専用三脚とポップ・ガードが付属
コンプは3段階の設定が可能
まず、USBケーブルを接続しDAWがHypeMicを認識したら、入力だけHypeMicに設定してみます。左端の緑色のLEDが点灯すれば接続完了。マイクとポップ・ガードの三脚への取り付けも簡単で、写真を見ればすぐにセットできました。大きなマイク・スタンドを用意しなくとも、コンピューターの前に座りながら、オーディオI/Oの接続環境も変えず(これが大事)、USBケーブルを新たに挿すだけでHypeMicでの録音を試すことができ、とてもスムーズです。
早速ボーカル・レコーディングを行いました。中央のノブを回してゲインを調整。緑色のレベル・メーターを見ながら、赤いピークがつかないようにします。小さなマイクですが、ダイアルの回しやすさとライトの見やすさが抜群なので、スタンドに設置して歌いながら一人で調整できるところがとてもよいです。音質は一瞬で高品位なことが分かるくらい癖も無く、鋭さとしっとりとした安定感を併せ持っています。ボーカルがオケの中で無理なくキラキラと際立ってくれるので使いやすい印象でした。
HypeMicにはアナログ・コンプが搭載されており、ダイアルで小/中/高の3段階での設定が可能。高が最もコンプレッションが強くなります。この機能では明るい紫色のLEDが左から順番に点灯するようになっていて、一目で現状の設定を確認しやすいところもグッドです。私は大きな声で歌い上げるようなボーカルを録音することが多いので、基本的にはボーカル・レコーディング用に推奨されている小の設定にしますが、ウィスパー・ボイスや控えめなコーラスを録るときなどは中や高の設定にして、HypeMicでならではのキメの細かい質感を楽しみました。ちなみに、小から中より、中から高の方が音が持ち上がっている印象です。高の場合、多少ゲインに注意する必要はありますが、ノイズが気になることはありません。アタックの設定なども無く、もちろん高にしてもピークが当たってしまうようなことは起こらないので、自動的に最適な微調整が行われているのだなと感じます。すぐそばで歌っているような感触やアナログな雰囲気を付加したいときに、あえて高を選択してプリアンプ的に使用するのも面白いです。後からコンプをかけるよりニュアンスを表現しやすくなりますよ。
中域にポイントがあり高域は自然な伸び
リバーブ・テールや音源の輪郭がよく見える
では次に、入出力共にHypeMicにしてみましょう。オーディオI/O無しでも、HypeMicがあればレコーディングができるということですね。マイクの底面にヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)があり、そこからインプット・シグナル(マイクからの入力)とオーディオ・ミックス(コンピューターからの出力)を併せてモニタリングできます。インプット・レベルとミックス・レベルのバランスは、ゲイン・ノブの上のコントロール・ボタンを左右に押して調整します(白いLEDが左から右へ移動していくことで確認可能)。このブレンド機能ではレコーディング中でもレイテンシーが皆無なので、ストレス無く録音が行えました。ただし、歌いながらボタンを押すとカチカチという音も一緒にレコーディングされてしまうので、事前にしっかりバランスを取っておくようにしましょう。
デスクトップでの使用だけでなく、付属のケーブルでAPPLE iPadやiPhoneにつなげばどこでも録音が可能です。iPadでAPPLE GarageBandのオーディオ・レコーダーのトラックを開き、USBケーブルをつないだところ、一瞬にしてINの表示が“MIC”から“USB”に切り替わり、ここでもブレンド機能によってインプット・レベルとミックス・レベルの最適なバランスでモニタリングしながらすぐに録音を始めることができました。これほど手軽に、ファンタム電源のことも気にせずに持ち運べるコンデンサー・マイクはなかなかありません。HypeMicさえ接続すればハイクオリティでオーディオ録音ができることを考えると、曲作りのシチュエーションの幅が一気に広がりますね。ちなみに、三脚の脚は3本まとめると1本のマイクを握っているのと同じくらいの太さになるので、とりあえず一緒に携帯することをお勧めします。スマートフォンで動画の配信などをする場合、カメラの性能は問題無いのに音質がちょっと残念、ということはよくあると思います。楽曲制作だけでなく、録音を必要とするすべてのiOSユーザーにお薦めできるマイクと言えるでしょう。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年7月号より)