HK AUDIO Sonar 112 XI レビュー:専用アプリで内蔵DSPを遠隔操作できるパワードPAスピーカー

HK AUDIO Sonar 112 XI レビュー:専用の無料アプリで内蔵DSPを遠隔操作できるパワードPAスピーカー

 今回レビューするのは、ドイツを本拠地とする音響機器メーカー、HK AUDIOからリリースされており、このたび国内でも取り扱いが始まった12インチ・ウーファー搭載の2ウェイ・パワードPAスピーカー、Sonar 112 XIです。

低域12インチでアンプ出力は最大1,200W

 HK AUDIOについて、“何となく名前は聞いたことがあるよ”という皆さんのためにご紹介しておきますと、1979年にドイツ南西部の小さな店で独自のスピーカー・キャビネットの生産を開始したのが始まりとのこと。そのクラフトマン・シップと製品の質の高さが評判を呼び、次第に規模を拡大して、現在はヨーロッパを中心にシェアを広げ、多くのホールなどに採用されているそうです。

 そんなHK AUDIOが展開するSonarシリーズは、ポイント・ソースのパワード・スピーカー。3系統の入力を備えているほか、DSP内蔵で、EQなどが可能な点が特徴です。本機のほかにウーファー・サイズ違いで、10インチのSonar 110 XI(49,800円)と15インチのSonar 115 XI(67,800円)をラインナップ。さらに、これらと組み合わせて使用できるパワードのサブウーファー、Sonar 115 Sub D(79,800円)も用意されています。

 では112 XIについて紹介していきます。ダンボール箱から取り出してサイズを確認してみると、365(W)×629(H)×355(D)mmと12インチ・スピーカーとしては大きめ。しかし、重量は15.9kgなので、一人でもスピーカー・スタンドに取り付け可能でしょう。スピーカー構成は12インチ・ウーファーと1インチのHFドライバー(ボイス・コイルは1.35インチ)で、ホーンの指向性は90°×60°、パワー・アンプの最大出力は1,200W、最大音圧レベルは127dBと十分な出力です。なお、前面はグリルに覆われているのでスピーカーは見えません。電源を入れると、HK AUDIOのロゴ・プレートの上くらいにLEDランプが付いているのが分かります。

 背面には、カラー液晶ディスプレイがあります。小さめですが視認性はとても良いです。ディスプレイの横にはマスター・ボリュームのノブがあり、これは押し込むと内蔵DSPによるEQやハイパス・フィルターなどの設定を行うノブとしても機能します。

リア・パネル。上段には内蔵DSPの設定を行うためのカラー液晶ディスプレイとマスター・ボリュームのノブがあり、このノブは押し込むことでEQなどの設定用としても使える。その下にはCH1/2/3の入力音量を設定するノブが並ぶ。CH1/2にはマイク/ラインの切り替えスイッチとXLR/TRSフォーンのコンボ・ジャック、CH3にはステレオ・ミニ入力端子を装備。その下にはMix Out(XLR)が用意されている

リア・パネル。上段には内蔵DSPの設定を行うためのカラー液晶ディスプレイとマスター・ボリュームのノブがあり、このノブは押し込むことでEQなどの設定用としても使える。その下にはCH1/2/3の入力音量を設定するノブが並ぶ。CH1/2にはマイク/ラインの切り替えスイッチとXLR/TRSフォーンのコンボ・ジャック、CH3にはステレオ・ミニ入力端子を装備。その下にはMix Out(XLR)が用意されている

 これらの下には3系統の入力用ボリューム・ノブが並び、CH1とCH2の下にはマイク/ライン切り替えスイッチとXLR/TRSフォーン入力用のコンボ端子を装備。CH3は、ステレオ・ミニ入力端子とBluetooth 5.0対応のチャンネルです。スマホからカラオケを再生し、本機にマイクをつないで歌うなんてシンプルな接続も可能。さらにCH3の下には、全入力をミックスしてほかのスピーカーに出力するためのMix Out(XLR)も用意されています。全体的にシンプルで分かりやすいパネル構成です。

