【発表会動画あり】UNIVERSAL AUDIO Apollo x16Dがライブの音を変える!

Apollo x16D top

UNIVERSAL AUDIOの人気オーディオ・インターフェース、Apolloに、Danteインターフェースを搭載したApollo x16Dが加わった。ライブや配信、大規模スタジオで活躍が期待されるこの最新モデルについて、その特徴と、ライブ・サウンド・エンジニア小松久明氏が登壇した発表会の模様をお届けしていく。

発表会の模様は動画でもご覧いただけます

UNIVERSAL AUDIO Apollo x16D

Apollo x16D

 Thunderbolt接続のオーディオ・インターフェースApollo xシリーズの最新モデル。冗長化したDanteポート(16ch入出力)に加えて、最高24ビット/192kHz対応のアナログ・ステレオ・モニター出力、AES/EBU入出力、ワード・クロック入出力を備える。最大4台をカスケードし、64chのDanteシステムを構築することが可能だ。

 HEXA(6)コアDSPとUADプラグインによるプロセッシングが可能。デジタル・コンソールとDanteで接続することで、チャンネル・インサートやセンドで定評あるUADプラグインを低レイテンシーで使用できる。

 パッケージは、20種以上のプラグインが付属するEssentials+ Edition(517,000円)と、120種以上のプラグインがバンドルされたUltimate+ Edition(693,000円)が用意される。

 また、ライブPAのみならず、配信現場でのリアルタイム・プロセッシングや、Danteベースで構築されたスタジオでのエフェクト処理、モニタリングにも活用することができる。

Apollo x16Dのポイント

最新Danteによる低レイテンシー

Apollo x16D × Dante

 Apollo x16Dには、Audinateによる最新のDanteチップを搭載。入出力0.25msという超低レイテンシーでDanteとの信号をやり取りできる(Apolloでの処理によるレイテンシーは別途加算)。

 なおAES67互換のため、他のAudio over IP規格とも接続が可能だ。最大4台をリンクすることで、最大64chのDanteシステムをApolloで構築できるのもポイント。

Auto-Tuneをはじめ定番エフェクトをリアルタイム処理

Antares Auto-Tune Realtime

Antares Auto-Tune Realtime

 Essentials+、Ultimate+の“+”は、UADプラグインとして最も人気のあるものの一つ、Antares Auto-Tuneが付属している証。Essentials+ EditionにはAuto-Tune Realtime Access、Ultimate+ Editionには上位版のAuto-Tune Realtime Xが付属する。もちろん、スタジオでは定番のUADエフェクト群もリアルタイムで処理が可能だ。

C-Suite C-Vox

C-Suite C-Vox

 また、コンサートPAのみならず、配信の現場でもApollo x16Dの活躍が期待できる。C-VoxをはじめとするC-Suiteのノイズ・リダクション・プラグインで、クリーンなトークを配信することも可能だ。

Consoleでのシーン・リコール

Apollo Console Insert
Apollo Console Scene
Apollo Consoleでシーンリコールが可能に

 

 以前のライブ用UADプロセッサー、MADI接続のUAD Live Rackは専用ソフトウェアを使用していた。シーン・リコールやMIDIスナップショットなどのライブに特化した機能を有していたが、一部のUADプラグインが使用できないということもあった。

 Apollo x16Dは、その名の通りApolloシリーズであるため、ApolloのConsoleでコントロールを行うことに。これによりApollo対応UADプラグインのフル・ラインナップをライブ・サウンドで使うことができるようになった。

 一方、ConsoleにPLUGIN-SCENE機能が追加。これによりプラグインのパラメーターとオン/オフを、事前に登録した設定へと瞬時に切り替えることが可能となった。MIDIコントロールでのシーン送りも可能で、デジタル・コンソールのシーンと連動させたり、手元のコントローラーでシーンを切り替えたりといったことも行える。

