KEF LSX 〜Rock oN Monthly Recommend vol.24

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 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店が語り合う本連載。今回はイギリス発祥のオーディオ・ブランド、KEFのプロダクトを紹介する。長きにわたりリスニングからプロ・オーディオ向けの製品を開発してきた同社は、2019年にコンパクトなスピーカーのLSXを発表した。“ハイレゾ対応ワイアレス・スピーカー”として登場したLSXは、そのハイクオリティな音もさることながら、目を引くデザイン性も高く評価されている。このLSXについて、KEF MUSIC GALLERYの野口正紀氏、Rock oNの天野玲央氏に語っていただいた。

Photo:Takashi Yashima(except *)

 

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KEF LSX
オープン・プライス/ペア(市場予想価格:129,980円前後/グロス・ホワイト、149,980円前後/マルーン・レッド、オリーブ、デニム・ブルー、ブラック)(*)

 

●まずはKEFというメーカーの成り立ちについて教えていただけますか?

野口 KEFは英国放送協会BBCの音響エンジニアだったレイモンド・クック氏によって、1961年10月2日に設立されました。彼は、実際に聴いている人の声とスピーカーから出てくる音の違いに違和感を持っていたらしく、スピーカーからの再生音をどうにかして生の声に近付けることができないかと、イギリス・メードストンにあった工場の片隅でスピーカー作りを始めたんです。

 

天野 モニター・スピーカーの製作が大元ですが、僕としてはハイエンドなオーディオ・スピーカー・メーカーという印象がありますね。

 

野口 オーディオ愛好家の方にも人気なのが、LS3/5Aというモニター・スピーカーで、それぞれの個体やパーツの性能の誤差を極力抑えて作られています。今でもLS3/5Aの再販を求める声は多いですね。そのLS3/5Aの現代版と呼べるのが、現行モデルのLS50です。設立50周年を迎えたときに製作されました。我々が求める点音源の極みとも言える同軸スピーカーで、それを実現するためのものがUni-Qドライバー。ツィーターとウーファーの前後位置まで考え、音が耳に到達するまでの時間差を無くしているんです。

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BBCのモニター・スピーカーとして使われたLS3/5A。現在も再販を求める声は多いという

●多くのスピーカーはツィーターとウーファーが上下に並ぶ構造ですが、Rock oN Companyではどういった方に同軸スピーカーを提案していますか?

天野 作業に没頭したい、長時間の作業をするといった方に向いています。同軸スピーカーは聴き疲れしにくいんです。KEFのスピーカーは特にスウィート・スポットが広く、定位も分かりやすいということが挙げられますね。ヘッドフォンで聴きながら定位を決めようとするとすごく悩んでしまうことが多いため、スピーカーで確認するという人がいますが、音響的に整備されていない空間の中でスピーカーを鳴らしても定位がぼやけてしまう。KEFのスピーカーは、そういった環境であっても定位がぼやけにくいと感じます。

 

●今回紹介するLSXは“原音再生”をうたっていますが、モニター・スピーカーとは表記されていません。どのようなコンセプトで作られているのですか?

野口 KEFとしては、使う用途だけで考えているのではなく、ただ音楽を心から楽しんでほしいという思いがあります。見た目を含めて使う人の五感を揺さぶるようなスピーカー作りを目指しているんです。モニター・スピーカーとしてはもちろん、リビングのテレビ用やスマートフォンでの音楽再生など、さまざまな使い方や楽しみ方というニーズに対応していけるように考えています。

 

●音楽制作で使われている方からの声は?

野口 “コンパクトながら、低域から高域まで高いクオリティかつ自然にモニタリングができて、制作において重宝している”というお話はいただきました。また、目に優しいと言う方もいらっしゃいます。モニター・スピーカーというと、四角くて、目の前にあると圧迫感があるモデルが多いと思いますが、LSXではその見た目の圧が非常に少ないということもメリットのようです。

 

天野 LSXと同価格帯の同軸スピーカーはあまり無いのですが、LSXはしっかりと同軸の利点を生かした音の良いスピーカーですし、お客様の反応も良いですね。各周波数の出方がナチュラルで、長時間聴いていても疲れない。コスト・パフォーマンスに優れていると思います。また、BluetoothやAirPlay2、光デジタル、ステレオ・ミニなど、接続方法が複数用意されているのもポイント。L/Rがワイアレスでつながるので取り回しもしやすいです。スタジオ用途で考えるとXLR入力が欲しいところですが、今後のスピーカーに搭載されるとうれしいですね。

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LSXのリア・パネル。左がマスターで右がスレーブだ。それぞれの接続はワイアレス(2.4GHz)かワイアード(イーサーネット)で行う。マスター側はS/P DIFオプティカル(TOS LINK)、アナログ(ステレオ・ミニ)など多彩な入力に対応

