A.G.O(CIRRRCLE) - Beat Makers Laboratory Japanese Edition Vol.21 〜皆の体が自然に動き出すようなビートを作ることそれが僕のモットーなんです

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【Profile】グローバル版Spotifyのプレイリスト“New Music Friday”へのピックアップを機にブレイクした3人組ヒップホップ・クルーCIRRRCLEのプロデューサー/DJ。近年ではChara+YUKIやSIRUP、FLEURなどへの楽曲提供/リミックスも行っている。

 

Besty

Besty

  • CIRRRCLE
  • R&B/ソウル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 『BESTY』
CIRRRCLE
(Suppage Records/SPACE SHOWER MUSIC)

 

 

東京とロサンゼルスを拠点に活動する、3人組ヒップホップ・クルーCIRRRCLE。2019年には“Red Bull Music Festival Tokyo and 88rising present: Japan Rising”への出演を果たし、近年ますます注目を浴びている。グループのビート・メイカー=A.G.Oは、ヒップホップやトラップのビートに、ファンキーかつブルージーなギターやシンセの上モノが展開するサウンドを得意としている。今回は、そんな彼へのインタビューをお届けしよう。

Soulectionの音楽に衝撃を受けて
ビート・メイカーになろうと思った

■キャリアのスタート

 音楽を始めたのは、中学2年生のころ。学園祭がきっかけでロック・バンドを組むことになり、ギターを買ったんです。もっとうまくなりたいと思って『ギター・マガジン』を読み、ブルースやファンク、ハードロックなどの音楽ジャンルにもチャレンジしました。しかし、大学1年目の学園祭でダンスに魅了されてからは、4年間ダンスに明け暮れる生活になりましたね(笑)。卒業後は、仕事の傍らファンクや90'sヒップホップのDJをやっていました。ビート・メイカーになろうと思ったのは2013年辺り。SoundCloudで曲をディグっていたら、たまたまSoulectionの音楽に出会ったんです。Soulectionは、ロサンゼルスを中心とするプロデューサーやDJたちが立ち上げたコレクティブ/音楽レーベルなんですが、彼らが手掛けたゴールドリンクのアルバム『The God Complex』を聴いて“めちゃくちゃ音が格好良い!”と衝撃を受けました。それから一気に音楽制作に関するソフトや機材を買い、YouTubeを見てビート・メイクを勉強し始めたんです。

 

■ターニング・ポイント

 2016年の秋に、アンダーソン・パークが初来日したのでコンサートを見に行きました。そこで友人からAmiide(vo、rap)を紹介され、お互い音楽の趣味が合ったので仲良くなったんです。そしたら、彼女がSoundCloudに上げていた自分のインストゥルメンタル・トラックに歌を乗せてくれて、それがとても良くて驚きました。その後、Amiideの友人であるJyodan(rap)もそこにラップで参加し、それから3人で曲を作っては音楽配信サービスのTuneCore Japanを通じてリリースをするようになったんです。最初にCIRRRCLEが世の中に大きく知られるようになったきっかけは、2018年に「Fast Car」という曲がグローバル版Spotifyの“New Music Friday”というプレイリストにいきなり載ったこと。そこから一気に注目され始め、現在に至ります。

 

■機材の変遷

 バンドを始めたときは、FENDER Stratocasterにギター・アンプはMARSHALL、エフェクト・ペダルはBOSSという感じです。ちなみにオリジナル曲は、8trデジタルMTRのBOSS BR-600で録っていました。ビート・メイカーを目指したときに買ったのは、オーディオI/OのNATIVE INSTRUMENTS Komplete Audio 6、ビート・メイク用のNATIVE INSTRUMENTS Maschine MK2、モニター・スピーカーのYAMAHA MSP5 Studioです。DAWはABLETON Liveで、割と早く使えるようになりました。

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都内にあるA.G.Oのプライベート・スタジオ。半地下にある物件で、広さは約5畳。メイン・マシンはAPPLE MacBook Proで、DAWはABLETON Live、モニターはYAMAHA HS7を使用している。写真中央の手前側に見えるMIDIキーボードは、IK MULTIMEDIA iRig Keys。その奥には、Live専用コントローラーABLETON Push 2が置かれている。写真左側には、アナログ・モデリング・シンセのKORG MicroKorg XL+をセット。ロジャー・トラウトマンが好きで購入したのだそう

■モニター環境

 スタジオは半地下物件で窓は二重なので、昼夜問わず音漏れは心配ありません。メイン・モニターはYAMAHA HS7で、サブウーファーのYAMAHA HS8Sも使っています。購入したきっかけは、ロサンゼルスに住むあるプロデューサーに、“HS7で格好良く鳴らせないなら、どのスピーカーで聴いてもだめだ”と言われたから。ときどき開放型ヘッドフォンのSENNHEISER HD650でモニタリングもします。外で音楽を聴いたり作ったりするときは、インイア・モニターのSHURE SE846を使いますね。これは音が群を抜いて良いんです。

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ミックス・チェック時に用いる開放型ヘッドフォンSENNHEISER HD650(写真左)と、レコーディング時に使用する密閉型ヘッドフォンYAMAHA HPH-MT8(同右)

ビートとして成立するなら何でもあり
それがビート・メイクの面白いところ

■ビート・メイクのインスピレーション

 アイディアが降ってきますね(笑)。めちゃめちゃいっぱい曲を聴くことが大事なんです。そうすると“そういえばあの曲のあの音良かったな”ということを、寝る前や入浴中によく思い出すので、そこから曲に発展させていきます。