モニターコントロール機能も搭載。Danteベースのイマーシブスタジオで有用な機能だ

モニターコントロール機能も搭載。Danteベースのイマーシブスタジオで有用な機能だ

 またApolloの高度なモニター・コントロール機能を使って、最大9.1.6chまでのスピーカー制御も可能となっている。

小松久明×Apollo x16D 〜Apolloはライブ・サウンドにとって“魔法の箱”

Apollo x16D発表会 全景

ユーザーの声に応えDante接続に

 8月に行われた発表会ではまず、UNIVERSAL AUDIOの永井“ichi”雄一郎氏が、Apollo x16Dの概要を説明した。

 「UNIVERSAL AUDIOではSoundcraftとの協業によるRealtime Rackや、それを継承したUAD Live RackといったMADI接続のライブ向けプロセッサーをリリースしてきました。スタジオで使っていたUADプラグインがステージでも使用できることは、世界中の大規模なコンサート・ツアーで定評を得てきています。Apollo x16Dは、これらのユーザーからの声を元にDanteインターフェースを備えたモデルとなりました」

UNIVERSAL AUDIOの永井“ichi”雄一郎氏(左)とK.M.D Sound Designの小松久明氏(右)。小松氏はLUNA SEAのほか、手嶌葵、大黒摩季、いれいすなどのコンサートPAを手掛けてきた

UNIVERSAL AUDIOの永井“ichi”雄一郎氏(左)とK.M.D Sound Designの小松久明氏(右)。小松氏はLUNA SEAのほか、手嶌葵、大黒摩季、いれいすなどのコンサートPAを手掛けてきた

 ゲストとして登壇したのは、LUNA SEAや手嶌葵、いれいすなどのライブを手掛けるサウンド・エンジニアの小松久明氏(K.M.D Sound design)。UAD Live RackやApolloなど、計12台を自社で所有しているという。

 「僕がライブでUADプラグインを使い始めたのは、LUNA SEAが2015年に開催した『LUNATIC FEST.』がきっかけです。メイン・ステージとは別に、結成時の名義=LUNACYでも小さいステージで演奏したいというメンバーの希望があって、デジタル・コンソールを据えたメインのFOHに加えて、小ステージではアナログ・コンソールを投入しました。でもエフェクトは最新のものを使いたくて、Apollo+UADプラグインを現場に投入したんです。Studer A-800でボーカルに少しひずみを足すという処理がすごく気に入って、UAD Live RackやApolloを使い続けています」 

実機を超える機能とリスク回避

発表会のシステム。コンソールはYAMAHA QL5で、ネットワーク・スイッチS WP1を介して2台のApollo x16Dと接続。インサート×24ch+センドのステレオエフェクト×4系統を使用できる環境だ

発表会のシステム。コンソールはYAMAHA QL5で、ネットワーク・スイッチS WP1を介して2台のApollo x16Dと接続。インサート×24ch+センドのステレオエフェクト×4系統を使用できる環境だ

 今回は、UNIVERSAL AUDIOのStandardシリーズ・マイクで収録したマルチ素材をソースとして、普段小松氏が使っているプラグインの一部を紹介していくという趣向。まず筆頭に挙げられたのがLexicon 224だ。

Lexicon 224

Lexicon 224

 「224は、ボーカルにまとわりつかないリバーブ感。歌詞がはっきり聴こえて、それに対してリバーブもちゃんとかかっているのが好きなんです。今はコンソールにも素晴らしいリバーブが入っているものの、やっぱりLexiconのリバーブは特別です。224の実機を持ち歩くと故障のリスクもありますが、パソコンとApolloなら壊れない。実際、これまで僕の現場では一度もトラブルは起きていません」

