ブラックベアー『ミザリー・レイク』、ジャングル『Loving In Stereo』 〜今本 修's ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。今本 修氏の今月のセレクトは、ブラックベアー『ミザリー・レイク』、ジャングル『Loving In Stereo』です。

存在感が強い圧倒的な音圧

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ブラックベアー『ミザリー・レイク』(ソニー)

 待ちに待った新作を発表したブラックベアー。すっかり売れっ子で、最近のプロデュース作品はマルーン5「エコー」や、初動1週間で800万回以上ストリーミングされたケイン・ブラウンとの「Memory」のほか、さまざまなアーティストと共演しヒットさせている。各種アワードにもノミネートされるなど、今や多忙な存在となった。そんな中しっかり自分の作品も出すというのは、ファンとしては大変うれしい知らせだ。内容は肩の力が抜けていてシンプル。新鮮さは感じないが曲が良い。そして何より、素晴らしいミックスだ。ドライブ中に本作が始まると、おー来た来たとなる圧倒的な音圧で存在感が強い。ボーカルが際立つ張り付くコンプや、ヒットを生む立体的音像。自分の理想の音がここにある。

趣向を凝らしたイントロのバリエーション

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ジャングル『Loving In Stereo』(ビート)

 ジャングルの新作も本当に待ち望んだ作品。僕は現代のアース・ウィンド&ファイアーととらえているが、アヴァランチーズやゴリラズが好きであればとりこになるだろう。アートの分野においても超一流で、曲のPVも自ら手掛ける。特に今作は冒頭から映画のワンシーンのように壮大なストリングスで始まるなど、イントロにこれまでとは異なるチャレンジを感じた。サンプリングのアナログな質感、ループの強調やブレイクビーツの導入。曲によってさまざまな趣向を凝らしている。全体的にはソーシャル・ディスタンス時代のディスコ・ミュージックと謳われるように詰め込まず、空間や時間軸にも余裕を持たせているように思えた。

 

今本 修

【Profile】DOGLUS MUSIK主宰。クラブ・ミュージックを熟知した音作りに定評がある一方、ロックの分野でも手腕を発揮するエンジニア