レアな古楽器を高品質にサンプリング
管/弦/打楽器などの音色を収録
Dark Eraは、中世以前の暗黒時代を表現するというコンセプトで開発され、ペイガン・ミュージックを思わせるサンプルや神秘的な古楽器の音を多数収録。容量は約14.3GBです。サンプルの再生には、標準搭載されているMAGIX Engine 2を採用。Mac/Windowsに対応し、スタンドアローンのほかVST/AU/AAXプラグインとして動作します。
Instrumentsセクションに収められたサンプルについては、打楽器、弦楽器、管楽器の大半にフランスの楽器ビルダー、ベンジャミン・シマオ氏が携わり、録音には高品質なマイクやマイクプリが使われているとのこと。サンプリングされた古楽器は、日本では状態の良い個体が少なく、奏者探しやレコーディングが困難。その点でも、Dark Eraはドキュメンタリー映像や映画などの楽曲制作でかなり重宝しそうです。
例えば“Percussion”カテゴリー内にも、レアな楽器がスタンバイ。ロバや馬の下あごの骨で作られた“Jawbone”は、トリガーすると歯の震えるカタカタという音がします。画面中央のスライダーで歯の震えるスピードを調整でき、有機的で面白いリズムが作れそう。“Tuned Log”は中空の枯れた木の幹で作られた打楽器で、出音のリリースに木の振動する音がリアルにキャプチャーされています。“Bulroarer”は、木片にヒモを付けてグルグル回すことで、動物の鳴き声のような音が出る楽器。古代の儀式で使われていたそうですが、収録されている音はリズミックかつ豊かな低域が出ていて、エレクトロニカのベースに使っても格好良くなると思います。
“Strings”カテゴリーの弦楽器は、弓で弾くものと指で弾いて演奏するものとにパッチが分かれています。これらはラウンドロビン・サンプルで、鍵盤を無造作にたたくだけでも弦楽器特有の自然な“鳴り”を再現できます。例えば“Crwth”はペイガン・フォークでよく耳にする弦楽器。弦を弓で弾く際のノイズ成分の音量をスライダーで調整できるため、MI
DIコントローラーの併用でよりリアリティのある演奏が再現できそうです。“Winds”カテゴリーには何種類かのフルートが収録されており、滑らかなレガートをデフォルトにしつつ、ビブラートのスピード調整やキー・スイッチによる奏法切り替えが可能。このサウンドがリアルで感動しました!
楽器や声を組み合わせたフレーズも収録
曲のたたき台を1つのパッチで作成可
次に、フレーズを収録した“Sound Design”セクションを見ていきましょう。“Epic Loop”カテゴリー内には、バトル系の映画やゲームで使えそうな壮大かつ躍動感あるリズム・ループが4パターン、そしてフィルやシングル・ヒットなど5パターンが各パッチの鍵盤左側に配列されており、すべて指1本でトリガー再生できます。これらのフレーズは幾つかの楽器やボイス(歌声)でレイヤー構成されており、ミキサー画面で各楽器の音量やパンの調整が可能(画面②)。もちろんDAWからのオートメーション操作にも対応してるので、ワンループでもさまざまなストーリーを演出できます。このセクションのすべてのパッチで、鍵盤右側にベース音として使えるパルス音が配列されており、現場でスピーディに楽曲の土台を組み立てるのに一役買ってくれそうです。
“Rhythmic Pads”カテゴリーについては、鍵盤左側にパルス音やパーカッション、ボイスなどのレイヤーで構成されたリズム・パターンのバリエーションが配列されており、右側の鍵盤では神秘的なパッド音やノイズ、FXサウンドが演奏できます。ここでも、サウンドトラックのたたき台となるものを1つのパッチで素早く作れるという、クリエイターへの配慮が感じられました。そのほか“Soundscapes”カテゴリーには、ノイズやボイス、ホーンなど複数のレイヤーから構成されたアンビエント・サウンドが収録されています。
最後に“Voice”カテゴリー。ここにはイヌイットの文化に影響された聖歌のようなボイスが収録されており、一部パッチではスライダーを動かして歌い方による倍音調整が可能。歯切れの良いワンショットのボイスも収録されており、パッチ内でそれらを組み合わせた24パターンのMIDIフレーズをトリガー再生できるようになっています。
駆け足でDark Eraを紹介してきました。映像やCM、ゲーム系の作曲家に必須なのは言うまでもありませんが、ロックやエレクトロニック・ミュージックなどに導入してみても面白いと思いました。古代の民族楽器が多用されているものの、どことなく無国籍風なので、幅広いジャンルに無理なくフィットしそうです。筆者も早速自身のユニットで活用しています!
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年6月号より)