任意のパラメーターを画面に配置できる
自由度の高いカスタマイズ性
まず目に飛び込んでくるのは側面のユニークなデザインです。筒状になっており、向こう側が見えるのです。内側にはスリットが入っている部分があり、排熱効率を上げつつ、本体にホコリが入りにくい構造になっています。また、フロント・パネル部分は垂直ではなく角度がついており、テーブルなどの上に置いた状態でも操作がしやすくなっています。
フロント・パネルには、任意の機能をアサインできる15個のソフト・キー、タッチ・スクリーン上に複数のウィジェットを配置できるQu-Controlなど、自由度が高い機能を搭載。これらをカスタマイズしていけば、スムーズなオペレーティングができるでしょう。
Qu-Pacはフェーダーレスですが、APPLE iPad専用アプリQu-Padを使ったフェーダー操作ができ、iOS/Androidデバイス用パーソナル・モニタリング・アプリQu-Youを使えばステージ上でミュージシャンが自分のモニター・ミックスをコントロールすることもできます。両アプリを試したところ、Wi-Fiルーターさえあれば難しい設定も無く、すぐ接続することができました。ALLEN&HEATHのデジタル・ミキサーはカスタム・レイヤーが使いやすくて好きなのですが、Qu-Padの方で同様にカスタム・レイヤーを組むことができ、安心です。
マイクを使ったチェックをしてみると、フラットな音質でSN比も良く、十分実用的な音質です。各チャンネルには4バンドEQ+ハイパス・フィルターがあり、EQ前段にはゲート、後段にコンプレッサーを搭載。コンプレッサーは4つのタイプを選ぶことができ、ソースによって最適なコンプレッションを得ることが可能です。さらにゲートの前段にはダッカーを搭載。例えばトーク・イベントなどで使えば、マイク入力に合わせてBGMのレベルを下げるといったことが自動で行えます。
本体のマイク/ライン・インは16系統ですが、同社独自のデジタル伝送規格であるDSnakeにより、拡張I/Oボックスの接続ができます。今回は試すことができなかったのですが、最大で38イン/24アウトまで拡張できるようです。
4系統のエフェクト・エンジンを搭載
オートマチック・マイク・ミキシングにも対応
エフェクト・エンジンは4系統搭載しており、それぞれのリターン・チャンネルが立ち上がっています。前述のソフト・キーやQu-Control、Qu-Pad上でカスタム・レイヤーを組み、オペレート中にすぐアクセスできるようにするのもよいでしょう。
エフェクトはクラシック・リバーブやゲート・リバーブ、ディレイ、フランジャーなどのモジュレーション系が選択でき、どれも非常に分かりやすい効果を得られるのが良いと思います。今後のファームウェア・アップデートで増やすことが可能らしいので、ぜひインサートで使えるダイナミックEQやマルチバンド・コンプを追加してほしいですね。
エフェクトのパラメーター操作の画面では基本的によく使いそうなパラメーターが表示されていますが、Expertボタンをタッチするとさらに細かい設定ができるようになっています。この機能はタッチ・スクリーンの誤操作やエンジニア以外の方が操作することも考慮した機能だと感じました。
エフェクトとはちょっと違いますが、オートマティック・マイク・ミキシング(AMM)という機能があります。これは複数のマイク(最大16系統)でプレゼンテーションなどを行うときに、話していない人のマイクのゲインを下げて不要なバックグラウンド・ノイズを低減したり、同時に何人かが話した際にそれぞれの音量が等しくなるようにする機能です。また、それぞれのチャンネルの重要度合いを設定することもできます。
ほかにもUSBオーディオI/O機能やUSBメモリーを使ってマルチもしくはステレオの録音/再生ができるQu-Drive機能があります。マルチトラックの録音をする場合は各チャンネルのダイレクト・アウトだけでなく、ミックス・アウトやグループ、マトリックス・アウトを自由にアサイン可能です。
Qu-Pacは近年のデジタル・ミキサーで考えられる機能のほとんどを網羅しており、そのコンパクトさから小規模ライブPAミキサーだけなくライブ・モニター専用ミキサーや企業イベント、学校、ホテルなど、さまざまな場所で幅広く活躍できるデジタル・ミキサーではないかと感じました。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2020年3月号より)