星野誠と休日課長がSTAXヘッドフォンのサウンドを語り合う

星野誠と休日課長がSTAXヘッドフォンのサウンドを語り合う

STAXが“イヤースピーカー”と銘打って発売しているコンデンサー型の開放型ヘッドフォン。そのフラッグシップが昨年、SR-009SからSR-X9000へと更新された。エンジニアの星野誠氏、ゲスの極み乙女やDADARAYのベーシストとして活動する休日課長を招き、SR-X9000に関する対談を実施。音楽制作への導入メリットを語り合ってもらった。

SR-X9000(写真左):693,000円|SRM-T8000(同右):654,500円 ※今回はこの2機種を組み合わせて試聴

Photo:Chika Suzuki

鮮明かつ聴き疲れしない高域

エンジニア星野誠(写真左)と休日課長

星野誠(写真左)
ビクタースタジオ出身のフリーランス・エンジニア。クラムボンの曲を多数手掛け、近年はsumika、toconoma、reGretGirlなどに携わる。

休日課長
ゲスの極み乙女、DADARAY、ichikoro、礼賛といったバンドのベーシストとして活躍。普段から、DAWソフトでの楽曲制作にも取り組んでいる。

 

星野さんは、SR-X9000を普段からご愛用ですよね。

星野 はい。前はSR-009Sを使っていましたが、サンレコの新製品レビューでSR-X9000を試したときに感動してしまい、乗り換えたんです。オーディオ・ルームでうっとりさせてくれるような音のSR-009Sに対し、SR-X9000はマスタリング・ルームを思わせる音。すごく細かいところまできちんと分かるので、自分が仕事で使うならSR-X9000の方が良いだろうと思って。

休日課長 私は今回、自らミックスしたDADARAYの曲やストリーミング・サービスにある人の曲を聴いてチェックしてみました。まずは中域の押し出しが強すぎないというか、脚色をあまり感じない音だなと。そしてコーラスの“積み”が鮮明に見える。そう感じたのはサイモン & ガーファンクルを聴いたときで、各声部のラインがボヤけないから、星野さんの言う通り分析的な視点で聴けると思います。

星野 一般的なダイナミック型のヘッドフォンより、おしなべて“音の粒子”みたいなものが細かく聴こえるんです。このことは、アコースティック系のように空気を介して録音された音楽で、特によく分かると思います。

休日課長 とりわけ高域が鮮明に見える印象ですが、耳に痛い音ではない……そればかりか、どの帯域にもピーキーなところを感じないんです。

星野 確かに、シンバルの余韻からドラム・トップのマイクのキャラクター、空気感などまでよく分かるんですけど、耳に痛い部分はありません。数十万円のモニター・ヘッドフォンと比べても、シンバルの空気感や高域の解像度には違いを感じます。自然で心地よいから、聴き疲れしないんです。

休日課長 付けているのを忘れるくらいの装着感もさることながら、“疲れない”というのは音による部分が大きいのかなと。聴いている最中に“この帯域、強い”って思いはじめると疲れてきますよね? それが無いから心理的にも負担が無いというか、ずっと聴いていられるのかもしれません。

星野 ミックスの終盤でマスターの中域を0.3dB動かすと、歌が急に立ってくるようなことがあるんです。そういう細やかな処理も、SR-X9000を使いはじめてから容易になりました。家でミックスした曲を良いスタジオで鳴らしたら、本当はこんな音だったんだ!って驚く方もいると思うんです。それと同様の感覚を、SR-X9000からは得られるでしょう。

ローエンドの量もよく分かる

SR-X9000でバランスの良いミックスが作れれば、ほかの再生環境で鳴らしたときも安心でしょうか?

星野 違和感を覚えたことはありません。SR-X9000での判断は間違っていなかったな、と思います。そして詳細に分かるからこそ、“いじらない”という判断もしやすい。歌は大抵この帯域を削るよな、といった固定観念で処理しなくなるのは、きちんと見えているからですね。その結果、素材の旨味(うまみ)を生かすことにもつながります。

休日課長 ちゃんと見えるという点では、自分でミックスした曲をSR-X9000でチェックしたときに、低域の印象が良い意味で違うことに驚いたんです。聴こえ方がいつもの環境より繊細で、もしSR-X9000でミックスしていたら違った仕上がりになったのかな、とも思います。

星野 ローエンドがどのくらい入っているかも、よく分かります。あとサブキックの止まるポイントが、ボヤけずに聴き取れたり。ただし強調されてはいないので、ブ~ンという成分が前に来る感じはありません。スピーカーで聴くような、少し距離感のある音です。家に高価なスピーカーを置いても、大抵はうまく鳴らせないと思うんです。特に低域はボヤけてしまうので、絶対的な基準をSR-X9000のようなヘッドフォンにするのは一つの手じゃないかと。サーバン・ゲネアの一番弟子、ジョン・ヘインズも低域はヘッドフォンで確認するらしいですし。

休日課長 私は以前、自分のミックスを幾つかの環境で聴くうちに“あら”が見えてきて、ミックスのときに使用しているモニター機器が耳に合っていないんじゃないか……?と半信半疑になることがあったんです。でもSR-X9000の音は、自分の中の基準の音として設定しやすく思えそう。“これでこう鳴っているんだから大丈夫”と、ヘッドフォンを信頼して音作りできるでしょうね。

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