●原音再生のため、Uni-Qドライバーだけでなく、スピーカー内部にも工夫がされているようですね。

野口 スピーカーは音が出ることで常に振動しています。その振動がスピーカーのキャビネット内部で無駄な響きを生んでしまい、正確な再生音ではなくなるのです。LSXのキャビネット内部は、コンピューター解析により、定住波を減らすため極力平面を作らないようになっています。スピーカー正面を見ていただくと分かるかと思いますが、丸みを帯びていますよね? これは外へ音が放出される際の本体への反射を防ぐ意味もありますが、スピーカーの内部で同じ方向に音が反射しないよう曲面になっているのです。

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LSXの内部は、Uni-Qドライバーの動きが阻害されないようにフローティングした構造。内部での定在波を低減させる設計も行われている

●DSPによる補正機能も魅力です。

野口 LSXのほか、KEFのアクティブ・スピーカーにはMusic Integrity Engineという独自開発のDSPが含まれています。DSPでは、入力された信号が奇麗な波形のままスピーカーから再生されるように、位相とタイム・アライメントを制御します。それが、Uni-Qドライバーとも相まって、アナログ的にもデジタル的にも最良な音で耳に届けられるようになっているのです。本体の操作はiOS/AndroidアプリのKEF Controlからできます。“机/スタンドのどちらで使うのか”“壁からの距離はどれくらいか”“部屋の大きさはどの程度か”などの質問に答えるだけで、環境に合ったDSP処理が可能です。

 

天野 Rock oNの店内でもDSP補正を試してみました。店内の広い空間にある机に置いてアプリを使ったセッティングをしたところ、補正されてしっかりモニタリングができる音になっていましたね。

 

野口 KEF Controlにはベーシックとエキスパートの2モードがあり、ベーシックは音響機材に詳しくない人でも使いやすいような項目が並びます。エキスパートはもう少し項目が詳細になるので上級者向けですね。どちらもスライダーとボタンで操作できるため、誰でもスムーズに設定できると思います。

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iOS/AndroidアプリのKEF Control。Wi-Fiのセットアップや設置環境に応じた音響補正が行える。低域の反射を考慮したウォールEQやデスクトップEQに加え、高域特性の補正も可能。簡単にセットアップできるベーシック(画面左)と詳細な設定が行えるエキスパート(画面右)の2つのモードを備える

●LSXは5色のカラーが展開されていたりと、かなりデザインにこだわっていますね。

野口 通常のモニター・スピーカーではなかなか無いと思いますが、ドライバー・ユニットにもカラーリングが施されているんです。KEFのスピーカーは性能を高めるだけでなく、目で楽しむデザインも取り入れています。デザインはマイケル・ヤング氏が担当しました。オーディオ機器とは違った感覚でアプローチしてくれるデザイナーです。例えばリア・パネルの入力端子周りは、オーディオ機器に詳しくない人でも分かりやすいような位置関係、フォントになっています。また、北欧で有名なテキスタイル・メーカーKVADRATのファブリックを使用したモデルもあり、インテリアにも合うようにデザインされているんです。さらに、ツィーターの中のカラーとその周りで色が違うなど、色の遊びも取り入れられています。

 

天野 どんな場所でも置いたときになじまないということが無いくらいのカラー展開ですよね。

 

野口 スタジオというとやはり黒色のイメージがあって、良くも悪くも重厚な感じがありますよね。でも、KEFのスピーカーのような色使いをする機材があることによって、音楽の考え方や聴こえ方が変わってくるかもしれません。これからもKEFは多彩なデザインや色使いで、みんなの心に残るような製品を展開していくと思います。

 

天野 スピーカーやスタンド、ヘッドフォンなど、機能とデザインが優れた製品は既にラインナップされていますが、KEFのパワー・アンプがあると面白いかもしれませんね。パッシブ・スピーカーのLS50を購入される方もパワー・アンプの選択に悩まず導入しやすくなると思います。

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KEF MUSIC GALLERYの野口正紀氏(写真左)、Rock oNの天野玲央氏(同右)

KEF LSX

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オープン・プライス/ペア(市場予想価格:129,980円前後/グロス・ホワイト、149,980円前後/マルーン・レッド、オリーブ、デニム・ブルー、ブラック)(*)

SPECIFICATIONS:
■ドライバー・ユニット:Uni-Qドライバー・アレイ(HF:19mmベンテッド・アルミ・ドーム、LF/MF:115mmマグネシウム/アルミ合金) ■入力:WiFi(2.4/5GHzデュアル・バンド)、Bluetooth 4.0(aptXコーデック)、S/P DIFオプティカル(TOS LINK)、アナログ(ステレオ・ミニ)、イーサーネット(ネットワークとサービス用)■出力:サブウーファー(RCAピン)、5V2A DC出力(USB-A) ■アンプ出力:70W(LF)+30W(HF) ■入力解像度:最高24ビット/192kHz ■出力解像度:24ビット/48kHz(ワイアレス・モード)、24ビット/96kHz(ケーブル・モード) ■最大出力(SPL):102dB ■周波数特性(–6dB、85dB/1m):52Hz〜47kHz(スタンダード) ■外形寸法:155(W)×240(H)×180(D)mm ■重量:3.6kg(マスター)、3.5kg(スレーブ)

 

jp.kef.com

Rock oN NEWS

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