グラミー賞ノミネート楽曲BTS「Dynamite」の普遍的アレンジと現代的な音像の秘密 〜ケンカイヨシの見解良し! Vol.19

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Photo:Hiroki Obara

 

 こんにちはケンカイヨシ(Loyly Lewis)です。最終回は、第63回グラミー賞にもノミネートされ、近年話題沸騰中の韓国7人組ボーイズ・グループ=BTSの「Dynamite」を取り上げてみましょう。

 

Dynamite

Dynamite

  • BTS
  • K-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 同曲は、アジア人としては坂本九さん以来となる“全米ビルボード・チャート1位”を達成。ファンキーなベースにナイル・ロジャースばりの軽快なカッティング・ギターが特徴的です。1970年代から脈々と続く普遍的なディスコ・サウンドを、うまく現代に昇華した快作となっています。

 

 そんな「Dynamite」のトラックを構成する基本パートはドラム、ベース、ギター、ピアノというシンプルさ。テクノロジーが進化し、これまで聴いたことのないような複雑な音楽が増えた現代でこの曲が輝くのは、恐らく“普遍的なアレンジの追求”によるものにほかならないでしょう。

 

 1番のAメロでは“これから何かが始まる”という雰囲気を、上モノにかけたローパス・フィルターで演出。音数が少ないと単調なアレンジになりがちですが、こういった技は効果的です。続く2番のサビ以降ではブラスが加わり、後半で転調。これまで多くの楽曲で用いられてきた“定番的手法”が施されていますが、すべてはサビを最大限に光らせるのが目的です。ポップスのアレンジとしては“当たり前のこと”とも言えますが、昨今のさまざまな音楽ジャンルが入り乱れるチャート内では、逆にそれが一周回って新鮮に感じられ、結果としてヒットにつながったのではないでしょうか。

 

 “使い古された手法しかやっていないの?”と考える方も居るかもしれませんが、ビートに関してはそうではありません。本連載でも時折取り上げる“低域の密度感”は非常に現代的で、極太のドラムとベースが曲のグルーブを支えています。個人的にとても感動したのは、クラップやハイハットのアタックが、グルーブを損なわないギリギリのラインで遅く設定されていること。これによって存在感は維持しつつも、ボーカルを一切邪魔しない素晴らしいサウンドを実現していると言えます。

 

 今回のお薦めプラグインは、オールパス・フィルターのKILOHEARTS Disperser。位相を変えることによって、ピークや音の質感を変化させることができる便利なツールです。「Dynamite」のビートのように密度のある低域を演出したいときや、ダブステップで聴く派手なシンセ・ベースなどを、コンプや空間系エフェクト以外でオケになじませたいときに効果的。さりげなくサウンドを微調整することもできるので多用しています。ヘッドルームも稼げるため、近年のダンス・ミュージック系クリエイターの間でも重宝されている印象があります。ぜひ一度、試してみてください。

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オールパス・フィルター・プラグインのKILOHEARTS Disperser。位相特性を変えることによって、ピークや音の質感を調整することができる。PINCHノブではフィルターのQ幅を設定可能

 さて、今回でこの連載は終了です。普段はTwitterでも情報発信しているので、ぜひチェックしてみてください。それでは、またどこかで会いましょう。ありがとうございました!

 

beatcloud.jp

 

ケンカイヨシ(Loyly Lewis)
【Profile】東京を拠点に活動する音楽プロデューサー/アレンジャー。ぼくのりりっくのぼうよみとの出会いをきっかけにJポップへ活躍の場を広げる。そのほか香取慎吾と草彅剛のユニット=SingTuyoなどの作品を手掛けている。

kenkaiyosi.com

 

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