注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。現在多くのスタジオで使用されているRUPERT NEVE DESIGNSのアクティブ・トランスDI、RNDIの8chバージョンであるRNDI-8がリリースされたので、詳細についてフックアップの秋本享大氏と、メディア・インテグレーションの安田都夢氏から話を聞いた。
Photo:Takashi Yashima
RNDI-8
アクティブ・トランスとディスクリート回路を搭載した2015年発売のDIボックス=RNDIの8chバージョンRNDI-8。RNDIの回路をそのまま8ch分搭載し、1Uに収めている。周波数特性は5Hz〜90kHzと広帯域で、同社独自のトランスにより倍音が強化されるのが特徴。フロント・パネルには、インストゥルメンタル入力(フォーン)、THRU出力(フォーン)、48V電源の供給を示すLEDランプ、グラウンド・ループを避けてノイズを軽減する“GND LIFT”スイッチ、−10dBのPADスイッチが並んでいる。
●RUPERT NEVE DESIGNSは、スタジオでもよく見かけるメーカーです。あらためてその特徴を教えていただけますか?
秋本 レコーディング・スタジオで長く愛されている、プロ・オーディオでは定番のメーカーです。マイク・プリアンプNEVE 1073の設計者であるルパート・ニーヴ氏が、2005年に立ち上げました。アナログな質感をモダンな機能とともに提供しているのが特徴で、最近では同社のアナログ・コンソール5088のサウンドを、コンパクトな1UサイズやAPI 500モジュールに落とし込んだような製品が多く発売されています。ビギナーからプロの方まで、幅広い層にご支持いただいているブランドです。
●今回紹介するRNDI-8は、2015年に発売されたアクティブ・トランスDI、RNDIの8chバージョンですね。開発の経緯を教えてください。
秋本 最初にシングル・チャンネルのRNDIが発売されたところ反響があり、現在では定番のDIとなりました。それに続いてユーザーからの要望を受けて発売されたのが、2chのRNDI-Sです。RNDI-8もRNDI-Sと同様、チャンネル数の強化ということでリリースされたのだと思います。
安田 8chのDIというのは珍しいですよね。シングル・チャンネルのDIを複数持つというのが一般的かと思います。
秋本 ライブの現場でも小型のDIを複数集めて使用しているのをよく見かけますし、おっしゃる通り、8chというのは珍しい構成かと思いますね。
●訴求するユーザーとしては、どんな方を想定されているのでしょうか?
秋本 多くのインストゥルメントをまとめて扱いたいという方ですね。特に海外では、バンドでRNDIを複数導入されているという例が多くあるようでして、RNDI-8の登場により、それらを1台でまとめて使いたいというニーズに応えられるようになりました。シンセをDIに通したいという方も多いので、ベースやギターだけでなく、シンセをたくさん持っている方にも向いている製品かと思います。
●実際に使用されて、音質についてはいかがですか?
安田 高域にサチュレーション感が出て、音がきらびやかになるという印象があります。ベースなどの音が低い楽器は、歯切れの良い音になりますね。
●この音を実現するにあたって、内部構造的には何がポイントになってくるのでしょうか?
秋本 やはり、ルパート・ニーヴ氏がデザインしたカスタム・トランスが一番のポイントですね。DIとして何か特殊なことをしているというわけではなく、このトランスと、各パーツの質、レイアウトが鍵になっているかと思います。
●他社のものと比較したときに、RUPERT NEVE DESIGNSのトランスにはどういった特徴がありますか?
安田 このトランスは倍音のサチュレーションがジャリッとしているのが特徴ですね。音がこもりがちなソースに使うと、良い感じに抜けてくるんですよ。
秋本 最初に発売されたRNDIは“RUPERT NEVE DESIGNSのトランスを搭載したDIが出た”ということで話題になり、多くの人に使用されるようになったんです。同社のマイクプリなどには“SILK”という倍音成分を付加できる機能が付いているのですが、これもこのトランスの制御によるものなんですよ。やはり、“RUPERT NEVE DESIGNSと言えば、トランスだ”というイメージを持っている方は多いと思います。このように、信頼できる音楽的なサウンドを作れるメーカーが発売したDIであるという点は大きいですね。
●そのトランスが、RNDI-8には8ch分付いているということなのでしょうか?
