THE RAMPAGE東京ドーム公演のメインコンソールに選ばれたMIDAS HD96-24 〜その選択理由と音質の魅力|音響設備ファイル【Vol.91】

THE RAMPAGE LIMITED LIVE 2024 *p(R)ojectR® at TOKYO DOME|音響設備ファイル【Vol.91】

2024年9月11日と9月12日の両日、東京ドームで開催された、16人組ダンス&ボーカル・グループTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE(以下THE RAMPAGE)のライブ。今回は、この公演にメイン・コンソールとして採用されたMIDAS HD96-24にフォーカスし、その選択理由と使い勝手を取材した。コンパクトなボディに最大144chの入力を備える同機の魅力に迫っていこう。

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

【公演概要】

THE RAMPAGE LIMITED LIVE 2024 *p(R)ojectR® at TOKYO DOME

日程:9月11日(水)、9月12日(木)
会場:東京ドーム
開場:16:00
開演:18:00

2014年、3つのオーディションを通じて選ばれた16人組ダンス&ボーカル・グループ。“RAMPAGE=暴れ回る”と名付けられたこのグループは、その名のごとくステージを踊り暴れるHIPHOPテイストのパフォーマンスが一番の魅力。2017年1月25日 1stシングル「Lightning」にてメジャー・デビュー。2021年7月には、デビュー後初の単独東京ドーム公演を2日間成功させた。2024年7月24日リリースの「24karats GOLD GENESIS」では、グループとして2度目のオリコン・ウィークリー1位を獲得。その勢いのまま、本公演は大盛況のうちに幕を閉じた。

懐の深いMIDASサウンドは当公演に最適なチョイス

 2024年9月11日と9月12日に開催されたTHE RAMPAGEの東京ドーム公演『THE RAMPAGE LIMITED LIVE 2024 *p(R)ojectR® at TOKYO DOME』。彼らが東京ドームのステージに立つのは今回が2回目。10年前の2014年9月12日に結成されたグループの節目を飾る特別なライブということもあり、両日ともに多くの観客が東京ドームへと足を運んでいた。

 この大事な公演のサウンドをつかさどるメイン・コンソールとして採用されたのが、MIDAS HD96-24。HERITAGE-Dシリーズとして展開されるデジタル・コンソールで、その名からも想像できるように同社のアナログ・コンソールHERITAGEシリーズの血を受け継ぐモデルだ。FOHエンジニアを務めたワンツーの幸田和真に、その選択理由を聞いた。

 「一番の理由は音。MIDASサウンドです。デジタルになっても、昔使っていたHERITAGE 3000と印象が一緒で、弾むような音で立体感や奥行きがある。例えばドラムのキックやタムにしても、ポンッと跳ねるような感じで、ほかのブランドでは出ない個性だと思います。ふくよかさや密度の濃さも特徴ですね」

MIDAS HD96-24。最大144chの入力、120系統のミックス・バスを搭載。サンプリング・レートは96kHz。1,028(W)×352(H)×719(D)mm、43.2kgのコンパクト・ボディに、21インチのカラー・タッチ・スクリーン、28本の100mmフェーダー、豊富なツマミやボタンを備え、操作性にも優れる

MIDAS HD96-24。最大144chの入力、120系統のミックス・バスを搭載。サンプリング・レートは96kHz。1,028(W)×352(H)×719(D)mm、43.2kgのコンパクト・ボディに、21インチのカラー・タッチ・スクリーン、28本の100mmフェーダー、豊富なツマミやボタンを備え、操作性にも優れる

 さらにMIDASサウンドには「懐の深さがある」と言う。

 「若いころHERITAGE 3000に感じていた“多少ラフに調整してもうまく混ざってくれる”というイメージがHD96-24にもある。懐が深くて余裕を感じます。こういった特徴は、THE RAMPAGEのサウンドにも適しているんです。THE RAMPAGEのライブは楽曲の軸となる同期トラックをベースにしながら、生バンドが重なる構成になっています。こうした場合、卓によってはトラックと生音がなじみにくいことがあるのですが、HD96-24は懐の深さで受け切って、それを感じさせないんですよ。また、ボーカリスト3人の声の違いも繊細に描いてくれます。アーティストがライブで見せたいものが表現しやすいコンソールと言えるのではないでしょうか」

