SOLID STATE LOGIC User’s Voice 〜音楽クリエイター&エンジニアが語るSSLの魅力

SOLID STATE LOGIC User’s Voice 〜音楽クリエイター&エンジニアが語るSSLの魅力

プロ・スタジオ向けのコンソールだけでなく、近年はアウトボードのほか、オーディオ・インターフェースやプラグインといったホーム・スタジオ向け製品を展開するSOLID STATE LOGIC(以下、SSL)。今回は、音楽クリエイターやエンジニアとして活躍するSSLユーザーたちに、おのおのが使用するSSL製品の活用法や魅力をインタビューしてみよう。

Photo:Takashi Yashima(メイン画像&製品フロント/リア・パネル)

SOLID STATE LOGIC Big Six

価格:オープン・プライス(市場予想価格:451,000円前後)

価格:オープン・プライス(市場予想価格:451,000円前後)

 16chのUSBオーディオ・インターフェース機能を搭載したデスクトップ型アナログ・ミキサー。インプットはモノラル4ch+ステレオ4系統に加え、ステレオ外部入力2系統を用意。モノラル入力には独自のSuperAnalogueマイクプリを内蔵する。フェーダーは100mmストロークで、チャンネルEQには同社SL4000Eシリーズを基にした3バンド仕様のものを実装。さらにSL4000G由来のステレオ・バス・コンプも備える。オーディオ・インターフェース機能は24ビット/96kHzに対応。出力はメイン・ステレオ・バスに加え、ステレオ・バスBも用意。ステレオ2系統のCUEやトークバック・マイク入力、2系統のヘッドフォン出力も備える。

リア・パネル。左からUSB Type-C端子、メイン・アウトL/R、メイン・バス・インサートL/Rのセンド/リターン、BUS BアウトL/R、メイン・モニター・アウトL/R、ALTモニター・アウトL/R、CUEアウトL/R×2、メイン・チャンネルへのサミング・インプットL/R、インプットL/R×4、ch1〜4のインサート用センド/リターン×4(いずれもTRSフォーン)が並んでいる

リア・パネル。左からUSB Type-C端子、メイン・アウトL/R、メイン・バス・インサートL/Rのセンド/リターン、BUS BアウトL/R、メイン・モニター・アウトL/R、ALTモニター・アウトL/R、CUEアウトL/R×2、メイン・チャンネルへのサミング・インプットL/R、インプットL/R×4、ch1〜4のインサート用センド/リターン×4(いずれもTRSフォーン)が並んでいる

SPECIFICATIONS
●モノラル・チャンネル数:4 ●ステレオ・チャンネル数:4+エクスターナル・インL/R×2、メイン・チャンネルへのサミング用インプットL/R ●USBオーディオI/O:最高24ビット/96kHz、最大16イン/16アウト ●外形寸法:489.4(W)×141.2(H)×390.2(D)mm ●重量:6.8kg

REQUIREMENTS
●Mac:OS X 10.11以上 ●Windows:Windows 8.1、Windows 10/11。SSL提供のUSBオーディオ(ASIO/WDM)ドライバーで動作

☆Taku Takahashiが語るBig Sixの魅力

☆Taku Takahashi

DJ/プロデューサー。1998年にVERBAL、LISAとm-floを結成。ソロとしてはカルヴィン・ハリスやBE:FIRST、eill、Crystal Kayなど、数多くのアーティストのプロデュースやリミックスを担当。インターネット・ラジオ局block.fmの主宰も務めている。

Big Sixは自分の制作手法に革命をもたらした機材。今後も絶対に手放せない逸品であり続けるでしょう

 Big Sixは一見普通のミキサーに見えますが、コンピューターとUSBケーブル(USB Type-C)で接続すればオーディオ・インターフェースとして機能しますし、そこにSSL SL4000Gコンソールと同一回路を使用したバス・コンプや、SSL SL4000Eコンソールを土台とした3バンドEQを搭載しているのもうれしいポイントです。

 そしてなんと言っても、各チャンネルに備わるFROM USBスイッチを押すだけで、Big Six上にある任意のフェーダーにDAWからのインプットを立ち上げられるのが魅力。ボタン一つでルーティングを変えられるのがとても便利ですね。いちいちリア・パネルをのぞき込まなくてよいのも、今どきのデスクトップ・ユーザーのことを考えていると思います。

 特にイン・ザ・ボックスでミックスを完結する人で、“音抜けがいまいち”という悩みのある方は、Big Sixをサミング・ミキサーとして使ってみることをお勧めします。音の輪郭がはっきりし、立体的な音像になることでしょう。

 ほかにも、Webからダウンロードしたオーディオ素材をBig Six経由でハードウェア・サンプラーに流し込み、そこで一度サンプリングした音をまたDAWに戻すという使い方をしています。このようにハードウェアをエフェクトとして復活させられるのもBig Sixのおかげ。これまでスタジオで眠っていた機材を生き返らせることができます。Big Sixは、自分の制作手法に革命をもたらした機材です。今後も、絶対に手放せない逸品であり続けることは間違いないでしょう!

