【お知らせ】2024年10月29日(火)午前1:00〜午前3:00頃まで、メンテナンスのため本サイトをご利用できなくなります。ご不便をおかけしますが何卒ご了承ください。

【第30回 日本プロ音楽賞 応募作品受付中!】山麓丸スタジオ當麻拓美が語る “受賞による変化”

當麻拓美

 “日本プロ音楽録音賞”は、優れた録音作品を手掛けたエンジニアを顕彰することで、エンジニアの技術向上と次世代エンジニアの発掘を図る音楽賞。第1回は1994年に開催され、今年は節目となる第30回を迎える。今回は、第29回日本プロ音楽録音賞Immersive部門(プログラミング・サウンド)にて最優秀賞に選ばれた、山麓丸スタジオのチーフ・エンジニア當麻拓美にインタビューを敢行。受賞による変化やイマーシブというフォーマットに思うことなど、詳しく話を聞いた。

Immersive部門ならチャンスがあるかもと思った

――昨年の日本プロ音楽賞に応募されたきっかけは?

當麻 自分の上司であるChester Beattyに“応募してみよう”と言われて、その年に自分が360 Reality Audioを手掛けたBE:FIRSTさんの「SOS」なら受賞できるかもしれないと思い、応募いたしました。

――応募する前は、日本プロ音楽賞にどんなイメージをお持ちでしたか?

當麻 名だたる巨匠たちの場だと思っていたので、自分から応募してみようと思ったことはありませんでした。正直“おこがましいんじゃないか”という気持ちがありましたね。ですがImmersive部門があるという話を聞き、ここなら自分にもチャンスがあるかもしれないなと思い応募しました。特に力を入れてきた360 Reality Audioというフォーマットで受賞できたのは、自分にとってかなり大きなことでした。

日本プロ音楽録音賞

當麻に贈られたImmersive部門(プログラミング・サウンド)最優秀賞の賞状とトロフィー(*)

――イマーシブに興味を持ったきっかけを教えてください。

當麻 山麓丸スタジオの母体となるラダ・プロダクションでCM音楽のミックスをやらせてもらっていたとき、たまたまソニーPCLでイマーシブを体験できるという話が舞い込んできたんです。実際に体験しに行ったらすごく面白くて、最初はとにかく好奇心でやり始めました。そのうちに“もっとチャレンジしたい”という気持ちも生まれてきて、今日に至るという感じです。

――當麻さんにとってのイマーシブの魅力、イマーシブ作品のあるべき形とはどのようなものですか?

當麻 最大の魅力は、圧倒的なキャンバスの広さです。音のダイナミクスを保ちながら製品化できるんですよ。2ミックスでは聴こえなかった音が聴こえてくる。そういうところが魅力だと思っています。フォーマットができた当初はオブジェクトをアトラクション的に動かせること、つまりエンジニアでありながらもクリエイティブに関与できるという魅力が大きかったと思うんですけど、現在はイマーシブもフォーマットとして成熟してきていますよね。だからこそ、動かすことによって効果のあるソースをいかに見分けられるかが、エンジニアのスキルとして必要になってきているんじゃないかと思います。ダイナミクスを保ちながらもステレオと比べても迫力が失われないようにしたいし、なおかつクリエイティブな要素も欲しい。こういうバランス感を大事にしています。

――フォーマット関係なしに、當麻さんにとって魅力的な音はどんな音ですか?

當麻 これまでいろいろな音を触ってきましたが、自分が好きだと思う音は、音として存在感があるものであったり、耳にすっと入ってくる音であったり、かたやそれにレイヤーされている、曲としてのグルーブを出すための普段はあまり聴こえないような音であったりします。そういう音のバランスがうまくとれているものが、良い曲、良い音だなと感じますね。イマーシブを触っているからというのもありますけど、大体ステレオで聴いても“いいな“という印象を受ける曲は、それぞれの音をオブジェクトとして配置したときに既に存在感があって、“フォーマットとして優位性があったな“と感じるんです。そういう、作家の方の意思が伝わってくるような音が好きですね。

當麻拓美

“皆さんと一緒に”賞を取れて良かった

――2023年のプロ録音賞授賞式に出席されたときのことを覚えていらっしゃいますか?

當麻 元々人前に出るのが得意ではないのでかなり緊張していたんですけど、素晴らしい作品を作り上げたチームの一員として胸を張るべきだ、という気持ちになったのを覚えています。本当に良い作品に携われる機会に恵まれたなと思いましたし、アーティスト、プロデューサー、エンジニア......作品に関わった方々への感謝の気持ちでいっぱいになりました。自分が受賞したというよりも、皆さんと一緒に賞を取れて良かったなという気持ちが強かったです。

――エンジニアリングが“受賞”という形で社会的に評価される機会はほかにないと思います。実感はありましたか?

