こんにちは、DJ/作曲家のPharienです。これまで3回にわたってFL Studioビギナーや購入を検討している方に向けて、僕の楽曲で実際によく使っているプラグインや、便利な機能について紹介してきました。え? まだFLStudioを導入しようか迷っている? それでは僕が最後の一押しをしましょう。
高品質なプラグインを収録する
Signature エディションがお得
数あるDAWの中から、最もコスト・パフォーマンスが高いものを選びたいですよね。安心してください、FL Studioがナンバー・ワンのDAWです。FL StudioにはFruity(16,000円)、Producer(26,000円)、Signature(34,000円)という3つのエディションが用意されています。Fruityは低価格ですがオーディオ・クリップが使えないので、個人的にはオーディオも扱えるProducer 以上のエディション購入の検討を推奨します。個人的にお薦めなのはSignature。Producerより価格は高いですが、中長期的に考えると値段以上の活躍をすること間違いありません。ちなみに僕もSignatureを買いました。
SignatureはProducerには収録されていないピッチ/タイミング補正ソフトのNewToneやFL Studioの代表的なソフト・シンセHarmlessをはじめ、ピッチやボリューム、再生位置を操ってアグレッシブなサウンド・メイキングを可能にするGross Beatなど、熟達者になっても使うこと必至のプラグインを収録。特にGross Beatは独特で面白いプラグインのように思います。
アレンジに大いに役立てるはずです。Signatureに入っている高品位なプラグインやサンプルがあれば、当分の間サード・パーティ製のプラグインは不要でしょう。これまで連載で紹介したFruity Parametric EQ 2やFruity Reeverb2、Soundgoodizerなど、全グレードに収録されているプラグインも、もちろん一級のクオリティです。
DAWにはバージョン・アップがつきもの。魅力的な新機能を楽しむのも音楽制作の醍醐味です。アップデートが有償のDAWもある中、FL Studioは一度買えばアップデートが永続的に無償で行える、ライフ・タイム・フリー・アップデートという制度を採っています。2018年にバージョン12から20になったことでWindowsだけではなくMacでも使えるようになりましたが、その際もご多分に漏れず無償でアップデートできました。新機能がすぐに無料で試せるのは、実際にアップデートしてみるとかなりお得だと感じますね。またマイナー・アップデートがまめに行われており、信頼できるDAWだと感じられる一つの理由になっています。
直感的にビートを打ち込める
システムの根幹Channel Rack
ややこしいソフトやサービスって、使いこなす前にモチベーションが失われてしまいますよね。僕も難しいことは苦手です。僕がこれほど作曲にハマれたのは、FL Studioのシンプルで直感的なユーザー・インターフェースのおかげだと思っています。中でも特徴的なのが、サンプルやソフト音源をアサインして打ち込んでいくChannel Rack。FL Studioユーザーの方はもちろんご存じだと思いますが、最初からキック、クラップ、ハイハット、スネアのサンプルがアサインされていて、ステップ・シーケンサー・スタイルでビートを打ち込めるようになっています。
FL Studioを開いたらすぐにChannel Rackが出迎えてくれるので、即座に打ち込みが可能です。ほかのDAWでは、まずどう打ち込めばよいか分からないこともあります。
シンセで音色を奏でるのも簡単。好きなシンセをドラッグ&ドロップでアサインし、画面上部のアイコンからピアノロールを出現させるだけ。
ピアノロールだけではなく、ほかの機能もアイコンで直感的に判断できるように作られています。DAWは専門用語だらけで覚えることが多いですが、このようにアイコンでガイドされると分かりやすいものです。僕は無機質なユーザー・インターフェースだと拒否反応が出てしまうので(動画編集ソフトなどで特に感じます)、こういったユーザー・フレンドリーな設計はモチベーションも上がります。
エディットやマッシュアップに向いたDJ にもお薦めのDAW
FL Studioは作曲をするミュージシャンだけではなく、DJの活動にも役に立ちます。クラブで多くのDJがかけている曲は確かにアガりますが、そのまま自分でかけるのは抵抗がありませんか? FL Studioなら少し使い方を学ぶだけで、ほかのDJよりかっこ良いエディットやマッシュアップを簡単に作ることが可能です。インストゥルメンタルにヒット曲のボーカルを乗せたり、2つの曲をマッシュアップすることいったことをはじめ、恐らくあなたがやってみたいと思っていることの大体が実現します。
片方の曲の低域がブーミーなときはEQでローカットして違和感の無いエディットを作る、といった作業も朝飯前。そうやって触ってFL Studioの理解を深めていけば、楽曲制作にも興味がわくかもしれませんね。
実際に使い始めて分からないことがあったら、オンラインのリファレンス・マニュアル(http://www.image-line.com/fl-studio-learning/fl-studio-online-manual)を見てみましょう。冊子の説明書だったら自分の知りたいことに近い項目を目次で探して、ページをめくって……といった作業が必要になりますが、リファレンス・マニュアルならワード検索ですぐに必要なページに飛ぶことができます。
また、FL Studioは世界中でダンス・ミュージックの制作に使われているDAWなので、この連載をはじめさまざまな場所で使い方を調べられるのも長所。どのソフトでも言えることですが、ユーザー数が多いと何かと便利です。
FL Studio、欲しくなってきましたか? もし現在ほかのDAWを使っている場合、通常のSignatureエディションを買うより安く乗り換えることのできる、FL Studio 20 Signature クロスグレード(22,000円)を購入できます。FL Studioは歴史のあるDAWですが、新規参入もウェルカムなのです。
残念ですが僕の連載は今回で終了です。今まで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。僕は音楽制作を本格的に始めた約4年前からFL Studioを使っていますが、本当に使いやすいDAWだと思っています。この連載をきっかけに、FLユーザーが増えてくれたらうれしいです。
Pharien
21歳の日本人DJ/作曲家。17歳のころにFL Studioを使った作曲を初め、2年後にはDJのハードウェルが主宰するRevealed Recordingsより「Nightfade」を発表。その翌年、オランダのArmada Musicより「Tell Me The Truth」をリリースする。2019年夏にはSpinnin' Recordsと日本人初となる専属契約を結び、同年冬にはSpinnin' Recordsが中国で開催したオフィシャル・イベント、Spinnin' Sessionsへの出演を果たした。
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