「UJAM Symphonic Elements - Striiiings」製品レビュー:映画音楽の巨匠ハンス・ジマーによって録音されたストリングス音源

UJAMのストリングス音源「Symphonic Elements Striiiings」が登場

 筆者は、簡単に素早くトラックを作れるUJAM Beatmakerなどをデモ制作に使うことが多いですが、操作性が良く遊び心もあり、音色のクオリティが高いので、そのまま実際のトラックに使用することもしばしばあります。そういうわけで、常に注目しているUJAM製品。ストリングス音源Striiiingsは、どのようなものかと期待が高まります。

感覚的に作曲できる楽器のような操作性
Latchを活用しパラメーターを容易にコントロール

 まずStriiiingsを立ち上げ何も考えずに触ってみると、同社のこれまでの製品と同じく、弾きながら感覚的に曲やフレーズ作りができるという第一印象。他社でも類似製品は多数ありますが、本製品はパラメーターが1画面に収まっている上に、どこを押せばフレーズがどうなるかが明確なので、買ったその日に初心者でも説明書を読まずに使えるでしょう。映画音楽界の巨匠ハンス・ジマーが録音を手掛けたので、全体の音質は映画音楽の中でもヨーロッパ的というよりは、ハリウッド映画で聴くような華麗で壮大なサウンドです。

 

 画面構成は、下部がフレーズ生成のための鍵盤の割り振りやフレーズのStyleの選択などをするセクション。鍵盤部は右手にコード、左手にベース、さらに低音部でフレーズが変化するように割り振られています。左右それぞれ指一本ずつでも十分に操作可能ですが、Latchボタンを活用して演奏中に各種パラメーターをいじることも容易なので、もはや楽器と言っても過言では無い操作性です。ほぼ楽器とは言え、コードを抑えるだけで演奏できるので、鍵盤楽器の演奏が苦手な方でもリアルタイムに映画音楽のようなストリングスが奏でられます。

 

 フレーズのStyleはオーソドックスなものがそろっているので、制作する楽曲に合わせやすく、別のソフトでフレーズを足さずとも、Striiiingsのみで大編成のストリングスを表現可能。個性的なフレーズもいろいろあります。攻撃的なピチカートのフレーズなどはありそうであまり無かった感触の音で、アタック感もありさまざまな場面で使いやすそうです。

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画面左下のStyleメニューからは、約60種類のフレーズから演奏スタイルを選ぶことができる

原型を留めない変化も可能にするエフェクト
Focus EQで埋もれたパートの処理も行える

 上部はエフェクト・セクション。画面右で高音部、左で低音部、中央で全体の調整ができます。Striiiingsは、一聴するとポップスのアレンジの中に入れるより、単体で映画音楽的なオーケストラを表現するのに向いているように感じますが、その印象はこのエフェクト部で覆されます。かなり遊びが効いていて、さすがUJAM製品だと思わされました。高音部、低音部のCharacter FXにあるFUZZやBit Crushはストリングスの原型を残さないほどにかけることも可能。Filt Distはアレンジのアクセントとしてかなりインパクトを残せます。MotionFX内のFilterやエフェクトはDJミキサーのようなかかり方も多く、クラブ・ミュージック的な表現でも面白く使えそうです。Decayはストリングスの原型を留めないほど短くでき、シンセサイザーの一音色のようにも使えるでしょう。

 

 “これは便利”と感じたのはFocus EQ。Striiiingsのようにフレーズを生成するタイプのプラグインは、個別のパートごとのメロディは抜き出せないので、アレンジの中で埋もれた場合に別でEQを立ち上げて音を前に出す必要があることも多いですが、Focus EQを使うことでその作業が軽減されます。

 

 全体にかけるFinisher内のエフェクトは個性的。“Voodoo~”と名付けられた凶暴なディストーションや、シンセサイザーのような音になるFragmentsなど、フレーズの打ち込み後にオートメーションでこのパラメーターをいじると新しい音との出会いが生まれます。その左に位置するHighlighterはいわゆるフィルターで、オートメーションでもリアルタイムでの操作でも面白くなりそうです。総じて内蔵エフェクトのかかりがとても良く、映画音楽やストリングス音色以外の用途にも可能性を広げようという制作者の意志を感じます。

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画面中央に位置するFinisherは、全体に適用されるエフェクト。UJAMのエフェクト・プラグインFinisher NeoやFinsher Voodooに収録されたエフェクトの中から厳選されたものなどが含まれている

 楽曲を力強く彩る定番フレーズや個性的なフレーズを感覚的に生み出せる演奏セクションと、そのフレーズを時に凶暴で随一のサウンドに激変させられるエフェクト・セクション。“ストリングス音源”という常識にとらわれなければ、Striiiingsならではの表現ができるでしょう。いろいろな楽曲に、思いもよらない方法で映画音楽的なストリングスを入れられる可能性を秘めた新感覚の音源です。

 

おおくぼけい
【Profile】作編曲家/キーボーディスト。アーバンギャルドのメンバーとして活動するかたわら、戸川純 avec おおくぼけい、頭脳警察、大槻ケンヂのオケミスなどのプロジェクトにも参加する。

 

UJAM Symphonic Elements - Striiiings

15,990円(価格は為替レートによって変動)

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REQUIREMENTS  
▪Mac:OS X 10.11〜10.15(64ビット)、AAX/AU/VST対応のホスト・アプリケーション、INTEL CPU、APPLE Logicはバージョン10以降
▪Windows:Windows 8/10(64ビット)、AAX/VST対応のホスト・アプリケーション、INTEL CPU
▪共通:4GB以上のRAM、4.7GB以上のストレージ空き容量、インターネット環境およびE-Mailアドレス(オーソライズ用)

 

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