當麻 “この人みたいなミックスをしてみたい”と思ってもらえる存在になるというのが、僕の今の目標なんです。そのための第一歩になったかなと思っています。同じ職業の方々に褒めていただけるというのも、とてもうれしいことですね。

當麻拓美

――実際、受賞される前と後とで、お仕事や周りの方からの反応などに変化を感じましたか?

當麻 仕事の内容自体はあまり変わっていませんが、受賞したことで安心してお任せいただけるようになったかなと思います。それによって自分の中では責任感がより芽生えましたね。気持ちを新たに、より上を目指すきっかけになりました。そして何より、一番喜んでいたのは親かもしれませんね(笑)。親孝行できたんじゃないかなと思っています。

――先ほど當麻さんもおっしゃっていましたが、若手のエンジニアにとって、日本プロ音楽録音賞は敷居が高いイメージがあるのでしょうか。

當麻 30代までのエンジニアが担当した応募作品から選定される“ニュープロミネント賞”を目指してもらうのが一番良いと思います! 僕は“応募だけでもしてみたら”と思っていて。僕がチャンスをつかめたのも、チャレンジしたからなんですよね。こういったことに前向きに挑戦していくと、何かが変わるかもしれません。エンジニアを目指している方、そして若手のエンジニアみんなで競っていくことができたら、国内全体のレベルも上がっていくんじゃないでしょうか。自分が良いと思ったものを誰かに提示するのはすごく勇気が要ることですけど、やってみたら成長につながると思うんです。みんなでチャレンジ精神を持てたらいいですよね。

【30代までのエンジニア応募作品について】

30代までのエンジニア応募作品ついては、本審査まで残った作品に限り評価へのフィードバックが行われる。審査委員の採点表をもとに6項目の得点を集計し、応募作品のサウンド創りへの評価をレーダーチャートなどで提示する予定。

※参考(Immersive部門)
1.音場空間表現(没入感、奥行き)
2.クリエイティブ力(音楽の魅力を引き出す感性/技術力)
3.解像力(S/N、透明感)
4.ダイナミックレンジ(音楽的適正)
5.音色感(豊かさ、色彩、歪)
6.直感的評価
各得点 1~5:10点満点 6:50点満点 合計100点
※実際のフィードバック方法は変更になることもあります

――當麻さんは今後ほかの部門も含め、日本プロ音楽録音賞に応募する予定はありますか?

當麻 Immersive部門において、Dolby Atmosでも受賞したいなという気持ちがあります。“すごく良かったな”と思える作品には今年もたくさん携わらせていただいたので、それが評価されるために受賞できたらいいなと。ほかの部門に関しては“もうちょっと修行を積んでから……”という気持ちもありますが、ゆくゆくは総ナメしていこうかなと思っております!

當麻拓美

當麻拓美
【Profile】ホールやライブ会場の立体音響の収音設計から、楽曲のミックス&マスタリングまで幅広く手掛ける。背面特性に優れたイマーシブ・ミックスを得意とし、楽曲の表現力を高めることを大切にしている。第29回日本プロ音楽録音賞Immersive部門ミキシング・エンジニア最優秀賞を受賞。これまでにBE:FIRST、SKY-HI、ちゃんみな、川谷絵音、JO1、ØMI、AAAMYYY、私立恵比寿中学校、長谷川白紙らの作品に携わってきた。

「第30回日本プロ音楽録音賞」応募要項

第30回日本プロ音楽録音賞

1. 実施目的

 本賞は音楽文化と産業の発展の一翼を担う録音エンジニアが制作し応募した音楽録音作品について、エンジニアが有する音楽に対する感性、技術力等を評価することにより、各授賞区分の対象となる優秀作品および最優秀作品、並びに応募作品の中からベストパフォーマー賞を選定し、これに携わり制作を担ったエンジニアおよびベストパフォーマーのアーティストを顕彰することでエンジニアの技術向上と次世代エンジニアの発掘を図ることを目的とし、表彰を行うもの。

2. 審査対象

 国内において企画され、2023年9月1日から2024年8月31日までの間に初めて国内で発売(2024年9月30日までにサンプル盤が配布されているものを含む)、または公に放送・配信された(2024年9月30日までに放送・配信が決定しているものを含む)音楽録音作品を審査の対象とする。

 尚、旧譜の音源が新たにミキシングもしくはカッティングされた作品は応募が可能。但し、全ての作業を国外で行った作品を除く。

3. 応募資格者

(1)自薦:応募作品の制作に主要な役割を担ったエンジニア(Best Master Sound部門、アナログディスク部門はマスタリング・エンジニアを含む)とする。

(2)推薦:レコード会社・音楽出版社・番組制作会社等のディレクター、プロダクションの担当者、ミュージシャン等を含めた制作関係者、および運営委員会が推薦を依頼した関連各社とする。

