自分の曲を作るときは“一切サンプルを使わない”というのがマイ・ルール
世界の各都市で活躍するビート・メイカーのスタジオを訪れ、音楽制作にまつわる話を聞く本コーナー。今回登場するのは、ロサンゼルスを拠点に活動するマルチインストゥルメンタリスト/プロデューサー、ジョーダン・チニによるアーティスト・プロジェクト=ボーイ・デュードだ。ローファイ・ファンク/ソウルを得意とする彼の音楽的生い立ちや制作環境についてインタビューを敢行した。
Interview:Hashim Bahroocha Photo:Akiko Bharoocha
キャリアのスタート
父親はプロ・ミュージシャンで、昔は作曲家としてMotown Recordsに在籍していたことがある。僕は6歳からギターのレッスンを受け、12歳のときにコンピューターでビート・メイキングを始めた。エイフェックス・ツインやスクエアプッシャーに影響されたんだ。父親のスタジオが身近にあったから自然とレコーディングに興味が湧いて、独学で音楽制作を学びつつ、さまざまなバンドでプレイヤーとしての経験を積んだよ。ロサンゼルスに引っ越してからはアーティスト活動だけでなく、CMや映画音楽の仕事もするようになった。
ボーイ・デュード・サウンドの変遷
子どものころはギター、ベース、ドラムを独学し、フォークやスカなどを好んで演奏していた。TASCAM Portastudio 424MKIIというマルチトラック・レコーダーで宅録もしていたよ。大きく変わったのはロサンゼルスで“リフレクション”というバンドを組んだとき。このバンドは1980年代ファンクやブギーにインスパイアされていて、Funkmosphereというイベントにも出演した。そのころに僕はROLAND Gaia SH-01というアナログ・モデリング・シンセを購入して、80'sサウンドにのめり込んだんだ。以来、クラフトワークのようなシンセを中心とした音楽を掘り下げるようになったよ。
ハードウェアの魅力
お気に入りのシンセはKORG PE-2000、YAMAHA DX7、エレピはRHODES Mark II。ほかにもROLAND JV-1080やALESIS DM5などの音源モジュール、リズム・マシンのOBERHEIM DMXを持っている。最近はROLAND TR-8も入手したよ。僕は1980年代のシンセが特に好きで、とても音が格好良いんだ。デザイン性も優れているし、総合的によく考えて作られている。当時のアナログ・シンセはプラグインで再現できない独特のサウンドを持っているし、実際にノブを触って音作りができるところもいいね。
ビート・メイキングのこだわり
CM音楽ではなく自分の曲を作るときは、“一切サンプルを使わない”というのがマイ・ルール。すべて自分で演奏したものを使うようにしている。僕はアルバムを一つの作品として見ているため、サウンドには一貫性を持たせたいんだ。
スタジオ機材
DAWはIMAGE-LINE Fruity Loops(現在のFL Studio)を使っていたんだけど、3年前からABLETON Liveに切り替えた。デスクの左側にあるテープ・マシンは父親から譲ってもらった1970年代のDOKORDER 7140で、これも制作に使うことがある。モニター・スピーカーはYAMAHA HS8で、オーディオI/OはUNIVERSAL AUDIO Apollo X8、ボーカル・マイクはSHURE SM58、SM7Bなどを使っているよ。Portastudio 424MKIIは1stアルバム『Cassette For You』のサウンドの要。実際、本当にカセットにレコーディングした作品だったから、このアルバム・タイトルにしたんだ。
ミックス
プラグインとアウトボードの両方を使い、基本的にはEQとコンプを中心としたミックスに徹している。お気に入りのプラグインはFABFILTER Pro-Q、WAVES C6 Multiband Compressor、H-Delayなどで、秘密兵器はクリス・ロード=アルジ監修のWAVESシグネチャー・プラグイン・シリーズだ。Portastudio 424のプリアンプ、EQもミックス時に使うことがある。とても温かみのあるサウンドなんだよ。
読者へのアドバイス
周りの人たちがやっていることを気にしないで、自分のサウンドを追求すること。あきらめずに続けることも大事だ。
SELECTED WORK
『Cassette For You』
Boy Dude
(Hobo Camp)
2017年にリリースしたデビュー作。このアルバムを通してボーイ・デュードの音楽を確立できたと思うし、今でもこの作品を通して自分の音楽を発見してくれるファンが多いんだ。