TOA ME-50FS レビュー:ラージスピーカーにも引けを取らない再現性を誇るニアフィールドモニター

TOA ME-50FS レビュー:ラージスピーカーにも引けを取らない再現性を誇るニアフィールドモニター

 TOAという文字を見れば誰しもがホール、会議室、イベントスペースなどの設備/音響機器のメーカーというイメージを浮かべることでしょう。実際に自分もそのような認識を持っていました。しかし今回、レコーディングスタジオで使用するのにふさわしい、とてつもなく素晴らしいニアフィールドのモニタースピーカーME-50FSが発表されました。試聴の際にメーカーの方からいろいろとお話を伺うことができたので、そんなことも含め、レビューを始めたいと思います。

付属の外付けユニットでインピーダンス補正が可能

 ME-50FSは、クラスDパワーアンプを搭載したニアフィールドのアクティブ・モニタースピーカー。2つのウーファーとツィーターによる2ウェイです。トランス、コンデンサー、抵抗などによる完全なパッシブ回路を持ったインピーダンス補正用の木箱のユニットが付属しています。

付属のインピーダンス補正ボックスとその接続ケーブル

付属のインピーダンス補正ボックスとその接続ケーブル

 まず外見ですが、幅が290mm、高さが383mm、奥行きは若干大きく342mmです。第一印象はとにかく高級感が前面に出ていて丁寧な作りだということ。重さは約15kgありますので、その点でもリッチな重厚感があります。

 エンクロージャーの素材はバーチの合板、付属しているインピーダンスの補正ユニットも同じくバーチの合板で作られています。濃いブラウンのウレタン塗装がとても良い趣を演出しています。スピーカーのフロントの上下には三角形のバスレフのポートが見て取れます。バスレフのポート自体もエンクロージャーと同じ素材のバーチで作られているということです。

 ユニットは、なんと100mmのコーン型ウーファーが2つと25mmのマグネシウムツィーターが1つという構成。この2つのウーファーには若干の角度が付いていて、3つのユニットは円周上に配置されています。これによって限りなくフルレンジのユニットに近づき、左右の位相や定位が理想的な設計となり、サウンドの高い再現性を実現しているようです。搭載しているアンプの出力は250W、全高調波ひずみ率は0.003%、最大出力音圧レベルは104dBになります。いずれもニアフィールドのモニターとしては全く問題ない値です。

 それはそうと、なぜTOAさんがこのような製品を作ったんでしょうか。開発者の方に単刀直入に聞くと“当初はこのようなニアフィールドのモニタースピーカーを目指したわけではなかった”という答えが返ってきました。実際のところは、1Hz、1dBの差を聴き分けられるようになることを目的に行われるTOA社員の耳のトレーニング=聴能形成用に開発するに至ったというのが発端だそうです。なので、どのようなソースであっても、色づけをせずにあるがままの信号を再生することが開発する際の使命だったようです。

フラットなサウンドで素直に音作りできる 音の距離感やリバーブの音像がよく分かる

 では、実際にサウンドをチェックしてみましょう。正直、今まで聴いてきた数あるアクティブ・モニタースピーカーの中でも最高のクオリティだと思いました。ただし、価格もそれなりなので合点がいくところではあります。

 個人的に非常に好印象なのが、すごくフラットなサウンドで色付けがないところ。素直に音作りができるのでありがたいの一言に尽きます。例えば、普段私が使っているモニタースピーカーなどですと“今こういうふうに聴こえているけど、本当はあんな感じのはずだ”といったように頭の中で差し引きをすることが多いです。ところが、このME-50FSはラージスピーカーと切り替えてモニターしてもなんら遜色がないと言えるほど、ラージスピーカーのようなサウンドを再現するのです。どうやったら100mmのウーファーでこれだけの再現性を実現できるのでしょうか。中の構造を疑ってしまいたくなるほどの素晴らしさです。とはいえ、もちろんローエンドや音の質量感はラージスピーカーとは違いますが、引けを取らないと個人的には言い切れます。

 実際に使用した感想としては、リズムの録音時にも十分なポテンシャルを持っていますし、ミックス作業にも有用で、マイクと楽器の距離感、リバーブの上下左右や奥行き感の表現が素晴らしいと思いました。ラージスピーカーのようなワイドな音像を備え、間近で音量を上げなくても作業ができるのは本当に画期的なことだと思います。宝くじがもし当選すれば……と考えてしまった今日この頃でした。

 

橋本まさし
【Profile】スタジオ・サウンド・ダリの代表を務めるレコーディングエンジニア。bird、エレファントカシマシ、ケツメイシ、大黒摩季、MISIA、土岐麻子、MONDO GROSSOなどの録音やミックスに携わる。

 

 

 

TOA ME-50FS

オープン・プライス

(市場予想価格1,980,000円前後/ペア)

TOA ME-50FS

SPECIFICATIONS
▪形式:2ウェイアクティブ ▪スピーカー構成:100mmウーファー×2+25mmツィーター ▪周波数特性:40Hz~24kHz(−6dB) ▪アンプ動作方式:クラスD ▪アンプ出力:250W ▪最大音圧レベル:104dB ▪消費電力:30W ▪外形寸法:290(W)×383(H)×342(D)mm(突起物除く) ▪重量:約15kg/1台

製品情報

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