フックアップが運営するオンライン・ストアのbeatcloudから、注目のソフトをピックアップする本コーナー。今回レビューするのは、アメリカのピアノ・メーカーRAVENSCROFTのフラッグシップ・モデルModel 275をサンプリングしたピアノ専用ソフト音源、VI LABS Ravenscroft 275です。Mac/Windows対応のソフト音源UVI Workstation(無償)または同社のソフト・シンセ/サンプラーFalconで動作し、AAX/AU/VSTプラグインおよびスタンドアローンとして使用できます。それでは、詳しく見ていきましょう。
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ミキシングも行える4つのマイク・ポジション・フェーダーを搭載
アリゾナ州にあるRAVENSCROFTは、ジャズ・ピアニスト/作曲家のボブ・レーベンスクロフトと、ピアノ調律師/技術コンサルタントとしてFAZIOLIやYAMAHA、STEINWAY、BALDWINでも働いた経験を持つミカエル・スプリーマン氏によって2004年に設立されたピアノ・ブランド。同社が作るグランド・ピアノは完成までに1,000時間以上かかると言われており、部品素材、設計、組み立てなど細部に至るまで非常にこだわり抜かれているようです。
今回紹介するVI LABS Ravenscroft 275は、RAVENSCROFTも公認するソフト音源。同社のグランド・ピアノModel 275をVI LABSの独自技術でフル・サンプリングしており、収録サンプル数は約17,000です。
メイン画面右上にある“歯車アイコン”をクリックすると、マイク・バランスやリリース、ノイズ、共鳴、リバーブ、そしてサステイン・ペダルやウナ・コルダ(ソフト・ペダル)、ミュート音などのCC割り当てなど、詳細設定が可能な“アドバンスド・セッティング”画面が出現(画面①)。画面左側にはRELEASE VOLUMEのほか、PEDAL NOISE、KEY NOISEなど、より臨場感を加えるためのパラメーターを、同右側にはPEDAL RESONANCE、TRUE PEDAL ACTION、REPEDALなどペダルに関するパラメーターを搭載しています。
そして、画面両サイドの下段部分にはステレオ・ワイドやIR(インパルス・レスポンス)を土台としたリバーブ・エフェクトなどがあり、まさにピアノに関するあらゆる音作りがこの画面で可能だと言えます。
また、画面中央には4つのマイク・ポジションのレベルを調整できるフェーダーをそれぞれ装備。ピアノ内部に設置され、ピアノ音そのものを収録したCLOSE、ピアノから少し離れた場所に設置され、部屋鳴りを含んだROOM、演奏者のポジションに設置されたPLAYER、ピアノの側面に設置されたSIDEという構成です。それぞれを使い分けたり、好みのバランスでミックスすることで、ソロ・ピアノ仕様、アンサンブル仕様など、さまざまな演奏シーンに対応するサウンドを作ることができるでしょう。
画面右上の“音叉アイコン”をクリックすると、チューニング画面になります(画面②)。画面上部にあるプリセット・メニューには“平均律/純正律/ピタゴラス音律”など5種類が用意され、それぞれの音をCENTSもしくはRATIOでチューニングすることが可能です。
また“音叉アイコン”の右隣にある“棒グラフ状のアイコン”をクリックすると、ベロシティ画面が出現(画面③)。ベロシティ・カーブのカスタマイズが行えて、手持ちのMIDIキーボードの特性に合わせてセッティングすることが可能です。
弦同士の共鳴をシミュレーションするSYMPATHETIC RESONANCE
それではRavenscroft 275を演奏してみましょう。そもそもRAVENSCROFTのピアノはレーベンスクロフト氏のためのカスタムメイドから始まったこともあるため、このRavenscroft 275もジャズ・ピアノのリリカルさやシャープさ、温かさに重きを置いたサウンドに。特に鍵盤を強打したときにきらめく高域の倍音感や、コードを押さえたときの共鳴具合やボトムの力強さなどは、STEINWAYなど世界を代表するピアノ・サウンドと勝るとも劣らない表現力です。
次はRavenscroft 275の特徴の一つである、SYMPATHETIC RESONANCEを試してみましょう。これはピアノの表現には欠かせない“共鳴”をシミュレーションする技術。まずは、アドバンスド・セッティング画面右端の中段にあるSYMPATHETIC RESONANCEの値を上げます(画面④)。そして左手で基音を押さえながら右手でスケールを演奏してみると、倍音列の音高でハーモニクスが共鳴するのが感じられるでしょう。
さらに特筆すべきは、同画面右上にあるPEDAL RESONANCE(画面⑤)。サステイン・ペダルを踏んだ状態で鍵盤をたたくと、それ以外の鍵盤の弦も共鳴してリバーブのような効果が出ることがあるのですが、それをこのPEDAL RESONANCEでシミュレーションすることが可能です。パラメーター値を上げていくほどより生々しいサウンドになりますが、大胆に上げ過ぎたとしても“音楽的な鳴り”にとどまってくれるところが筆者としては好みでした。
興味深いのはSILENT STRIKE(画面⑥)。非常に弱い力で鍵盤を押した際、“ハンマーが弦に触れる音”をシミュレーションすることが可能です。また、同じ鍵盤を連続して鳴らしたときの音の変化を調整できるREPETITION STRIKESもお薦め(画面⑥)。オケ中で使う分にはこれらの有り無しは判別しにくいかと思いますが、こういった細部までこだわることがピアノ・サウンド全体の質感を上げてくれます。
個人的に重宝すると思ったのは、画面左下にあるSTEREO WIDTHやTONE、そしてTIMBRE SHIFT(画面⑦)。例えばソロ・ピアノの楽曲ではSTEREO WIDTHを最大に、逆にバンドなどの楽曲であれば小さい値にして定位感を調整したり、TONEやTIMBRE SHIFTを駆使して音色をエレピっぽくするなど、音楽ジャンルや状況に合わせて多彩なサウンド・メイキングが可能です。搭載エフェクトの一つであるコンボリューション・リバーブには、ルームからホール、チャーチ系に至るまで22種類もプリセットがあり、いずれもピアノの音色に彩りを与える高品位なリバーブとなっています。
このように、本格的にピアノを再現しながらCPU負荷もそこまで高くないのがうれしい点。経験豊富なピアノ技術士であるスプリーマン氏ならではのマニアックな視点と、高い音楽性を持ったピアニスト、レーベンスクロフトならではの音に対する美学、そしてVI LABSの技術力が非常にバランス良く融合されたソフト音源だなと思います。美しいピアノの音をぜひ試してみてはいかがでしょうか。
VI LABS Ravenscroft 275
価格:22,080円
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Requirements
■Mac:OS X 10.9以上(64ビット)
■Windows:Windows 8以上(64ビット)
■共通:6GBの空きディスク容量、UVI Workstation 2.5.8以上またはUVI Falcon、INTEL Core2 Duoプロセッサーを搭載したコンピューター、7,200回転仕様のハード・ディスク(SSD)、4GB以上のRAM
牧戸太郎
中学時代より宅録を始める。東京音楽大学を卒業後に作編曲家として活動を開始し、ドラマや映画音楽のほか、竹内まりや、Hey!Say!Jump、King & Princeなどの編曲も手掛けている。