Pro Tools|Carbonユーザー・レポート 中土智博(前編)レイテンシーの無い録音環境へ

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 アーティストへの楽曲提供のほか、『あんさんぶるスターズ!』『アイドリッシュセブン』などのアニメ/ゲーム音楽も多数手掛ける作編曲家、中土智博(APDREAM所属)。自宅にプライベート・スタジオを構える中土は、発売とともにAVID Pro Tools|Carbonを導入した。それまでCPUネイティブ環境でPro Tools|Ultimateソフトウェアを使ってきた中土にとって、Pro Tools|Carbonのハイブリッド・エンジンが大きなメリットをもたらしてくれたという。

ステレオ感や周波数レンジが広く感じられる出音

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中土のプライベート・スタジオ。デスク右のラックにPro Tools|Carbonが収められている

 「それまで使ってきたオーディオ・インターフェースの音にちょっと飽きてきていたんです。それと、CPUネイティブ環境でモニターにレイテンシーがあるのが我慢ならなくなってきた。もちろん低レイテンシー・モニタリング・モードにするという手もありますが、制作でトラック数が増えていったときに、いったんフリーズさせてというのは作業効率を考えると現実的ではないし、これはもうPro Tools|HDXを買うしかないのかな……と思ったときに、ちょうどPro Tools|Carbonが発表されたんです」

 

 Pro Tools|Carbonの導入経緯をそう語る中土。そのサウンドも期待以上だったという。

 

 「これだけチャンネル数があって、DSPが内蔵されていて50万円弱と聞いて、出音にはそこまでは期待していなかったんです。音が気に入らなかったら、もともと使っていたインターフェースをデジタル接続して、AD/DA変換はそちらですればいいかなと。でも実際に音を聴いてみると、ステレオ感や周波数のレンジも広く感じられました。事務所のスタジオにPro Tools|MTRX Studioがあって、厳密に聴き比べたわけではないのですが、それに通じる音質の良さがあると思います」

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Pro Tools|Carbonのモニター・アウトはステレオ3系統もしくは5.1chサラウンドに対応する。「ヘッドフォンが4系統あるのは、バンドのレコーディング・モニターに便利でしょうね。もしミックス用としてより音質の向上を望むのであれば、モニター・アウトのうち1ペアを外部のヘッドフォン・アンプにつなげるといったこともできると思います」と中土は語る

AAX DSPプラグインでレイテンシーの無いギター録音

 

 多数のアウトボードを用意し、ギター・アンプが鳴らせるブースまでスタジオに構えた中土。しかし、Pro Tools|CarbonのHi-Z入力に直挿しでエレキギターを録ることも増えたそうだ。

 

 「実機のアンプとプラグインと、同じモデルでも、空気を通っている方がいいときと、もうちょっとタイトに聴こえたがいいときがあるんです。実機のアンプをマイクで録ると、良くも悪くもうま味と雑味が出る。どうしてもノイズ・フロアも上がってくるので、そういうときの選択肢として重宝しています。スタジオを造るまでは、何が何でも実機のアンプを鳴らすんだ!と思っていましたが、ちゃんと鳴らせる環境を造ってみると、そこは臨機応変にできますね。特にグループものでは、マイクの本数が増える分、全体のノイズが上がってきてしまうので、クリーンに録る方を選択することが多いです。」

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フロントには2系統のHi-Z入力端子が用意されている

 実際のギター録音のワークフローを、より詳しく聞いてみた。


 「曲の作り始めは低レイテンシー・モードが使えるのでAAX Nativeプラグインでもよいのですが、だんだんトラックが増えてくると、AAX DSPプラグインのアンプ・シミュレーターを使います。ギター・アンプ・シミュレーターに関して言えば、PLUGIN ALLIANCEのDiezel Herbertが気に入っていますね。DIEZEL Hagenは実機を持っているんですが、プラグインで使っているうちにHerbertの実機も欲しくなってきました(笑)。アンプのマイク録音のときは、EQで音決めもしていましたが、直結の場合はPro Tools|Carbonのインピーダンス切り替えを使って音色をコントロールしています」

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PLUGIN ALLIANCE Diezel Herbert。同ブランドのプラグインはAAX DSPで動作するものが多く、Pro Tools|CarbonにはBrainworx BX_MasterdeskやBX_Console N、BX_Rockrackなどが付属している

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約1年前のスタジオ取材時の撮影。アンプ・ヘッドは下段がDIEZEL Hagen、上段がVOX AC30 Hand-Wired Head

 もちろんAAX DSPプラグインはトラックのインサートにかかるので、録音されるのは素のギターの音だ。中土氏はこうして録音した場合、プラグインを挿し替えて音を吟味することがあるという。

 

 「そのときは録った後だから、AAX Nativeプラグインでもいいんですよ。録音時に、ある程度イメージに沿った音でレイテンシー無く録れる。それがPro Tools|Carbonのメリットだと思います。CPUパワーが増えたらレイテンシーを少なくできるからDSPは不要じゃないか?という声もありますが、CPUの処理能力が高くなっても、結局僕らはそのCPUパワーを無尽蔵に使ってしまうんです。だから、録音時のモニター・レイテンシーを無くすためにはDSPが必要なんですよね」

 

 そのDSPの機能がDAWと統合しているのが、Pro Toolsのハイブリッド環境の魅力と言えるだろう。中土はこう続ける。

 

 「Pro Tools|Carbonが複数台カスケードできたり、逆に小さいサイズのモデルが出たりするとうれしいですね。あと、AAX DSPのプラグイン・シンセも期待したいです。これもアンプ・シミュレーターと同じで、イメージに近い音で鳴ってくれればそれでいいんです。後から差し替えらられるから」

※Pro Tools|CarbonとPro Tools 2021.10のシナジーを語る後編はこちらから

 

12月31日までの購入でAuto-Tune Hybrid&Pro Tools | Ultimateが提供

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 Pro Tools|Carbonを2021年12月31日までに購入すると、ピッチ補正プラグインANTARES Auto-Tune Hybrid(AAX DSP)と、Pro Tools|Ultimateの永続ライセンスが無償提供される。総額30万円相当のバリューを手にできるチャンスだ。

キャンペーン詳細

 

Pro Tools|Carbon製品情報

 

 

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