SHURE Nexadyne™ 8シリーズのボーカルマイクをPAエンジニアの近藤祥昭&ボーカリストの巻上公一(ヒカシュー)がレビュー【第4回】

SHURE Nexadyne™ 8 × 近藤祥昭&巻上公一(ヒカシュー)〜PAエンジニア&ボーカリストがレビュー【第4回】

歌った瞬間に良いマイクだと分かった(巻上公一)
ボーカリストがパーソナルなマイクとして1本持っておくと良い(近藤祥昭)

カーディオイドのNexadyne™ 8/C(以下NXN8/C)とスーパーカーディオイドのNexadyne™ 8/S(以下NXN8/S)をラインナップする、ボーカル用ダイナミック・マイクSHURE Nexadyne™ 8シリーズ。特許技術“Revonic™(レボニック)テクノロジー”により、明瞭度の向上、不要な信号の除去、ハンドリング・ノイズの低減などを実現し、ライブ向けボーカル·マイクとして有用な仕上がりであることがうかがえる。本連載では、PAエンジニアとボーカリストにライブを想定した製品チェックを行っていただき、その結果を全4回にわたってレポートしてきた。最終回の今月は、45年以上のキャリアを持つ大ベテランのエンジニア、GOK SOUNDの近藤祥昭と、1978年結成のノンジャンル音楽ユニット、ヒカシューでボーカルを務める巻上公一に試してもらった。

左から近藤祥昭、巻上公一。旧知の間柄である2人が、終始穏やかな雰囲気でテストを行っていたのが印象的だった

左から近藤祥昭、巻上公一。旧知の間柄である2人が、終始穏やかな雰囲気でテストを行っていたのが印象的だった

 エンジニア  近藤祥昭
アナログ・テープを駆使するレコーディング・エンジニアで、PAも行う。これまでに大友良英、カヒミカリィ、非常階段、w.o.d.など、さまざまなアーティストを手掛ける。

 ボーカリスト  巻上公一
歌手、詩人、即興演奏、作詞/作曲、演出、俳優、プロデューサー。ヒカシューのリーダーとして、1978年から現在に至るまで作詞/作曲はもちろん、ボイス・パフォーマンスやテルミン、口琴を使ったソロ・ワークやコラボレーションも精力的に行っている。歌謡曲から歌ともつかぬ歌まで、そのパフォーマンスは縦横無尽かつ自然体。

輪郭が出て伸びのある高域

 今回は、東京都武蔵野市のライブ・ハウス吉祥寺 STAR PINE'S CAFEにて、9月26日に行われた『マンスリーヒカシュー2024〜雑草に月光のご褒美』の本番前に店内へ伺い、テストを実施。NXN8/Sを試すやいなや、巻上から「良いマイクだね!」という言葉が飛び出した。その真意を聞いた。

 「歌声の輪郭がすごく出ている。高域まで奇麗に聴き取れて、バンドの中でも埋もれないんじゃないかな。歌った瞬間に良いマイクというのが分かりました」

 巻上は他社製のダイナミック・マイクを普段使いし、SHUREのほかのマイクも所有しているとのことだが、どのマイクとも第一印象が異なったという。近藤も「高域に伸びがあり、しっかりとチューニングされていると感じる」とサウンドを評価。また、かねてより本機に注目していたという近藤は、近接効果を大幅に改善する独自の特許技術、Revonic™テクノロジーを用いたその構造を称賛した。

 「往年のダイナミック・マイクには、ボディにスリットを入れることで近接効果を抑制しているものがありましたが、Nexadyne™ 8はトランスデューサーも含むカプセル部分でそれを実現している。武骨な試作品だったらできるかもしれないけれど、実際の製品として、しかも指向性まできちんと調整されたダイナミック型のハンドヘルド・マイクとして世に出ているのは、相当な技術だと思いますよ。その分、ヘッドを覆うような持ち方にならないよう、特に注意してもらいたいですね」

テストを行う巻上公一。「輪郭がしっかりしているから、ピッチが不安定だとバレそう(笑)」とにこやかに印象を話した。歌唱のほか、ボイス・パーカッション、ホーミー、口琴など、さまざまな方法で試していた

テストを行う巻上公一。「輪郭がしっかりしているから、ピッチが不安定だとバレそう(笑)」とにこやかに印象を話した。歌唱のほか、ボイス・パーカッション、ホーミー、口琴など、さまざまな方法で試していた

これまでにない革命的なマイク

 カーディオイドのNXN8/Cも試すと、「指向性が違っても音のキャラクターは同じ印象。スタンド立てかハンドマイクか、歌い方によって選ぶのがいいのでは」と近藤。

 さらに、さまざまな唱法を会得する巻上は、ボイス・パフォーマンスやホーメイといった表現でもテスト。2人とも「倍音が豊か」と口をそろえる。ボーカルだけでなく、管楽器にも良さそうとのことだ

 巻上にどういった方にお薦めか聞いたところ、「自分が欲しい(笑)。次のライブではNexadyne™ 8に変えているかも」と笑顔で話してくれた。近藤が続ける。

 「GIBSONがLes Paulを、FENDERがStratocasterを超えるようなギターを作るのと、同じくらいのことをしている。それだけ、マイクの革命的な製品ではないでしょうか。ボーカリストがパーソナルなマイクを1本持っておくなら、Nexadyne™ 8が良いと思います」

 POINT 

✓ 声の輪郭が表出
✓ これまでのマイクにない近接効果の抑制具合
✓ 豊かな倍音

SHURE Nexadyne™ 8

 特許技術“Revonic™(レボニック)テクノロジー”を採用したボーカル用ダイナミック・マイク、Nexadyne™ 8シリーズ。2つのトランスデューサーが相互に作用することで、より高度な周波数特性の最適化、コンデンサー・マイクに匹敵する中高域の明瞭度、ハンドリング・ノイズの低減などの効果が得られるという。カーディオイドのNXN8/Cと、スーパーカーディオイドのNXN8/Sをラインナップする。

オープン・プライス(市場予想価格:48,400円前後)

▪タイプ:ダイナミック
▪指向性:カーディオイド(8/C)、スーパーカーディオイド(8/S)
▪周波数特性:50Hz~20kHz
▪出力インピーダンス:300Ω(8/C)、450Ω(8/S)
▪感度:–54.0dBV/Pa(2.00mV)at 1kHz(8/C)、–51.0dBV/Pa(2.81mV)at 1kHz(8/S)
▪重量:258g(8/C)、294g(8/S)
▪外形寸法:47(φ)×181(H)mm(実測値)
▪付属品:マイク・ホルダー、専用ジッパー・ケース、3/8インチ-5/8インチ変換ねじ

製品情報

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