Hercules DJCONTROL STARLIGHT レビュー:フランスのDJ機器ブランドによる最小級のserato DJ対応コントローラー

Hercules DJCONTROL STARLIGHT レビュー:フランスのDJ機器ブランドによる最小級のserato DJ対応コントローラー

 20年続くフランスのDJ機器メーカーHercules(ハーキュリーズ)の国内取り扱いが、昨年10月からついに始まりました。今回紹介するDJCONTROL STARLIGHTは、seratoのserato DJ Liteやserato DJ Pro(有償)などに対応する、同社で最小のコントローラーです。ダフト・パンクをはじめ、デヴィッド・ゲッタ、DJスネイクなどを輩出し、クラブミュージック・シーンに世界的な影響を誇るフランス発のDJコントローラーがどれほどの実力か、早速見ていきましょう。

約4.5cm径ジョグホイールはスクラッチにも対応 移動中でも選曲の仕込み~つなぎの練習が可能

 まず仕様から見ていきたいと思います。DJコントローラーで最も小さい部類であるDJCONTROL STARLIGHTの筐体は、幅34cmに奥行き10cm。縦置きにしたターンテーブルのTechnics SL-1200のカバー上に乗せてもはみ出ることなく置けるのは計算されて作られている印象で、どのような環境でも置き場所に困ることがなさそうです。

 本体右側にヘッドホン端子(ステレオミニ)、左側にマスター出力(ステレオミニ)端子と、コンピューターと接続するためのUSB Mini-B端子があります。

本体右には、ヘッドホン出力(ステレオミニ)を搭載する

本体右には、ヘッドホン出力(ステレオミニ)を搭載する

本体左には、コンピューター接続用のUSB Mini-B端子とマスター出力(ステレオミニ)を搭載。底面にはLEDライトを備える

本体左には、コンピューター接続用のUSB Mini-B端子とマスター出力(ステレオミニ)を搭載。底面にはLEDライトを備える

 DJ機器が常設されている現場での使用を想定すると、マスター出力からDJミキサーのライン入力あるいはAUX入力に接続するのが一般的になると思いますので、持ち運ぶ際にはステレオミニ/RCAピンのケーブルを別途用意した方が良さそうです。

 DJCONTROL STARLIGHTにはserato DJ Liteが付属。これからDJを始める方でもすぐ環境が整います。serato DJ Proへの有償アップグレードも可能で、筆者は愛用する有償版のserato DJ Proでテストを行いました。本機はUSBバスパワー駆動のため、コンピューターに接続すると電源なしですぐに使用できます。別のオーディオインターフェースを使っているserato DJユーザーも、DJCONTROL STARLIGHTがあれば移動中や楽屋などで選曲の仕込みからつなぎの練習までできるので、それだけでも有用な製品に感じます。

 続いてレイアウトを見ていきたいと思います。直径4.5cm程度のジョグホイールは、VINYLボタンをオンにするとスクラッチにも対応。外側にはTEMPOコントロール、下部には楽曲のテンポを自動で合わせるSYNCボタン、スタート位置を固定するCUEボタン、スタート/ストップボタンと、DJプレーヤーでなじみのあるボタンが並びます。各デッキに4つずつあるパッドは、楽曲にマーキングをするHOT CUE、LOOP、FX、SAMPLERにそれぞれ切り替えて使用することが可能です。中心下部にあるクロスフェーダーのカーブは、serato DJのソフトウェア内でロングミックス向けの緩いカーブからスクラッチ向けの急なカーブまで調整できます。この辺りはほかのDJコントローラーと同様で、DJであれば説明を受けずともサクサクと操作ができそうです。

 続いてチャンネルノブを見ていきます。一般的なDJミキサーやDJコントローラーでは、各チャンネルで上から順に、トリム、3〜4バンドEQ、フィルター、フェーダーと並ぶものが多いですが、本機はサイズの都合か、VOLUMEノブとBASS / FILTERノブの2つがレイアウトされています。