Live、DJ、Monitorの3つの出力モードを搭載

 このSonarシリーズにはiOSやAndroidのタブレットやスマートフォン用の無料リモート・コントロール・アプリ、Sonar Remoteが用意されています。筆者もAPPLE iPhoneにダウンロードしたところ、簡単に本機とBluetooth接続できました。

iOSおよびAndroidで動作する無料のリモート・コントロール・アプリ、Sonar Remote。上の画面はEQとハイパス・フィルターのページ。これらの設定はシーンとして保存/呼び出しが行える。また、前面グリル内のLEDランプのオン/オフやBluetoothペアリングなどもアプリから可能だ

iOSおよびAndroidで動作する無料のリモート・コントロール・アプリ、Sonar Remote。上の画面はEQとハイパス・フィルターのページ。これらの設定はシーンとして保存/呼び出しが行える。また、前面グリル内のLEDランプのオン/オフやBluetoothペアリングなどもアプリから可能だ

 背面の液晶ディスプレイとノブ、あるいはSonar Remoteからコントロールできる内蔵DSPでは、各インプットに3バンドEQとハイパス・フィルターが搭載されています。このEQは、高域は7.5kHzのシェルビング・タイプで、中域は2.5kHz、低域は100Hzのそれぞれピーキング・タイプ、ゲインは±12dBの増減が可能と使いやすいものです。ハイパス・フィルターは20〜400Hzで設定できます。

 出力には音楽再生に適したLive、低域重視のDJ、中域重視のスピーチなどに適したMonitorという3つのサウンドモードを用意。Sonar Remoteを使えば、これらの切り替えやボリューム調整を手元で行えます。本機から離れた場所で音を聴きながら調整できるので、とても便利です。しかも、気に入った設定はシーンを作って保存できるため、毎回イチから調整する必要がありません。実用的な設定をすぐに呼び出せるのはとても利便性が高いと言えるでしょう。

いずれのサウンドモードも素直な印象。内蔵アンプにも余裕が感じられる

 チェックにあたっては、まず弊社倉庫にてなじみの音源を再生してみました。サウンドモードを聴き比べてみると、DJは資料通りの低域ブーストで、Monitorは低域がカットされている模様、Liveは低域と高域がともに緩やかにブーストされているようでした。こうした違いはあるものの、音質自体は共通して素直な印象。何となく、派手めだったり、高域多めを想像していたのですが、良い意味で裏切られました。

 基本的な使い方が分かったところで、実際の現場に持ち込みチェックしてみました。今回は市民文化会館クラスの小ホールにてのライブ。間口6間ほどの舞台で、メイン・スピーカーの横にスピーカー・スタンドで立てて、サイド・フィルとしてセットで使用しました。

筆者がライブ会場でサイド・フィルとして使用した様子。右のスタンドに設置しているのがSonar 112 XI。使い勝手、音質ともに良好で、ミュージシャンからの評判も上々だった

筆者がライブ会場でサイド・フィルとして使用した様子。右のスタンドに設置しているのがSonar 112 XI。使い勝手、音質ともに良好で、ミュージシャンからの評判も上々だった

 マイクを使ってのワンツー・チェック、ウェッジ・モニターやFOHスピーカーとのゲイン調整、EQ調整などはすべて手元のiPhoneからコントロール。スムーズにチューニングを進められ、またミュージシャンからの評判も良く、ステージ上の良好なモニタリング環境構築に貢献してくれました。

 本機は程よい大きさや1,200Wのパワー・アンプから余裕が感じられる製品です。空間への音なじみや使い勝手が良く、難しいハウリング・ポイントもありません。今回はサイド・フィルとして使用しましたが、機会があればイベント現場などでのFOHスピーカーとして使用してみたいと思いました。

 

井上朗
【Profile】1989年にイノックスサウンドデザインを設立。日本初の西武球場コンサートを手掛け、長年にわたりスタジアム〜アリーナ級からライブ・ハウスに至るまでのPAオペレートを担当している。

 

HK AUDIO Sonar 112 XI

57,800円

HK AUDIO Sonar 112 XI

SPECIFICATIONS
▪最大音圧レベル:127dB(ピーク@10%THD)、130dB(計算値) ▪周波数特性:58Hz〜18kHz(±3dB)、54Hz〜20kHz(−10dB) ▪アンプ:出力/1,200W(ピーク)、タイプ/クラスAB+D ▪外形寸法:365(W)×629(H)×355(D)mm ▪重量:15.9kg

製品情報

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