波形をリアルタイムで視覚的に確認できるところが良いと思います。単調になりがちなソフト音源に躍動感を与えてくれる魔法のツールですね。
Seiho
【Profile】大阪出身のアーティスト/プロデューサー。Low End TheoryやSXSWなど海外ビッグ・イベントへの出演のほか、国内では三浦大知や矢野顕子、PUNPEEらとの共演/プロデュースも行っている。
【Recent Work】
machìna が使う CV Instrument
私がよく使うのはCV Instrument。MIDIノートを取り込み、ピッチ/ゲート/エンベロープCVを出力します。これによって、モジュラー・シンセなどをLiveからコントロールすることができるようになるのです。例えば、モジュラー・シンセのオシレーターは繊細(せんさい)なのでピッチを安定させることが大切です。このとき役に立つのが、画面左側の中段にあるCalibrate機能。これは自動チューニング機能のようなもので、これを使うとある程度正しいピッチでモジュラー・シンセを演奏できるようになります。一度にたくさんのモジュラー・シンセのピッチを安定させることも可能なので、ステージに居るときでも安心して使用できるでしょう。
ほかには、Shaperタブで矩形波を描いてクロック信号を出力したりも。新たにプラグインを立ち上げなくてもよいのでCPU負荷を分散させることができ、作業をスムーズに進めることができます。CV Instrumentは、マルチに使えるプラグインですね。
machìna
【Profile】東京を拠点に活動する電子音楽家/プロデューサー/ボーカリスト。モジュラー・シンセやアナログ・シンセを駆使したエクスペリメンタルなサウンドに、自身のボーカルを乗せた楽曲を制作している。
【Recent Work】
☆TAKU TAKAHASHI が使う Operator
Operatorは、FMシンセシスと典型的な減算および加算合成の概念を組み合わせたソフト・シンセ。もともと僕はFMシンセと聞くと“なんだか難しそう”というイメージが強くあり、あまり触っていませんでした。しかしあるとき、EQ処理してもなかなか曲になじむサブベースが見付けられなくてiivvyyのHVNS君に聞いたところ、Operatorのプリセット“Sub2 Sine Bass.adv”がとてもお薦めだと言っていたのです。実際試したところめちゃくちゃ野太く、ほかの音源ともなじみやすい音質でした。それ以来、サブベースのファースト・チョイスはOperatorです。ヒップホップ/トラップからドラムンベースなどのクラブ・ミュージックまで幅広く使えて助かっています。特に“このノブをいじる”というのはなくて、プリセットの設定そのままでとても使えるサブベースです。
OperatorはWavetableに比べて地味に見えるかもしれませんが、実はすごく良いものだというのを皆さんに知ってもらえるとうれしいですね。個人のプロデュース・ワークにおいても、m-floの楽曲でもサブベースにはOperatorを使っています。
☆TAKU TAKAHASHI
【Profile】DJ/プロデューサー。1998年にVERBAL、LISAとm-floを結成し、ソロではカルヴィン・ハリスなど国内外のアーティストを多数手掛ける。2011年にはインターネット・ラジオ局block.FMを立ち上げた。
【Recent Work】
Live 10 Suite 製品情報
ABLETON Live 10 Suite
80,800円(税込)
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