FOHエンジニアリングを担当したワンツーの幸田和真。インタビューではHD96-24の魅力をさまざまな角度から語っていただいた

FOHエンジニアリングを担当したワンツーの幸田和真。インタビューではHD96-24の魅力をさまざまな角度から語っていただいた

コンパクトながら多機能 操作性に優れたツマミの配置

 1,028(W)×352(H)×719(D)mm、43.2kgというコンパクト・ボディもHD96-24の魅力だ。それでいて最大同時入力数144chに120系統のミックス・バスを備えている。

 「これだけ入出力数があってこのサイズはありがたい。セッティングも2人いればできるので、ホール公演のような客席に仕込むときも楽です。画面も大きく、タッチの反応もいい。それでいて、EQやコンプがすべてツマミで操作できるのもいいですね。配置もよく考えられている。卓によってはツマミのレイアウトに慣れないと、EQを一度決めたら触らなくなることもあるのですが、HD96-24は曲中にもツマミを操作しやすいです。複数チャンネルのパラメーターを同時に変更できるManchinoという機能を使えば、チャンネルごとにEQやコンプの値をコピー/ペーストする手間が省けるので、事前の仕込みも楽です。入力で100ch以上使っていることもあり、1chごとに設定していたら間に合わないですからね」

 また、HD96-24に内蔵するエフェクトを、最大24のマルチチャンネルDSPエフェクト・エンジンで使うことができることもポイントとのことだ。

 「今回HD96-24を選んだもう一つの理由として“卓だけで完結する”やり方に立ち戻りたかったというのがあります。普段ほかの卓でPAを行うときには外部のプラグインを使うことも多いですが、HD96-24は内蔵エフェクトも豊富なので、これ1台で完結させました。よく使うのはT.C.ELECTRONICのリバーブをエミュレートしたTC 6000や、UNIVERSAL AUDIO 1176コンプをエミュレートしたKT1176などです。ボーカルにはコンプをよく使います。ボーカリストが3人いるので、前段はチャンネルでゆるくかけておいた後、バス・サミングしてトータルでかけることで、3人の声質の違いによるばらつきを抑えていく。各チャンネルに使えるダイナミックEQがあるのもいいですね」

21インチのカラー・タッチ・スクリーンは、コンパクトなボディに比してかなり大きい印象で、表示される情報量も多い

21インチのカラー・タッチ・スクリーンは、コンパクトなボディに比してかなり大きい印象で、表示される情報量も多い

パネル上の各フェーダーには240×240ピクセルのLCDを搭載。明るく、解像度が高いので、小さな文字もつぶれず見やすい仕様になっている

パネル上の各フェーダーには240×240ピクセルのLCDを搭載。明るく、解像度が高いので、小さな文字もつぶれず見やすい仕様になっている

PAオペレーションの楽しさが感じられるコンソール

 今回の公演では、ステージ脇に24インのステージ・ボックスDL151が4台、24アウトのDL152が2台、FOHブースに16イン/8アウトのDL153と、8イン/16アウトのDL154が1台ずつ用意され、各ステージ・ボックスとHD96-24は光ケーブルで接続。光ケーブル1本に192ch双方向で信号が通っていて、万が一途切れてしまうと大きな影響があることから、回線を二重化するためのデバイスAS80を使って、不測の事態に備えていた。HD96-24からのアウトはLAKEのDSP、LMXシリーズを介してCO-12ラインアレイをはじめとするCLAIRのスピーカーに出力されていた。幸田は、LMX 48にMIDASサウンドに通じる音の傾向を感じると言う。

