MACKIE. MobileMix レビュー:モバイル・バッテリー駆動に対応したコンパクトな8chアナログ・ミキサー

MACKIE. MobileMix レビュー:モバイル・バッテリー駆動に対応したコンパクトな8chアナログ・ミキサー

 コンセントから電源を取らないといけない、という要件は電気で動く音響機器の宿命でもあります。特にアナログ・ミキサーにおいては、電池駆動ができる一部のモデルを除いてACアダプターで動作する製品がほとんどです。そんな中、MACKIE.からUSBバス・パワーで動作するMobileMixというミキサーが発表されました。コンセントからの給電ができない、いわゆるオフグリッドな環境での使用を意図して設計されたモデルです。これまでの小型アナログ・ミキサーとどのように異なるのかを見ていきましょう。

MACKIE.ならではのクリアなプリアンプ 効きの良い2バンドのシェルビングEQ

 まずは外観です。横から見るとL字型になっており、テーブルに置くとフロント・パネルが傾斜するデザインになっています。フェーダーは搭載されておらず、ノブとボタン、LEDインジケーターのみで構成されており、かなりスタイリッシュな見た目です。

MobileMixはL字型になっており、平らな場所に置いても操作がしやすいようにトップ・パネルが傾斜する。また、トップ・パネル上部にはスマートフォンやタブレットなどを立てかけることができる溝がある

MobileMixはL字型になっており、平らな場所に置いても操作がしやすいようにトップ・パネルが傾斜する。また、トップ・パネル上部にはスマートフォンやタブレットなどを立てかけることができる溝がある

 特筆すべきは背面部の開閉できるパネル。ここを開くと、市販のモバイル・バッテリーを収納できる空間とUSB-C端子の差し口があり、まるでバッテリー搭載ミキサーのように使用することができるのです。これにより、屋外などの電源が取れないような環境でも使用することができます。

背面にある市販のモバイル・バッテリーを収納できるスペース。持ち運びや入れ替えがしやすい設計になっている

背面にある市販のモバイル・バッテリーを収納できるスペース。持ち運びや入れ替えがしやすい設計になっている

 本体にバッテリーが組み込まれているわけではないので劣化を心配する必要がなく、予備で複数のモバイル・バッテリーを準備しておけば、随時交換して長時間の使用も可能です。逆に、電源が取れる環境ではリア・パネルのUSB-C端子から給電できるので、800gの軽量なミキサーとして活躍してくれます。

 インプットにはXLR/フォーン・コンボの入力が可能なチャンネルが搭載されています(CH1/2)。48Vファンタム電源の給電が可能なので、コンデンサー・マイクも接続できますし、ギターなどのHi-Z入力にも対応。加えて、ライン・レベルを想定したステレオの入力端子もあります(CH3/4)。プリアンプの品質は良く、ゲインも十分稼げる上に音質もクリアです。私は普段からMACKIE.のアナログ・ミキサーを愛用しており、MobileMixのプリアンプはそれらと遜色ないクオリティ。EQはハイ/ローシェルフの2バンドのみですが、効きも良く、必要十分に感じました。

 出力端子もスピーカー接続用途のメイン・アウト(フォーンL/R)に加え、独立して音量が設定可能なヘッドホン・アウト(ステレオ・フォーン)が2系統搭載されています。

リア・パネル。左から電源ボタンと給電用USB-C端子、メイン・アウト(フォーンL/R)、ヘッドホン・アウト×2(ステレオ・フォーン)、CH5/6イン(TRRSフォーン)、CH3/4イン(フォーンL/R)、CH2イン(XLR/フォーン・コンボ)、CH1イン(XLR/フォーン・コンボ)が並ぶ

リア・パネル。左から電源ボタンと給電用USB-C端子、メイン・アウト(フォーンL/R)、ヘッドホン・アウト×2(ステレオ・フォーン)、CH5/6イン(TRRSフォーン)、CH3/4イン(フォーンL/R)、CH2イン(XLR/フォーン・コンボ)、CH1イン(XLR/フォーン・コンボ)が並ぶ

 MobileMixにはオーディオ・インターフェース機能が搭載されておりません。しかしながら、後述するTRRS端子やBluetooth接続を用いた機能で、演奏や録音、配信が可能な環境を容易に構築することができます。特にスマホやタブレットでの使用が考慮されており、本体上部のくぼみにモバイル端末を立てかけることが可能。画面を見ながら操作することができるようになっています。

スマホやカメラを接続できるTRRS端子入力 無線でイン/アウト可能なBluetooth接続

 ここから紹介する機能がMobileMixの個性です。まずはスマホやカメラ接続用のTRRS端子。トップ・パネルの“PRIMARY”とリアの“CH5/6”の2系統があり、スマホで再生した音声をステレオでMobileMixに入力できるだけでなく、MobileMixのマスター・アウトをスマホ/カメラ側に送出することができます。例えばスマホでのライブ配信などをする際、MobileMixに入力したマイクやBGMのサウンドを配信に乗せることが可能なのです。しかも、2系統を同時に使えます。またスマホやタブレットはTRRS端子の有線接続だけでなく、CH7/8でのBluetooth接続でも音声のやり取りが可能。TRRS接続/Bluetooth接続ともにミックス・マイナス機能を備え、音声通話をしたときにフィードバックが起こらないのもポイントです。

 エフェクトのチャンネルも搭載しており、ポストフェーダー固定ですがCH1〜6からセンドすることができます。プリディレイのないプレート・リバーブ、芳醇な鳴りのホール・リバーブ、ボーカルにちょうど良いリバーブ+ディレイの合計3種のエフェクトを使用可能です。細かいパラメーター調整ができない代わりに絶妙なあんばいの設定になっており、用途によっては非常に重宝するでしょう。

 MobileMixはチャンネル数が少なめのPAはもちろんのこと、スマホでの配信や動画コンテンツの作成を行っている人のステップアップとしてもかなりお薦めできるミキサーです。スマホとMobileMixで整音と撮影/配信を同時に行うことができますし、トーク番組形式のポッドキャストなどでは対話相手がオフラインであれオンラインであれ、容易にミキサーへ会話音声を送ることができます。しかも、これらが電源ケーブルなしで実現可能。ユーザー/シーンによっては替えが効かないミキサーとなりそうです。

 

in the blue shirt
【Profile】有村崚のソロ・プロジェクト。Maltine RecordsやSecond Royalからのリリースを経て、2016年と2019年にアルバム、2020年には最新EPを発表。ドラマの劇伴やCM音楽も手掛ける。

 

 

 

MACKIE. MobileMix

オープン・プライス

(市場予想価格:34,760円前後)

MACKIE. MobileMix

SPECIFICATIONS
▪インプット:XLR/フォーン・コンボ×2(CH1、CH2)、フォーンL/R(CH3/4)、TRRSフォーン×2(PRIMARY、CH5/6)、Bluetooth(CH7/8) ▪アウトプット:フォーンL/R(メイン・アウト)、ステレオ・フォーン×2(ヘッドホン・アウト) ▪エフェクト:PLATE/HALL/REVERB+DELAY ▪電源:電源アダプター、USBバス・パワー(モバイル・バッテリー対応) ▪外形寸法:201(W)×75(H)×175(D)mm ▪重量:800g

製品情報

関連記事