第22回「ノイズ対策ツール」
ACOUSTIC REVIVE代表
石黒謙、氏の技術解説
空いているUSB端子やLAN端子は、想像以上に音質を著しく劣化させています。その音質劣化は、コンピューターはもちろんエレクトリック・ピアノなどの電子楽器、デジタル・ミキサーなどUSB端子やLAN端子を搭載しているすべての機器で発生しています。これはUSB端子やLAN端子からのノイズ混入に加え、USB回路やLAN回路からも大量のノイズが機器や楽器内部に放出されてしまうためです。
USBターミネーターRUT-1とLANターミネーターRLT-1は、外来ノイズの飛び込みの防止とUSBまたはLAN回路からのノイズ放出を抑制し、絶大な音質向上を実現。LANアイソレーターRLI-1GB-TripleCはLAN回線上を行き交うノイズを一掃します。その結果、コンピューターやデジタル・ミキサーなどはノイズ混入による動作不安定がなくなり、劇的にS/Nと音質が改善されます。
さらに画期的なのは、ストリーミングやダウンロード音源のクオリティまで改善されるという点です。近年、インターネット配信における音質劣化は深刻な問題となっていますが、RLI-1GB-TripleCやRLT-1は、いとも簡単にこの問題を解決します。
<Price>
●RUT-1(USBターミネーター/写真左):18,000円
●RLT-1(LANターミネーター/中央上):18,000円
●RLI-1GB-Triple C(LANアイソレーター/中央下):28,000円
Cross Review
Song Writer/Arranger/Programmer
深澤秀行
<Profile>CAPCOM『ストリートファイターV』のゲーム音楽を作編曲したり、矢野顕子のシンセ・プログラミングを手掛けるなど幅広く活動。“電子海面”のメンバーでもある。
3製品の併用で効果てきめん
音がダマにならず残響もよく見える
筆者のリスニング環境は、NAS(ネットワークHDD)からWi-Fi経由でストリーミングされる24ビット/48kHzのWAVオーディオ(iTunesライブラリー)をAPPLE Mac Pro→APOGEE Symphony I/O MKIIでアナログ信号にし、GENELEC 8040Bから出力するというものです。
今回の3製品、ずばり結論から申し上げると、効果があります。繊細ですが、効果は感じられるはずです。可能な限り時間をかけてチェックし、RUT-1だけ、RLT-1とRLI-1GB-TripleCのコンビなど組み合わせもいろいろとやりました。効果がしっかりと分かったのは、やはり3つ装着した状態とすべてを外した状態の比較です。
興味深いのはRLT-1で、Mac Pro本体のLAN端子に挿すだけでは効果が見えなかったのですが、送信側であるルーターやNASのLAN端子に使った際は効果が感じられました。その私が感じた効果とは、いろいろな帯域で楽器/音色が重なり合うような情報量多め/音量大きめの部分で、細部がつぶれてしまわないこと。それと同時に、EDM系のキックに負けないリバーブ・テールの存在に気付いたことに驚きました。DAW環境での音質アップも期待していましたが、LANで音を伝送しているわけではないからか、今回は効果を感じられませんでした。
製品を取り外したときの残念な音に驚きも隠せません。“付けたままにしておきたい”と本気で思いました。筆者を含め、先入観や偏見を持ちやすい製品でしょうし、環境によって効果が変わる可能性もあると思いますが、3つの製品を装備した状態では間違いなく効果が感じられます。
Engineer
林憲一
<Profile>ビクタースタジオ出身のフリー・エンジニア。サザンオールスターズなどに携わり、近年はmiwa、THE BACK HORN、石崎ひゅーいらの録音&ミックスを担当する。
高域のひずみ感が減り
低域の弾力が増す印象
RUT-1をMac Pro本体の空きUSB端子に挿し、自身のミックスしたセッションを試聴した。使用前と比べて高域のひずみ感が消え、奥行きも増した印象。また、金モノの打楽器の分離が良くなり、それぞれの存在がより明確に聴こえるようになった。その恩恵か、今まで気付かなかった音源自体の持つわずかなひずみにも気付かされた。
次にRUT-1を外してRLT-1をチェック。Mac Pro本体のLAN端子に装着すると、エレキギターの太さ、エレキベースの芯の辺りの量感がほんのりアップ。重心が下がる感じではなく“弾力が増す”という方が的確だろう。RLI-1GB-Triple CはスピーカーのGENELEC 8341Aでテスト。音響補正機能の測定時に使用するLAN端子があるので、そこに挿してみた。音色変化はRLT-1と似ており、低域の押しがわずかにアップしながらも立て込む感じは皆無だ。
最後にすべてを同時に使ってみると、普段より解像度が一段上がった感じで、下から上までディテールが把握しやすい。より細かくミックスを詰めることができるだろう。
Engineer
沖悠央(SCRAMBLES)
<Profile>気鋭の音楽制作集団“SCRAMBLES”のサウンドをつかさどるエンジニア。これまでにBiSHやBiS、GANG PARADE、EMPIRE、DISH//らの作品を手掛けてきた。
放置している空き端子があるなら
それを“活用”する手段になり得る
ノイズは必ず出てしまうものであり、現状の環境で最高点を目指しつつ、妥協点も見極めながら作業しておりました。ですので、正直このような製品はまゆつばものかと思っていましたが、いざ試してみると驚き。基本的には“空き端子に挿すだけ”でありながら、ノイズ除去効果によって解像度が上がり、周波数レンジも広がる印象です。
RLI-1GB-TripleCは、LAN端子に挿すと高域のピリつきが収まり、すっきりと聴きやすくなる感じ。普段の出音には薄膜がかかっていたのか!という気分にさせられます。RUT-1は、中域のノイズが減る印象。放置しているUSB端子が、こんなにもノイズの原因になっていたのかと驚がくです。特にSACDプレーヤーに装着した際の効果が顕著でした。RLT-1は、ひずみが低減しS/Nが向上。個人的には、使用前後の違いを最もとらえやすい製品でした。以上の3つを同時に使うことも可能で、ハイエンドかつピュアな音質になっていきます。もし放置している端子があるようなら、それを“活用”する手としてもいかがでしょうか?
<製品概要>
RUT-1(USBターミネーター)
RLT-1(LANターミネーター)
RLI-1GB-TripleC(LANアイソレーター)
(本稿はサウンド&レコーディング・マガジン2018年12月号からの転載となります)