SHURE Nexadyne™ 8 × 葛西敏彦&石川紅奈(soraya)〜PAエンジニア&ボーカリストがレビュー【第3回】

SHURE Nexadyne™ 8 × 葛西敏彦&石川紅奈(soraya)〜PAエンジニア&ボーカリストがレビュー【第3回】

繊細なところまで拾ってくれるのが歌いやすさにつながっている(石川紅奈)
過度な誇張がないからどんなボーカリストにも対応できる(葛西敏彦)

カーディオイドのNexadyne™ 8/C(以下NXN8/C)とスーパーカーディオイドのNexadyne™ 8/S(以下NXN8/S)をラインナップする、ボーカル用ダイナミック・マイクSHURE Nexadyne™ 8シリーズ。特許技術“Revonic™(レボニック)テクノロジー”により、明瞭度の向上、不要な信号の除去、ハンドリング・ノイズの低減などを実現し、ライブ向けボーカル·マイクとして有用な仕上がりであることがうかがえる。本連載では、PAエンジニアとボーカリストにライブを想定した製品チェックを行っていただき、その結果を全4回にわたってレポートする。今回は、録音からライブPA、サウンド・インスタレーションなどで活躍するエンジニア葛西敏彦と、ボーカリスト/ベーシストであり、ユニットsorayaでも活動する石川紅奈がレビュー。2人は本機をどう評するのだろうか。

左から葛西敏彦、石川紅奈。アルバム『soraya』収録曲「耳を澄ませて」などを、石川のウッドベース弾き語り形式でテストしてもらった

左から葛西敏彦、石川紅奈。アルバム『soraya』収録曲「耳を澄ませて」などを、石川のウッドベース弾き語り形式でテストしてもらった

 エンジニア  葛西敏彦
スタジオ録音からライブPA、サウンド・インスタレーションなど、場所を問わず音へのアプローチを続けるエンジニア。蓮沼執太、青葉市子、スカート、岡田拓郎、小西遼などを手掛けるほか、2022年からは自主レーベルS.L.L.S Records(シルスレコーズ)も主催する。

 ボーカリスト  石川紅奈
ベーシスト/ボーカリスト。ジャズ・ベースを井上陽介氏と金子健氏に、ボーカルを高島みほ氏に師事。2022年からピアニストの壷阪健登とユニット、sorayaを結成。2023年にVerve/ユニバーサルミュージックよりメジャー・デビュー。ピアニストの壷阪健登とのユニット、sorayaでは2024年3月、葛西がボーカル録音とミックスを手掛けた1stアルバム『soraya』をリリースした。

第一印象は“歌いやすい”

 普段はライブ用として、ハンドヘルドのコンデンサー・マイクを使用しているという石川。Nexadyne™ 8の第一印象を「とても歌いやすかったです」と話してくれた。

 「倍音などの細かなニュアンスまでキャッチして、前に飛ばしてくれる感じがしました。ダイナミック・マイクだけれども繊細なところまで拾ってくれるのが、歌いやすさにつながっていると思います。スーパーカーディオイドのNXN8/Sは、よりその印象が強かったです」

 今回のテストではSHURE SM58との比較も実施した。SM58を葛西は「声の帯域をくまなく表現してくれるマイク」と評する。その上でNexadyne™ 8については、より扱いやすさを感じたそうだ。

 「NXN8/Cは、フラットに全帯域が出ている。ピークも少なく、EQで2カ所を軽く切っただけでスッとクリアに聴こえてきました。リハスタでの使用だと、細かく調整しなくてもレベルを上げるだけですぐに使えると思います。あと息の成分、倍音を速く、豊かに捉えられるので、ナチュラルさに加えて表現力も感じられる。sorayaのように、空間や隙間のある音楽にすごく合っているのではないでしょうか」

 NXN8/Sについては、「音自体がやや鋭く、高域の一部がより突き抜けてくる。ロック系など、音圧が強いバンドの演奏にも負けないと思いますよ」と、その印象を語った。

テスト中の石川紅奈。「私の声の場合、低域に特徴のあるマイクだと、突き抜けてほしいときに低域がフタをしてしまうような感覚があるんです。Nexadyne™ 8は、意図したところをちゃんと前に出してくれているのが、明確に感じられました」と語る

テスト中の石川紅奈。「私の声の場合、低域に特徴のあるマイクだと、突き抜けてほしいときに低域がフタをしてしまうような感覚があるんです。Nexadyne™ 8は、意図したところをちゃんと前に出してくれているのが、明確に感じられました」と語る

既存のダイナミック・マイクにない質感

 さらに、Nexadyne™ 8とリバーブの相性についても葛西は好感触だったそう。

 「先ほども言ったように、SM58は中低域にフォーカスされる印象があり、リバーブをかけても倍音まであまり響きにくいんです。Nexadyne™ 8は速い音にちゃんとリバーブがかかるので、奇麗に聴こえる。コンデンサー・マイクにはそういう性質のものもありますが、ダイナミック・マイクではなかなか出せない質感じゃないかな。かといって歯擦音まで強調されすぎるようなことはないし、まさに奇麗な倍音という印象です。テストしていても、歌いやすいだろうなと感じました」

 総括として、石川は「ダイナミック・マイクだから、大きな編成でも使えそうです。声を強く届けてくれるので視界が広がる。普段コンデンサー・マイクで歌っている人の選択肢としても良いと思います」と話す。葛西が続ける。

 「エンジニア視点で言うと、過度な誇張がないから、どんなボーカリストでも対応できる。エンジニアが持っておくとさまざまな現場で重宝しそうです」

 POINT 

✓ 全帯域にわたりフラット
✓ EQをかけなくてもすぐに実践できるサウンド
✓ 倍音が響くリバーブ

SHURE Nexadyne™ 8

 特許技術“Revonic™(レボニック)テクノロジー”を採用したボーカル用ダイナミック・マイク、Nexadyne™ 8シリーズ。2つのトランスデューサーが相互に作用することで、より高度な周波数特性の最適化、コンデンサー・マイクに匹敵する中高域の明瞭度、ハンドリング・ノイズの低減などの効果が得られるという。カーディオイドのNXN8/Cと、スーパーカーディオイドのNXN8/Sをラインナップする。

オープン・プライス(市場予想価格:48,400円前後)

▪タイプ:ダイナミック
▪指向性:カーディオイド(8/C)、スーパーカーディオイド(8/S)
▪周波数特性:50Hz~20kHz
▪出力インピーダンス:300Ω(8/C)、450Ω(8/S)
▪感度:–54.0dBV/Pa(2.00mV)at 1kHz(8/C)、–51.0dBV/Pa(2.81mV)at 1kHz(8/S)
▪重量:258g(8/C)、294g(8/S)
▪外形寸法:47(φ)×181(H)mm(実測値)
▪付属品:マイク・ホルダー、専用ジッパー・ケース、3/8インチ-5/8インチ変換ねじ

製品情報

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