 「従来のLMシリーズに比べてハイの感じがリニアでアナログ的なんですよね。音が奇麗につながるし、密度も濃い。この辺りがMIDASの音に似ている。何というか、同じ水で育ったものたちを一緒に使ったとも表現できるような、相性の良さを感じます」

 実は、LAKEの原点はCLAIRのスピーカー用に開発されたDSPで、その使い勝手の良さから単体で世界中に広まったという経緯がある。そういう意味では、今回のシステムはスピーカーとDSPの相性も良かったと言えるだろう。

 インタビューの最後に幸田は「HD96-24は、いろいろな世代の人に使ってみてほしい」という話をしてくれた。

 「PAオペレーションの楽しさが感じられると思います。アナログ卓の時代からやっている人は、HERITAGEシリーズでオペレートしていた頃の感覚に戻れる。若い世代にもMIDASサウンドでオペレートする楽しさを体験してほしいですね」

ステージ脇に設置されたステージ・ボックス。MIDAS DL151が4台、24出力のDL152が2台が収納されている。その下には回線を二重化するためのデバイスAS80が見える。最下段は光ケーブルによる入出力の拡張デバイス、KLARKTEKNIK DN9680

ステージ脇に設置されたステージ・ボックス。MIDAS DL151が4台、24出力のDL152が2台が収納されている。その下には回線を二重化するためのデバイスAS80が見える。最下段は光ケーブルによる入出力の拡張デバイス、KLARKTEKNIK DN9680

PAブースに設置されたステージ・ボックス。上のケースに収められているのが16イン/8アウトのMIDAS DL153、写真下が8イン/16アウトのDL154。写真中央はレコーダーのTASCAM SS-CDR200

PAブースに設置されたステージ・ボックス。上のケースに収められているのが16イン/8アウトのMIDAS DL153、写真下が8イン/16アウトのDL154。写真中央はレコーダーのTASCAM SS-CDR200

異なるオーディオ・ネットワーク同士を接続するためのネットワーク・ブリッジKLARKTEKNIK DN9652

異なるオーディオ・ネットワーク同士を接続するためのネットワーク・ブリッジKLARKTEKNIK DN9652

写真上の2台は、LAKE LMX48とLMX88。THE RAMPAGEのライブでは、2024年7月のLaLa arena TOKYO-BAY公演にも使われた。幸田はそのサウンドにLMシリーズからの進化を感じ、好印象を持ったと言う。写真下に見えるのはパワー・アンプのLAB.GRUPPEN PLM20K44

写真上の2台は、LAKE LMX48とLMX88。THE RAMPAGEのライブでは、2024年7月のLaLa arena TOKYO-BAY公演にも使われた。幸田はそのサウンドにLMシリーズからの進化を感じ、好印象を持ったと言う。写真下に見えるのはパワー・アンプのLAB.GRUPPEN PLM20K44

スピーカーは、メインとサイドのラインアレイにCLAIR CO-12、背面とサイドのサブにCP-218、ディレイにCO-12、会場側面にCO-10、リップフィルにCO-8を使用

スピーカーは、メインとサイドのラインアレイにCLAIR CO-12、背面とサイドのサブにCP-218、ディレイにCO-12、会場側面にCO-10、リップフィルにCO-8を使用

ステージ上のモニター・スピーカーCLAIR CM-14。ボーカリストはイヤモニでモニタリングするがパフォーマーはイヤモニを装着できないので、モニター・スピーカーの音が頼りとなる。正面ステージ側には、CM-14をはじめ、多数のモニター・スピーカーが用意されていた

ステージ上のモニター・スピーカーCLAIR CM-14。ボーカリストはイヤモニでモニタリングするがパフォーマーはイヤモニを装着できないので、モニター・スピーカーの音が頼りとなる。正面ステージ側には、CM-14をはじめ、多数のモニター・スピーカーが用意されていた

モニター・コンソールにはAVID VENUE | S6Lを使用

モニター・コンソールにはAVID VENUE | S6Lを使用

関連リンク

関連記事