4. 受賞資格者

 最優秀作品および優秀作品の制作に主要な役割を担ったエンジニアとし、Best Master Sound部門、アナログディスク部門は1作品当り3名以内、Immersive部門については1作品当り2名以内とする。

5. 応募作品の分類および授賞区分

応募作品部門の分類および授賞区分は次の通り。


■Best Master Sound部門
クラシック、ジャズ、フュージョン(2ch)(CD、SACD、DVD、BD & 配信)
ポップス、歌謡曲(2ch)(CD、SACD、DVD、BD & 配信)

■Immersive部門
サラウンド作品全般、ジャンルを問わず

■アナログディスク部門
2chステレオ、33/45回転、ジャンルを問わず

■放送部門
2chステレオ/ラジオ番組:AM、FM、衛星放送、有線放送|テレビ番組:地上波、衛星放送
マルチchサラウンド/テレビ番組:地上波、衛星放送

■ベストパフォーマー賞
Best Master Sound部門、Immersive部門、アナログディスク部門の全応募作品よりベストパフォーマーを選定。

■ニュープロミネント賞
次世代を担うエンジニアの顕彰を目的として、30歳代までのエンジニアが担当した応募作品(Best Master Sound部門、Immersive部門、アナログディスク部門)よりニュープロミネント賞を選定。

6. 応募作品のメディア

■Best Master Sound部門

 Best Master Sound部門のパッケージ作品は市販商品での応募とし、他の音声記録メディアによるコピーでの応募は受け付けません。ノンパッケージ作品のオーディオ・ファイル・フォーマットは、実際に配信されている音源と同等なファイルおよびフォーマットでの応募を基本とする(WAV、FLACおよびDSDIFF、DSF等)。

■Immersive部門

 Immersive部門のパッケージ作品は市販商品での応募とし、ノンパッケージ作品はマルチチャンネル音源でのミックスマスターとして、ファイル・フォーマットはWAV、およびADM BWF、DSDIFF、DSF等とする。360 Reality Audio音源につきましては、360 WalkMix CreatorなどでExportされたMaster ADM、もしくは非プリレンダリング(Unprocessed)Exportなど360 WalkMix Playerで再生できるフォーマットでご応募を基本とし、48kHz 24bit LPCM(MPEG-H圧縮後にWAVに変換された24オブジェクト音源)のご応募でも可能とします。その他のデータについては事務局へご相談ください(※ご応募いただいた音源につきましては審査のみの再生となりますが、納品マスターを応募作品とする場合は必ず制作ご担当者の許諾を得て下さい)。

■放送部門

 放送部門の2chステレオは、 ビデオ(XDCAM、P2)およびWAVファイル、マルチchサラウンドは、ビデオ(XDCAM、P2)でご応募下さい。(映像圧縮フォーマットについては、応募用紙の記載をご確認下さい)。

 4K放送作品につきましては、審査の都合上2Kにダウンコンバートしてご応募下さい。尚、最大ch数は5.1chとし、22.2chで放送されている作品は、ダウンミックスされた作品での応募とします。

7. 応募作品数

 応募作品の制作に主要な役割を担ったエンジニア1名1作品の応募を原則とします。但し、Immersive部門、アナログディスク部門、および応募作品を共同制作したエンジニア等及び推薦作品についてはこの限りではありません。

8. 応募方法

 応募要項巻末の応募項目を確認いただき、一般社団法人日本音楽スタジオ協会ホームページ“第30回日本プロ音楽録音賞”ご案内ページ内リンク先にある各部門のエントリーフォームから必要項目をご入力いただくか、各部門の応募用紙をダウンロードいただき必要項目をご入力のうえ、運営事務局(japrs@japrs.or.jp)までメール添付にてお送りください。
 パッケージ作品につきましては市販商品をお送りいただき、その他音源ファイル等につきましては、各種メディアにコピーもしくはアップロード等にてお送りください。
※応募作品の返却を希望される方は、送料をご負担いただくこととご了承下さい。

9. 応募受付期間

2024年9月17日(火)から10月10日(木)までの必着

10. 応募作品送付先

一般社団法人 日本音楽スタジオ協会
事務局長 内藤 重利
〒162-0041 東京都新宿区早稲田鶴巻町565-10 ビルデンスナイキ302
※事務局移転につき住所が変更となっておりますのでご注意ください。
E-mail:japrs@japrs.or.jp
TEL :03-3200-3650

※第30回日本プロ音楽録音賞は、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)の共通目的基金の助成を受け運営されています。

日本プロ音楽録音賞の詳細はこちら

関連記事