GENELECが最新鋭のモニタリング・ソリューションとして提唱するSAM（Smart Active Monitor）システム。スピーカーにDSPを搭載し、独自のGLM（Genelec Loudspeaker Manager）を使用することで設定からキャリブレート、コントロールが可能、柔軟かつ信頼性の高いシステム構築を実現する。ここではtoeのギタリストでありエンジニアとしても活躍する美濃隆章が、GLMによる音響補正の効果を検証。同軸構造のThe Onesシリーズ8341AとGLM 4によるサウンドを試聴した。
Photo：Hiroki Obara
【動画】GENELEC 8341A & GLM 4 × 美濃隆章 〜Impressions
ミックスで攻められるし作業効率も良くなった
今回の企画は、“プライベート・スタジオで自動補正機能付きのスピーカーを試してみたい”という美濃の強い希望が契機となり実現した。
「このプライベート・スタジオは、ルーム・チューニングを含め全部自分でDIYしたのですが、どうしても取り切れない低音の定在波があって。だから内装をやり直そうとも思ったのですが、その前に試せることはやってみようと。そこで、スピーカーを自動補正機能付きのものにしたらどのくらい改善されるか興味があったんです」
補正前後では、どのようなサウンドの変化を感じたのか？8341Aのサウンドのインプレッションと併せて尋ねた。
「キャリブレーションの有無を切り替えて聴き比べたところ、補正無しだと定位がボヤけたのですが、オンにするとピントが合うような感じで面白いくらいシャキッとしたんです。すごく低音を出しても出っ張ったところが補正されるのでミックスで攻められる。嫌な部屋鳴りの周波数が無く、今まで使っていたスピーカー以上に低音が出るのに、より低音を出したミックスができるという不思議なことが起きています。部屋鳴りのブーミングでマスキングされていた部分がクリアになったので、ほかのミックスの欠点を見付けるのが数倍速くなって作業効率も良くなりました。8341Aのサウンドは高域から低域までものすごくレンジが広いですね。低音は奇麗に伸びて、消えるギリギリの空気感までよく見えます。クラブ・ミュージックなど現代のワイド・レンジな音楽もきっちり聴き取れますし、再現力がすごいですね」
補正結果を元にしてより良いスタジオ環境を構築
続いてGLM 4の機能面での感想を伺ったところ、その柔軟性についてこう言及してくれた。
「マルチポイントで測定できるのは良いですね。また、自分の作業用のリスニング・ポイントと、クライアント用の部屋後方のリスニング・ポイントを両方キャリブレーションしておけば、タブを切り替えるだけでどちらにフォーカスを合わせるか瞬時に設定できるのはすごく便利だと思いました。それから僕は5.1chミックスも何回か経験があるのですが、GLM 4はスピーカー間のレベルとディレイ調整にも対応しているので、マルチチャンネルでバチッとフォーカスの合った音を聴いてみたいです」
最後に美濃は、GLM 4でのデジタル補正は、スタジオのリスニング環境をアナログで改善していくためのヒントにもつながると話してくれた。
「GLM 4は、キャリブレーションによる周波数特性の変化が画面上に出るので視認性が良いですね。その画面で分かる、補正されている帯域や測定結果を元に、例えば“ここに吸音板を置いてみよう”“壁を斜めにしてみよう”など、GLM 4を活用しながら工夫することで、より良い環境を構築できそうだと思いました。今後半年～１年くらいかけてそのような調整も一緒にやり込むと、このスタジオの悩みが全く無くなるような気がします」
美濃隆章
【Profile】国内外で根強い人気を誇るポストロック・バンド、toeのギタリスト。エンジニアとしても活動し、toeはもちろんクラムボン、mouse on the keys、ゲスの極み乙女。、Chara、bonobos、LUCKY TAPES、sohaなど数多くのアーティストを手掛けてきた
GLM 4（Software）
REQUIREMENTS
▪Mac：MacOS 10.11以降（INTEL製CPU。APPLE Silicon CPUの場合はRosetta 2使用）
▪Windows：Windows 10（64ビット版のみ）
▪共通：2GB以上のHDD容量、インターネット接続（インストールおよびGLM AutoCalソフトウェア・ダウンロードなど）
ダウンロードはGENELEC Web サイトより（無償）
GENELEC 製品情報
