セイント・ヴィンセント『Pay Your Way In Pain(IDLES Remix)』、ジョックストラップ『50/50』 〜Nagie's ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。Nagie氏の今月のセレクトは、セイント・ヴィンセント『Pay Your Way In Pain(IDLES Remix)』、ジョックストラップ『50/50』です。

曲構成も素晴らしいエレクトロ・ミュージック

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セイント・ヴィンセント『Pay Your Way In Pain(IDLES Remix)』

 セイント・ヴィンセントは、ニューヨークを拠点として活躍するエクスペリメンタル・ロックのアーティスト。この曲はロンドンで活躍するパンク・ロックの巨匠、IDLESとの共作リミックスだ。字面だけだとすんごいロックかと思いきや、めちゃエレクトロ。ROLAND TR-909のリム連打から始まり、その後入ってくる同じく連打のシーケンス・フレーズの良い音ったらありゃしない。中盤にはロックらしくギターが薄くフィーチャーされるが、もうこれはテクノ好きのための良作だ。定期的に絡んでくるシャウトと恐怖が忍び寄ってくるような曲構成は本当に素晴らしい。シンセ・ベース音もナイス!

さまざまなジャンルの迷走が楽しい

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ジョックストラップ『50/50』

 ジョックストラップはロンドンで活躍するポップ・デュオ。本作は、ロンドンの名レーベル、ラフ・トレードからの初リリース作品だ。“Ah Eh Uh”と、どこか演劇チックな魔術の声で始まり、4つ打ちでキックが絡んでくる。テクノなのかと思いきやノイジーなシーケンスが挿入され、漂うボーカルと共に曲が進行していく……かと思った瞬間、ブレイク後にはチョップ・ボーカルの連打からのオールドスクール・ヒップホップ(?)に変化。ジャンルが迷走する中、さらに曲調がファンタジーな雰囲気になり、変な魔空間に入り込んだ感じだ。声のチョップがとても良く、ヘンテコでとても楽しめる曲である。2人の過去曲もクラシカルだったりチープなテクノだったりと、音楽スタイルが非常に多彩でクリエイティブ。とても面白いので、その面もチェックしてもらいたい。

 

Nagie

【Profile】ANANT-GARDE EYES、aikamachi+nagie、CM、アニメ、劇伴、映像音楽中心に活動。Vocaloidライブラリー開発も行う