TOONTRACK EZ Keys 2 レビュー:充実の作編曲支援機能とオールマイティなサウンドを備えたピアノ音源

TOONTRACK EZ Keys 2 レビュー:充実の作編曲支援機能とオールマイティなサウンドを備えたピアノ音源

 TOONTRACKのEZシリーズと言えば、“イージー”という名の通り操作は手軽でも、本格的なサウンドを奏でられることで知られています。今回ご紹介するEZ Keys 2は、新たなピアノ音色はもちろんのこと、前バージョンのEZ Keysから充実していた作曲/編曲のサポート機能がさらに進化したピアノ音源。その多機能ぶりは特筆に値すると言えるでしょう。

FAZIOLI F212のサウンドを5種類のマルチマイクで収録

 本ソフトを起動するとまず現れるピアノ画面は、MIDIで演奏すると打鍵した鍵盤が沈むというグラフィックになっており、“グランド・ピアノを鳴らしている”というイメージが広がります。またちょっとしたことですが、コードを弾いたときに譜面台部分にコード名が大きく表示されるのが親切です。

 ピアノ音色としては、FAZIOLI F212を採用。叙情的で繊細なピアニッシモからアグレッシブでロックなフォルテまで表現できるオールマイティな音色です。表現したいタッチに対して確かに応えてくれる演奏性の高さも備えています。個人的には高音の感じがほかのピアノ音源に比べて良い意味で生々しい印象がありました。

 この音色はハンマー、ストリングス、オーバーヘッド、ルーム・アンビエンス、窓ガラスの反射によるアンビエンスという5種類のマルチマイクで収録されているため、細かく音色設定が可能です。古いジャズ、あるいはビンテージなバンド・サウンド、さらにはクラシックで必要とされるピアノ1台での説得力のある音色など、さまざまな場面に対して最適な音色を作れます。各マイクの音も個別に出力できるので、生ピアノをレコーディングしたときのようなこだわった音作りが可能です。とは言え、プリセットでもイメージを喚起する音色がそろっているので、すぐに作編曲に取りかかれそうです。

 EZシリーズと言えば、Groovesと呼ばれる充実したMIDIフレーズ集も大きな特徴の一つ。

Groovesではジャンルや演奏スタイルからMIDIフレーズを検索できるほか、Tap2Find(赤枠)を使って、マウスでタップしたり、MIDIキーボードから演奏することで、欲しいリズムのフレーズを探すことも可能

Groovesではジャンルや演奏スタイルからMIDIフレーズを検索できるほか、Tap2Find(赤枠)を使って、マウスでタップしたり、MIDIキーボードから演奏することで、欲しいリズムのフレーズを探すことも可能

 鍵盤が弾けなくてもさまざまなジャンルで使えるフレーズが詰まっているので、本格的なプレイヤーに演奏してもらったような編曲ができてしまいます。しかも、Groovesから選んだMIDIフレーズは、Edit Play Style機能で強弱や音の長さをノブで簡単に調節できるにとどまらず、なんとAmountノブを回すだけでフレーズの手数まで増減できるので、楽曲にぴったりのピアノ演奏を作ることができます。

Edit Play Styleでは、Amountノブ(赤枠)で手数を調整することができる

Edit Play Styleでは、Amountノブ(赤枠)で手数を調整することができる

 また、Groovesでの検索にはEZ Drummer 3にも搭載されているTap2Findが便利です。これはマウスでタップするか、MIDIキーボードで演奏すると、そのリズムに近いMIDIフレーズを検索してくれる機能。イメージに近いフレーズを効率よく探せるでしょう。

 EZ Drummer 3やEZ Bassにも搭載されているBandmate機能では、MIDIフレーズやオーディオ・ファイルを読み込むと、それに合ったMIDIフレーズを提案してくれます。試しにオーディオ・ファイルを読み込んでみたところ、検出精度が高く、思った以上に良いフレーズが提案されて編曲のイメージが広がりました。そのファイルに対するフレーズのマッチ度がパーセンテージで表示されるのですが、提案された中でマッチ度が低いものを合わせても、それはそれで新しい発見があるので自分の予想を超えた編曲ができます。

ジャンルに応じたコード進行の提案からスケール音のガイド表示まで可能

 作曲支援の機能としてはSuggest Chordsが重宝します。選択したジャンルに沿ってコード進行を提案してくれるのですが、試してみると、自分では思いつかないコード進行になったりするので、案外、創造力を刺激してくれます。

 ピアノロール画面(EZ Keys 2ではGrid Editorと呼びます)では、コードの構成音やさまざまなスケールを選択して、画面上にハイライト表示することができます。このハイライトをガイドにすれば、スケールから外れることなくメロディを作っていくことが可能です。しかも、単純にスケール名やジャンルで選ぶだけではなく、“Happy”や“Sad”といった雰囲気でも選ぶこともできます。

スケールはJazzやBluesなどのジャンルのほか、Happy、Sadなどの“雰囲気”で選ぶこともできる

スケールはJazzやBluesなどのジャンルのほか、Happy、Sadなどの“雰囲気”で選ぶこともできる

 さらにGrid Editorでは、Humanizeボタンをオンにすると、ペン・ツールで打ち込むだけで強弱が自動的に付くため、演奏感のある打ち込みが可能になります。

 このように、ピアノ音源としてしっかりとした音色を備え、作曲/編曲支援機能も充実しているEZ Keys 2。鍵盤演奏ができない方でも、レコーディングにプレイヤーを呼んで、細かな指示を出して演奏してもらっているかのようなフレーズを作成できるので、とても便利です。鍵盤奏者であっても多岐にわたるジャンルを網羅しているフレーズ集は苦手ジャンルへのアプローチの参考にもなります。また、Suggest Chordsなどを駆使して作曲段階で新しい可能性を手軽に試していけるので、今までの自分にはない作品を作る手掛かりになるかもしれません。

 創造力を刺激してくれつつ、さまざまな作業を短縮できる機能を備えたEZ Keys 2は鍵盤奏者ではない方に限らず、鍵盤奏者にも新しい可能性を与えてくれると思います。

 

おおくぼけい
【Profile】3人組テクノ・ポップ・バンド、アーバンギャルドのキーボーディスト。また作曲/編曲家として、映画音楽をはじめ大槻ケンヂや頭脳警察、戸川純らのアレンジャー/プレイヤーとしても活動。

 

 

 

TOONTRACK EZ Keys 2

22,000円

TOONTRACK EZ Keys 2

REQUIREMENTS
▪Mac:OS X 10.10〜macOS 13(macOS 11〜13はINTEL CPU/ARM対応)、64ビットのみ対応
▪Windows:Windows 10(64ビット)/11、64ビットのみ対応
▪共通項目:8GB以上のRAMを推奨、ブロードバンド・インターネット接続
▪対応フォーマット:AAX、AU、VST、スタンドアローン

製品情報

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