 

■CIRRRCLEにおける曲作りの手順

 大きく分けて2つあります。僕が作ったビートをAmiideとJyodanに送るパターンと、彼らが適当なビートに乗せて録音した歌やラップを受け取り、それらを元に僕が曲に発展させていく手法です。どちらかというと後者はリミックスみたいな感じ。既に歌詞があるので、いろいろなアイディアが湧きます。

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仮歌用として常設しているコンデンサー・マイクMXL V67G。CIRRRCLEの最新作『BESTY』を除く、これまでの作品に使用してきたという。V67Gに装着されているのは、ポップ・フィルター(写真は取り外した状態)と吸音材を兼ね備えるKAOTICA Eyeball

■ビート・メイクの醍醐味

 音作りが自由なところ。例えばドラムをやっていた人だと、まずドラム・セットを前提にしてパターンを考えると思いますが、そもそもビート・メイクではその観念がありません。ドラム・キットの中に、ノイズや変な音が入っていてもビートとして成立すれば問題無いので、自由な発想でビートが作れるんです。ここがビート・メイクをやっていて一番面白いところですね。

 

■サンプル選びのコツ

 基本的にドラムとサブベースには、サンプルを使います。キックのサンプル選びの際によくやるのは、サブウーファーに手をかざすこと。空気の振動を手のひらで感じることで、ローエンドがどのくらい出ているかどうかを“体感”で確認するんです。EQの周波数特性グラフを見るのもいいですが、体感も参考になります。サンプルはWebサービスのSpliceのほかに、自動マスタリングWebサービスで有名な、LANDRが手掛けるサンプル・パックもハイクオリティなのでお薦めです。

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メイン・デスクの下には、サブウーファーYAMAHA HS8Sを装備する

■使用ソフト音源とプラグイン

 SPECTRASONICS TrilianやOmnisphere 2を、生ベースやシンセ・ベースに使います。また、パッド・シンセにはNATIVE INSTRUMENTS Massive、リード・シンセにはXFER RECORDS Serumを用いますね。リバース・サウンドを収録したソフト音源OUTPUT Revは、非常にインスピレーションを与えてくれるので好きです。ブラスやストリングスは、NATIVE INSTRUMENTS Kompleteでばっちりですね。ミックスでよく使用するプラグインは、ステレオ・イメージャーのIZOTOPE OzoneのImager。扱いやすく、ふわっと空間を広げてくれるので、上モノやマスター・チャンネルに挿しています。

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オーディオI/OはUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin MKIIだ。A.G.Oは「原音忠実なサウンドで、操作性も高いです。購入のきっかけは、UNIVERSAL AUDIO UAD-2プラグインが使いたかったから」と語る

■サブベースのこだわり

 サブベースにおける音作りの鍵はサチュレーションです。これを施すことによって倍音が持ち上がるので、APPLE iPhoneのスピーカーや付属イヤホンでもしっかりサブベースが聴こえます。またEQでは、サブベースのローエンドを生かしたいのでキックの40Hz辺りにローカットを入れることが多いです。

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ひずみ系プラグイン、FABFILTER Saturn。A.G.Oは「キック、スネア、サブベースなどにガンガン挿しています」と言う

■グルーブの秘けつ

 キックとスネアはジャスト、ハイハットや上モノはヨレヨレに打ち込むのがポイント。あとは、ラップと一緒に聴いて微調整を行います。元ダンサーだっただけに、グルーブ感は最もこだわる中の一つです。皆の体が自然に動き出すようなビートを作ることが、僕のモットーなんですよ。

 

■今後の展望

 CIRRRCLEの活動はもちろん、個人としては国内外問わずさまざまな人たちとコラボレーションしていきたいです。

 


A.G.Oを形成する3枚

『The God Complex』
ゴールドリンク
(Squaaash Club)

「Soulectionの名だたるメンバーが、プロデュースで参加している作品。フューチャー・ビートとゴールドリンクのバウンシーなフロウが、当時はとても新鮮に感じました」

 

『blkswn』
スミノ
(Zero Fatigue LLC/Downtown)

「チャンス・ザ・ラッパーなどシカゴのヒップホップ・シーンが盛り上がる中、その良いところが凝縮されたような一枚。サンプルの使い方やリズムの作り方が自由なんです」

blkswn

blkswn

  • Smino
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

『Good Love EP』
ブラストラックス
(Brasstracks)

「飽和気味だった当時のフューチャー・ベースに、エモいブラスを組み込んだサウンドが斬新でした。ホーン・セクションのアレンジにおいて、影響を受けています」

Good Love (feat. Jay Prince)

Good Love (feat. Jay Prince)

  • Brasstracks
  • エレクトロニック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes



自分のNo.1プロデューサー
ルイ・ラスティック

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Twitterより:https://twitter.com/louielastic

 マルーン5やゴールドリンクをはじめ、ザヴィエル・オマー、ヴァンジェスなどの楽曲を手掛けるプロデューサー。彼の作風は、ファンクやディスコよりのテンポ感の中に、J・ディラ的なグルーブが垣間見えるのが特徴的です。そして、そこに乗る近未来感漂うシンセ・アレンジも素晴らしいですね。2015年にリリースされたソロ・アルバム『Soulection White Label: 015』では、とても自由なリズム感を持つビートが展開されていますが、ノれること間違いなしなので、ぜひ聴いてみてください!

 

www.snrec.jp

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