秋本 そうですね。8chの独立した回路が一つのラックに組み込まれているイメージで、各チャンネルごとにトランスが搭載されています。ここで配慮されているのが、トランスの配置です。向きが、縦、横、縦、横……と並んでいて、お互いの磁界が干渉しにくいような構造になっています。多チャンネルになったことで、そういった部分に気を使った設計になっているのもポイントですね。
●ほかに、多チャンネル化するにあたって工夫されていることはありますか?
秋本 8ch分が1Uに収まっているのでシャーシのグラウンドは共通ではあるのですが、多チャンネルで接続をすると、挿したケーブルがアンテナになってしまい、ノイズがどこからともなく生まれるグラウンド・ループの現象が起きやすくなるんです。そこで、対策ができる機能が二つ用意されています。一つ目は、フロント・パネルの各チャンネルに付いているグラウンド・リフトのスイッチ“GND LIFT”。これはRNDIやRNDI-Sにも付いています。二つ目は、“PIN 1 ISOLATE”スイッチで、こちらはRNDI-8のみに搭載されているものです。リア・パネルの各チャンネルに付いていて、このスイッチをオンにすると、XLR端子の1番ピンを物理的にシャーシから浮かすことができます。基本的にはオフにしておいて、ノイズが入ってしまったときにオンにする形ですね。トラブル・シューティングの方法としてこういった機能が搭載されているので、安心して使うことができるかと思います。
●RNDIやRNDI-Sにも共通しますが、すべてのチャンネルにTHRU出力が搭載されていますね。これはどのような使い方を想定されていますか?
秋本 さまざまな使い方が考えられますが、DIのインプットに楽器を接続してラインで音を録りつつ、THRU出力からアンバランスのケーブルを使ってアンプにつなげて同時に音を出すという使い方が一般的ですね。
安田 RNDI-8はチャンネル数が多いので、シンセを演奏される方が、このTHRUアウトを活用して複数のエフェクターを使うということも考えられますね。1番には素の音を入力して、THRUアウトにひずみ系のエフェクターをつなぎ、その出力を2番の入力に戻し、さらにそのTHRUアウトにフィルターを接続して3番に戻し、4番にはリバーブを……というぜいたくな使い方が、RNDI-8では実現できます。ギターについても同様で、複数のエフェクターをつなげて、センド&リターン的なことを物理的に行えそうです。
●最大+21dBuの入力レベルに対応していて、楽器以外にオーディオ・インターフェースなども接続できるのも魅力です。
秋本 −10dBのPADスイッチも搭載されているので、スピーカーの出力までには届かずとも、アンプを除いたさまざまな機材に対応できるかと思います。
●総じて、RNDI-8はどんな方にお薦めできる製品でしょうか?
秋本 やはり、DIをマルチチャンネルで使いたい方や、ぜいたくにRUPERT NEVE DESIGNSのDIサウンドを使いたい方ですね。また、アンプ・シミュレーターでライブを行うギタリストにもお薦めですし、普段コンソールに楽器に直接つないでいて、音質や安定性に納得がいっていないPAエンジニアの方が、とりあえず現場にRNDI-8を1、2台持ち込んでみるというのも、お勧めできると思います。
安田 キーボーディストがライブでシンセを5、6台演奏する場合、手元にミキサーを用意するケースが多いですよね。そういう方がミキサーの代わりにRNDI-8を使用するというのも考えられるかなと思いました。また、マニピュレーターの方がパラ出しをするときに使うのもよいのではないでしょうか?DIを使わない方も多いですが、音質向上のために試してみるのもよいかもしれません。
秋本 確かにおっしゃる通りですね。チャンネル数が多く必要で、音にこだわりたい方、バンド、あるいは個人で楽器をたくさん持っている方などに向いていると思います。RUPERT NEVE DESIGNSの音が好きで、マルチでたくさん使いたいという方に、ぜひ手に取っていただきたいです。
安田 シングル・チャンネルのRNDIを8台購入するより、コスト・パフォーマンスがとても良いですからね。
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