各デッキにはVOLUMEノブとBASS / FILTERノブを搭載。BASS / FILTERノブは、本体上部のBASS / FILTERボタンを押すことで、低域のEQ(増減)をコントロールするBASSモードとFILTERモード(ハイパス/ローパス)を切り替えて併用する仕様になっている

各デッキにはVOLUMEノブとBASS / FILTERノブを搭載。BASS / FILTERノブは、本体上部のBASS / FILTERボタンを押すことで、低域のEQ(増減)をコントロールするBASSモードとFILTERモード(ハイパス/ローパス)を切り替えて併用する仕様になっている

 VOLUMEノブは後述しますが、トリムというよりフェーダーのような感覚で、+方向に振り切りで扱うのが良いと思います。BASS / FILTERノブは、本体上部中央にあるボタンで切り替えると低域のEQまたはフィルターとして使用可能です。この辺りは実用的な機能をうまく抜粋した印象です。

低域に押し出し感のあるダンスミュージック向けの音質 パッドを使ったエフェクト操作でトリッキーなプレイも

 それでは実際にDJCONTROL STARLIGHTを試してみましょう。曲を再生してまず驚いたのが、本体底面のLEDライトが楽曲のテンポにシンクロして赤や青に光り、テンションを上げてくれたことです。この華やかさ、かわいらしさはこれまで筆者が触れてきたDJ機器にはない発想で、気持ちが明るく盛り上がるというのはまさにDJの本質的な精神であり、重要な部分だと思わされました。

 クラブでの使用を想定し、本機のマスター出力をDJミキサーのライン入力に接続して再生してみました。クラブでDJ交代した直後の1曲目の音量が小さいとフロアのテンションが下がってしまうので、使う機材の出力レベルを把握しておくことは非常に重要です。serato DJ内の楽曲を、DJミキサー内蔵のオーディオインターフェースを使い、トリムを11時の位置で再生した場合の音量に対して、本機はMASTERノブ、VOLUMEノブを共に最大に振り切り、DJミキサーのトリム位置を1時くらいにして再生した場合に聴感上同じくらいの音量になる感じがしました。ヘッドホンのボリュームは11〜12時の位置で十分な音量が得られたので、大きな会場でも安心してモニターできると思います。

 肝心のサウンド面ですが、価格が1桁違う機種と比べると解像度の違いはあるものの、低域に押し出し感のある、ダンスミュージック向けの音質に感じました。ホームパーティなどの小さなサウンドシステムでもしっかり鳴らせるようにチューニングされていると思います。

 操作感はとても好印象で、パッドはサイズが大きいので誤って隣のボタンを押してしまうような誤動作もなさそうです。押している間だけ動作するFXにはserato DJの内蔵エフェクトがアサイン可能。Echo Outなどの飛ばし系エフェクトや、いわゆるROLL効果を得られるRepeaterなど、トリッキーなプレイも難なく対応します。触りはじめは縦フェーダーがなく少し違和感のあったボリュームノブも、慣れるとロータリーミキサーを扱うようにロングミックスを楽しめました。

 近年のDJシーンはクラブという場所に限定せず、さまざまな場所でDJする機会が多くなっています。リュックに入れても負担にならないサイズで、どこでもパーティーを演出する。その可能性を、DJCONTROL STARLIGHTは十分に秘めていると感じました。

 

HIRORON
【Profile】ヒップホップを中心とした作品を手掛けるエンジニア/プロデューサー/DJ。SKY-HI、Lead、おかもとえみ、KEN THE 390、Aile The ShotaなどのバックDJ/マニピュレーターとしても活動。

 

 

 

Hercules DJCONTROL STARLIGHT

オープンプライス

(市場予想価格:17,800円前後)

Hercules DJCONTROL STARLIGHT

SPECIFICATIONS
▪接続:USB Mini-B ▪デッキ数:2 ▪ビットレート/サンプリング周波数:24ビット/44.1kHz ▪対応ソフトウェア:serato serato DJ Lite、有償でserato DJ Proへのアップグレードにも対応 ▪外形寸法:340(W)×49(H)×100(D)mm ▪重量:0.5kg

製品情報

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