撮影:川村容一(メイン)
ZOOMから、ポッドキャスト収録や配信番組などに最適で、最大10tr同時録音可能なポータブル・レコーダー、PodTrak P4が発売されました。内蔵マイクは付いていないので、外部マイクをつないで録音する仕様。初めて手に取ったとき“軽い!”と声が出ました。コンパクトな本体と豊富な機能を、早速見ていきましょう。
スマートフォンの音声入力を快適に行うための
ミックス・マイナス機能を搭載
PodTrak P4は48Vファンタム電源供給可能なので、コンデンサー・マイクも接続可能となっています。入力端子は、4つのマイク・イン(XLR)を背面に装備。本体上部ゲイン・ノブの下にはダイナミック・マイク/コンデンサー・マイクの入力切り替えスイッチが備えられ、ch3に関してはスマートフォン接続用のTRRSミニ端子への切り替え、ch4には内蔵オーディオ・インターフェース用USB Type-C端子への切り替えも用意されています。その下のMUTEキーは、点灯していると音が出力されません。同社のほかの機種では録音できるトラックのボタンが点灯するという仕様が多いので、注意が必要です。
前面には4つのヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)を装備し、4つのマイク・インとサウンド・パッド(後述)のプレイバック内容をミックスしたマスターを出力します。各出力にボリューム・ノブが付いているので個別に音量が調整できて便利です。このヘッドフォン・アウトは、小型ビデオ・スイッチャーに出力しても問題無いと思います。
前述の通り、ch3とch4にはマイク以外の入力が選択可能。ch3には側面のTRRSミニ端子(前述)からスマートフォンの音声出力がライン・インL/Rとしてインプットできます。その際、PodTrak P4からスマートフォンへ戻る音声にはスマートフォンからの入力が除かれます。そのため、音声がフィードバック・ループするのを防ぐことができるミックス・マイナス信号のやり取りが可能になり、ハウリングなどを起こさずに通話先の人とやり取りできます。今回は試せませんでしたが、別売りのBTA-2アダプターを使用したBluetooth接続も可能。個人的にはマストなオプションです。また、スマートフォン接続時にはゲイン・ノブが、スマートフォン入力のボリューム・ノブとして機能します。
ch4は、USB Type-C端子経由で接続したコンピューター(Mac/Windows)やスマートフォンからの音声入力が可能で、USBオーディオ・リターンを立ち上げられるステレオ入力として機能します。コンピューターと接続すると2イン/2アウトのオーディオI/Oとして認識。この場合、コンピューター経由でゲストと音声のやり取りが必要なときはミックス・マイナス機能を使い、BGM再生などの使い方では通常モードで使用することでPodTrak P4内の2ミックスをコンピューターやスマホへ戻せます。ミックス・マイナス機能の設定方法はMENUボタンを押してSettingsを選択し、USB Mix Minusを選ぶのみです。ちなみに、ch3とch4をステレオで使用しているときにもch1/2のマイク・インは機能します。
本体中央に設置されたサウンド・パッドは、ボタンに割り当てたステレオのBGM、ジングル、効果音を再生します。本体収録のプリセットを使うことも、SDカード内の任意の音をアサインすることも可能です。ボタンの下には、このパッド専用ボリューム・ノブを装備。ボタンを押す間のみのプレイバックやループ再生など、再生方式の変更も行えます。
16ビット/44.1kHzで録音可能
SN比も良く業務使用に耐えられるクリアな音質
PodTrak P4は、4つの入力をそれぞれ個別のトラックに録音できるほか、サウンド・パッドのプレイバック内容を独立したステレオ・トラックに録音したり、内蔵ミキサーでバランスを取った2ミックスを録音することができます。記録媒体はSDカード。16ビット/44.1kHzのWAVで録音可能です。これは、コンピューター接続時も同じです。サンプリング/ビット・レートを変更できない分、難しいことを考えず手軽に使えるとも思います。
実際にマイクを接続したところ、SN比も良くクリアな音で、業務使用に耐えられる音質です。またマイク・インの場合は、チャンネルごとにMic Settingsからローカットとリミッターを入れることができます。特にリミッターが強力で、ゲインをかなり上げてもひずみません。突然の大声にも対応してくれるのはありがたいです。ただ強力過ぎて、ゲインの上げ過ぎによる内蔵アンプでのひずみに気付きにくいため、実際に使用する際はオフの状態でゲインを適正にした後オンにするのをお勧めします。ローカットは、声に適切な値になっているので、常時オンのまま使用しても問題無いと思います。これら機能がこのサイズに収まっているのもすごいですが、単3アルカリ乾電池2本で4時間も駆動し、USB Type-C端子を介してモバイル・バッテリーでも動作するので、電源が取りづらい場所でも使用しやすい点は魅力です。また、USB Type-C端子の部分は鉄製のコネクター・プレートになっており、抜き差しに対しての耐久性を考慮している点にも好感が持てました。
最近はやりのポッドキャスト収録を行うには、これ以上無いほどの機能が備わっています。また、トーク主体のライブ配信番組に便利であろう機能も多く搭載しているので、あまり機材の操作が得意でない人でも手軽に使用できるのではないでしょうか。音量調整やミュートなどとっさの操作が必要な項目が、ボリュームやボタンで表に出ていてとても使いやすく設計されているなと思いました。ぜひ現状のクオリティ・アップを考えている方々は、手に入れて使ってみてほしいです。
森田良紀
【Profile】studioforestaを拠点として録音からミックス、マスタリング、撮影、配信まで行う。近年は長年の配信経験を生かして大森靖子、清春、ビッケブランカなどの配信を多数手掛けている。
製品情報
ZOOM PodTrak P4
オープン・プライス
(市場予想価格:22,727円前後)
SPECIFICATIONS
▪入力チャンネル:モノラル×4(うち2つはステレオに切り替え可能) ▪出力チャンネル:ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)×4 ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪オーディオ・インターフェース:16ビット/44.1kHz ▪電源:単3電池×2、ACアダプター、USBバス・パワー ▪記録媒体:SD/SDHC/SDXCカード ▪外形寸法:112mm(W)×47mm(H)×155mm(D) ▪重量:290g
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