音楽制作に特化し、立体音響での使用も想定したソニーの背面開放型ヘッドホン、MDR-MV1。気鋭のギタリスト/プロデューサーの西田修大が曲作りに試し、その所感を自宅スタジオと並行して稼働させている仕事場で語ってくれた。
Photo:Hiroki Obara
音の質感を作り込めるので、作編曲の判断を誤りにくい
めちゃくちゃ気に入りました。欲しいです。一番は“つけ心地”。軽いんですよ、ものすごく。そしてフィット感があるのに側圧は強くないし、これまで使ってきたヘッドホンの中で最も快適な装着感です。ヘッドホンによる没入感と閉塞感って紙一重だと思うんですが、MDR-MV1なら窮屈な思いをせずに済むので、ごく自然に没入できます。たまに、つけているのを忘れるくらい。長時間の使用もストレスフリーなので、音楽制作のほか、例えばゲームに使うのもよいかもしれません。軽いのに耐久性が高そうだから、運搬の際、過敏にならなくてよさそうだし“ガンガン使える”って感じがする。
音に関しては、従来の開放型ヘッドホンとは違い密度の高い低音が鳴る印象で、リファレンス・モニターとして信頼しているキャリブレーション機能つきの同軸スピーカーと似たロー感です。スピーカーとヘッドホンで最も大きな違いが出るのはロー感だと思いますが、MDR-MV1では質感や量感の見え方がほぼ変わらないので、“これなら基準にできる”という感じ。低音に限らず、狙いの質感をきちんと作った上で作編曲を進められるから判断を誤りにくく、昼間や自宅スタジオ=スピーカー/夜間や外出先=MDR-MV1といった使い分けをしても基準がブレないため、音作りを何度もやり直すような手間が省けます。また、ヘッドホン・アンプによる音質の差が出にくく、汎用性の高さを物語っていますね。
6万円弱という価格も絶妙。プロの道具として信頼できる設定だと思うし、なおかつ手が届く範囲です。導入すれば、立体音響がヘッドホン・モニターだけで仕込めるかもしれないので、専用のマルチスピーカー環境を持たない方にも身近でリアルなものになるのではないでしょうか。
Summary
✓ 長時間の使用に耐える装着感
✓ 低域が見やすく“基準”にできる
✓ アンプによる音質差が出にくい
西田修大
ギタリスト/プロデューサー。中村佳穂、君島大空、石若駿、Yaffle、幾多りら、UA、角銅真実、ROTH BART BARON、石崎ひゅーい、KID FRESINO、Ortanceなどの作品やライブで活躍。普段、ライブ用モニターでソニー Just earを愛用
ソニー MDR-MV1
背面開放型により内部での共鳴を低減し、原音の正確な再現を目指したモニター・ヘッドホン。ドライバーは専用開発の40mm径のもので、低域の再現性を高めつつ超高域再生も可能に。ドライバー背面にはダクトを備え、振動板の動作を最適化。低域の過渡特性を改善し、中域との分離感を維持しつつリズムを正確に再現するという。360 Reality Audio認定モデルとなっているが、360 Reality Audio以外にも、さまざまな立体音響制作での使用が想定されている。
●形式:背面開放型 ●ドライバー径:40mm ●周波数特性:5Hz~80kHz ●最大入力:1,500mW ●感度:100dB/mW ●インピーダンス:24Ω(1kHzにて) ●重量:約223g(ケーブル含まず) ●付属品:ヘッドホン・ケーブル(TRSフォーン・プラグ)、TRSフォーン→ステレオ・ミニ・プラグ変換アダプター