AMS RMX16

AMS RMX16

 リバーブではAMS RMX16もお気に入り。「ドラムのスネアとかタムとかに使うんですけど、本当に温かくてすごくいい音だと思います」と実演をする。

 続いてボーカルの処理へ。UADプラグインというとビンテージ・テイストのものが多い中、小松氏がまず挙げるのはSONNOX Oxford Dynamic EQだ。

ボーカルのピーク抑制に使うSonnox Oxford Dynamic EQ

ボーカルのピーク抑制に使うSonnox Oxford Dynamic EQ

 「マイクの近接効果で膨らむ帯域を抑えたり、ボーカルのメリハリを出す部分をちょっと持ち上げて、倍音が痛いところをカットするといったことをします」

 その後段にはFarichild 660をインサート。ボーカルには必ずこれを使うという。

Fairchild 660。パラレルコンプレッションやサイドチェイン・フィルターを備えている

Fairchild 660。パラレルコンプレッションやサイドチェイン・フィルターを備えている

 「ニー・カーブの設定が連続可変なので、ボーカルの当たり具合を奇麗に作れるんですよね。実機の660にはないサイド・チェイン・フィルターで低域のコントロールもできる。MIXを使って原音をブレンドすると、ボーカルが前に出てくる。660の実機も使ったことはありますが、プラグインは壊れないし、こういう追加機能があるのも気に入っている部分です」

 チャンネル・インサートではプラグイン処理でのレイテンシーも若干生じることがあるが、FOHであれば問題ないとのこと。「最も遅延の大きなチャンネルに合わせて、ほかのチャンネルにディレイを入れてタイミングをそろえています」と工夫も解説してくれた。 

モデリングでマイクの種類も変更

UNIVERSAL AUDIOのStandardシリーズ・マイク。左からSD-1、SC-1、SD-3、SD-7、SD-5、SP-1のペア

UNIVERSAL AUDIOのStandardシリーズ・マイク。左からSD-1、SC-1、SD-3、SD-7、SD-5、SP-1のペア

 発表会では、APPLE iPadのMIDIコントローラーアプリによるシーン・チェンジも紹介。「僕は普段、コンソールのシーンを切り替えるMIDI信号をコンソールからスルーして、UADプラグインのシーンを切り替えています」と小松氏がTipsを明かす。

 さらに、今回のデモ音源収録に用いられたStandardシリーズ・マイクとの組み合わせが白眉。Hemisphereモデリング・テクノロジーによって、各マイクが古今東西の名機のサウンドに変化。マイクの角度や距離、元となったモデルのフィルター特性までも再現する。

Standardシリーズのマイクで使用できるマイク・モデリング・プラグインHemisphere。同社Sphereの技術を継承しながら、ユーザー・インターフェースをシンプルに絞り込み、扱いやすい仕上がりになっている

Standardシリーズのマイクで使用できるマイク・モデリング・プラグインHemisphere。同社Sphereの技術を継承しながら、ユーザー・インターフェースをシンプルに絞り込み、扱いやすい仕上がりになっている

 「EQではできないような音色変化が可能です。全部のマイクのモデリングを変えたら、ガラッと雰囲気を変えることができるんです。マイクの調整にしても、まずはHemisphereで試して、感触が良ければ実際にマイクを動かす、という使い方もできますよね」と永井氏。小松氏がこう続ける。

 「アウトボードのプラグインにしても、UNIVERSAL AUDIOは相当状態の良いモデルをモデリングしているから、Hemisphereも期待できますね。僕は古いマイクをステージに持ち込んでいますが、やはり管理が大変です。その意味では一度、Hemisphereマイクだけでコンサートをやってみたいと思います」

 最後に永井氏が強調したのは、Apollo x16Dによるスタジオとステージの循環だ。

 「ステージで使っていたApollo x16Dも、昨今のDanteベースで構築したDolby Atmo
s対応スタジオでは強力なプロセッサーやモニター・コントローラーなど、Danteシステムの中核として使うことができます」

 そして小松氏は、ライブ・サウンドへのUADプラグイン導入を積極的に呼びかけた。

 「Apolloはライブ・サウンドにとって魔法の箱。アリーナなどの大型ツアーには、Apolloを取り入れて、1曲ごとの音楽の作り方に探求心を持つ。そういうことができるのがコンサートにおけるApolloの強みだと思います」 

 

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