メイン・デスクの左側にスタンバイするBig Six。☆Taku Takahashiは、「まるでプラグイン感覚でサミングやEQ/コンプが使えるんです」と大絶賛する

メイン・デスクの左側にスタンバイするBig Six。☆Taku Takahashiは、「まるでプラグイン感覚でサミングやEQ/コンプが使えるんです」と大絶賛する

SOLID STATE LOGIC Fusion & The Bus+

Fusion|価格:オープン・プライス(市場予想価格:379,500円前後)

Fusion|価格:オープン・プライス(市場予想価格:379,500円前後)

 フルアナログ回路のマスター・プロセッサー。倍音を増幅するサチュレーションのVINTAGE DRIVE、2バンドのシェルビングEQを備えるVIOLET EQ、高域成分のみに作用するコンプのHF COMPRESSOR、M/S処理におけるサイド信号を調節可能なSTEREO IMAGE、専用トランス回路をオンにするTRANSFORMERという、5つのプロセッサーで構成されている。ハイパス・フィルター(18dB/Oct)も備える。

SPECIFICATIONS
●入力インピーダンス:10kΩ ●出力インピーダンス:75Ω ●最大入力レベル:27.5dBu(1%THD) ●最大出力レベル:27.5dBu(1%THD) ●周波数特性:20Hz~20kHz(全回路オフ時、±0.05dB) ●全高調波ひずみ率:<0.01%(全回路オフ/バイパス時、+20dBu、1kHz) ●外形寸法:480(W)×88.9(H)×328(D)mm ●重量:5.86kg

 

The Bus+|価格:オープン・プライス(市場予想価格:379,500円前後)

The Bus+|価格:オープン・プライス(市場予想価格:379,500円前後)

 2バンド・ダイナミックEQを搭載した2chのバス・コンプ。SSL伝統のステレオ・バス・コンプを基本とするCLASSIC STEREO、ステレオのサイド・チェイン信号をサミングするΣ S/C STEREO、2系統のモノラル・コンプとして動作するDUAL MONO、M/S処理を可能にするMID SIDEの計4モードに加え、4種類のサウンド・カラーを切り替え可能。VCAには高品位なTHAT 2181を採用し、パラレル・コンプレッションも行える。

SPECIFICATIONS
●入力インピーダンス:10kΩ ●出力インピーダンス:60Ω ●最大入力/出力レベル:27.5dBu(1%THD) ●周波数特性:20Hz~20kHz(バイパス時:±0.025dB、コンプ使用時:±0.01dB) ●全高調波ひずみ率:−95dB/0.0017%(バイパス時、1kHz@0dBu)、−88dB/0.004%(コンプ使用時、1kHz@0dBu) ●外形寸法:480(W)×88.9(H)×328(D)mm ●重量:5.92kg

Yamato Kasaiが語るFusion & The Bus+の魅力

Yamato Kasai

長野を拠点に活動する作詞/作編曲家、音楽制作グループMiliのコンポーザー兼ギタリスト。劇伴やアーティスト楽曲、CM音楽の制作を行う。Miliとしては、アニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』のエンディング・テーマ「sustain++;」などを手掛けている。

最終段で必要なエフェクトを一台で賄えるのがFusion。The Bus+はパラレル・コンプ機能が付いているので重宝します

 2ミックスの最終段で用いるアウトボードということで、自分は何を求めているのかを考えたとき、サチュレーションやディエッサー、ステレオ・イメージャーなどが頭に浮かんだのですが、これらを一台で賄えるのがFusionでした。制作では、VINTAGE DRIVEセクションで倍音を増幅したり、VIOLET EQセクションで欲しい帯域を持ち上げたりといった処理をしています。

 お気に入りは、M/S処理をつかさどるSTEREO IMAGEセクション。ダンス系の曲を作るときは必ずこのセクションが活躍しています。中でもサイド成分の低域をブースト/カットできるSPACEノブが素晴らしい。ブースト時の低域の膨らみ具合が絶妙なんです。ステレオ・イメージャー・プラグインでも同じことができますが、自分はFusionのSPACEノブで処理する方が“いい感じ”にブーストできるので好みですね。近年の洋楽に負けない低域感を演出したいときは、必ずこのノブを用います。

 Fusionの前段にはThe Bus+を使います。SSLバス・コンプ特有のグルー効果を演出できることと、パラレル・コンプ機能が付いているのがありがたいです。自分は打ち込みと生音が同居する曲を扱うことが多く、それらをまとめるためにThe Bus+は欠かせません。うっすらかけるだけでも効果がありますし、D-EQも重宝しています。上品な低域を演出できるF/Bモードも大好きです。クリエイターだけでなくエンジニアの方にも持っていてほしい機材。SSL最高です!

