この40年間、多様な機材の登場とともに、あらゆる角度から音楽が進化を遂げてきました。ここでは、アーティストが語る『音楽の歴史を変えた名機』を、サウンド&レコーディング・マガジンの過去の誌面とともに紹介。Part1では、サンレコ創刊期でもある1970~80年代にシンセ・サウンドの発展を支えた名機が登場します。
小室哲哉
【Profile】TM NETWORKでの活動から現在に至るまで数々の音楽作品を世に送り出してきたプロデューサー/作曲家/キーボーディスト。公式ファン・コミュニティTETSUYA KOMURO STUDIOにて定期的に配信を行っている。
NEW ENGLAND DIGITAL Synclavier(1977年)
ハード・ディスク・レコーディングができたのが画期的でした。それまでもピース単位でサンプリングできましたが、オールインワンでデータの処理ができた、現在のDAWの先駆けです。それまでの音楽用ソフトと比べたらはるかに細かい作業ができました。100kHzサンプリングができたので、海外のギタリストを録音したときに“プレイバックした音の方が弾いている音より良い”と彼が言ったのが印象的でした。テープが無くてもそれ以上のことができたのが衝撃的でしたし、そこからコンピューター+ハード・ディスクがグローバル・スタンダードになるのは速かったと思います。今で言えば、ガソリン車がありえなくなるくらい大きなことでした。
石野卓球(電気グルーヴ)
【Profile】1989年、ピエール瀧らと電気グルーヴを結成。1995年、初のソロアルバムをリリース。国内外でDJとして活動。1999~2013年まで、日本最大級の屋内レイヴWIREを主宰。現在、DJ/プロデューサーとして多彩な活動を行う。
Recent work
『Turkish Smile』石野卓球(ソニー)
~サンレコ読者へのメッセージ~
Ride on and Keep on groovin’
ROLAND TR-909(1983年)
当時はリズム・マシンの音色を生のドラムに近付けるスタイルが主流だった中で発売され、同時代での評価は低かったですが、今に至るのちのダンス・ミュージックのドラム・サウンドにおける、アイコニックな音の一つにTR-909はなりました。
KEN ISHII
【Profile】テクノ・アーティスト/DJ。スペイン・イビサ島“DJ AWARDS”でBEST TECHNO DJを受賞し、世界最高峰フェス『Tomorrowland』にも出演。2019年にアルバム『Möbius Strip』をリリースした。
~サンレコ読者へのメッセージ~
40年の歴史の積み重ね、一言で言ってすごいことです。音楽を作る人のそばに常にある雑誌『サウンド&レコーディング·マガジン』、これからもファンとしてずっと読んでいきたいと思っています。
ROLAND JD-800(1991年)
1990年代初頭のシンセサイザーの使用状況は二極化していたように思う。ポップスやロックなどメインストリームではいかにもなデジタル・サウンドが主流だったのに対し、世界各地で形成されつつあったアンダーグラウンドなハウス&テクノ・シーンではROLAND Juno-106やTB-303に代表される1980年代前半のアナログ・シンセの掘り起こしが中心だった。そんな中、PCM音源をアナログ・シンセのように操作して大きく変化させることのできるJD-800の登場は、いわゆるデジタルでもアナログでもない、新しい音作りを求めるアーティストにはとても魅力的に映った。さらにはマルチティンバーかつエフェクト類も充実。私事ではあるが、このマシンによって自分の音楽は大きく飛躍したと言い切れる。
本項で紹介したサウンド&レコーディング・マガジン誌面はバックナンバー(会員限定)でお読みいただけます。