ラックに格納されたFusion(写真上)とThe Bus+(同下)。Kasaiは「ノブだけでなく、ボタンのオン/オフで音作りできる点も直感的で良いです」と語っている

ラックに格納されたFusion(写真上)とThe Bus+(同下)。Kasaiは「ノブだけでなく、ボタンのオン/オフで音作りできる点も直感的で良いです」と語っている

SOLID STATE LOGIC UC1

UC1

価格:オープン・プライス(市場予想価格:115,500円前後)

 SSLコンソールが持つ直感的なワークフローをデスクトップ上で実現するプラグイン・コントローラー。UC1のマネジメント・ソフトであるSSL 360°をはじめ、SSLのプラグインNative Channel Strip 2とBus Compressor 2、および同社SL4000Bコンソールのチャンネル・ストリップをモデリングしたプラグイン、4K Bをシームレスに操作できる。また、これらの永続ライセンスもバンドルする。各ノブやボタンにはLEDを採用し、高い視認性を確保。トップ・パネル上部にはゲイン・リダクション・メーターを、同下部にはプラグインのパラメーターを表示するディスプレイを備える。UC1から各プラグインのプリセットをロードしたり、ルーティングを変更したりすることも可能だ。録音/再生といったトランスポートもコントロールできる。

リア・パネルには、コンピューターと接続するためのUSB端子(Type-C)を備えている

リア・パネルには、コンピューターと接続するためのUSB端子(Type-C)を備えている

SPECIFICATIONS
●外形寸法:300(W)×61(H)×266(D)mm ●重量:2.1kg

小林敦が語るUC1の魅力

小林敦

1986年にサウンドインスタジオへ入社し、1991年からはフリーで活動するエンジニア。大手テーマ・パークのパレードやショウの音楽を中心に、ポップスやアニメ・ソングまで幅広く手掛ける。日本レコーディングエンジニア協会(JAREC)の正会員でもある。

音楽は感覚で作るのが一番。UC1は音楽制作で最も大切なことを思い出させてくれます

 1990年代は、SSLのアナログ・コンソールで作業するのが当たり前でした。しかし時代は変わり、近年はDAWやプラグインを中心とした作業環境が主流に。自分もディスプレイとにらめっこしながらトラックボールを触る毎日でした。あるときUC1のことを知り、普段からすべてのチャンネルにSSLプラグインを挿すくらいのヘビー・ユーザーでしたので、UC1を購入することにしたんです。

 UC1を導入してまず思ったのは、“直感的な音作りができる”ということ。アナログ・コンソールでは当たり前のことでしたが、いつのまにかプラグインの数値に左右される音作りをしていた自分に気づかされた瞬間でした。イン・ザ・ボックスでの制作では耳で音を聴きますが、ディスプレイに表示された数値を見て“これくらいかな”と判断しがちです

 しかしUC1を導入してからは、SSLのアナログ・コンソールで音作りをしていた当時の感覚に近いものを思い出しました。本当にコンソールを扱っているようで、一周回って原点に戻ってきたような気持ちです。専用プラグインのSSL Native Channel Strip 2やBus Compressor 2とスムーズに連携し、サイズ感もちょうど良い。リダクション・メーターやLED表示も見やすく、これがプラグイン・コントローラーだということを忘れてしまうくらいです(笑)。

 UC1なら、ハードウェアのメリットである“直感的な音作り”を十分に体験できるでしょう。音楽は感覚で作るのが一番。聴いて良ければそれでいいんです。UC1は、制作で最も大切なことを思い出させてくれます。

デスク中央にセットされたUC1。「おかげで作業が圧倒的に早くなりました。プラグインしか使っていない人はぜひ試してほしいですね」と小林氏は話

デスク中央にセットされたUC1。「おかげで作業が圧倒的に早くなりました。プラグインしか使っていない人はぜひ試してほしいですね」と小林氏は話

製品情報

関連記事